22.うっしー、清水の舞台から飛び降りる
関係者の挨拶が終わり、筑波大学の陣地は散開した。
弘山さんのところには、ちょっとした取材がきたり、知人・関係者と思われる方が挨拶に来たりしていた。
どうする、どうする。
激しい葛藤の末、ついに私は清水の舞台から飛び降りた。
面会者が途切れた後、一人たたずむ弘山さんに勇気を振り絞って声をかけた。
「弘山さん、あの、私、クラウドファンディングに参加している者です」
「ああ!ありがとうございます」
よかった、ちゃんと挙動不審にならずに挨拶できた。
「学生さん、がんばってましたね。すごかったです。」
それは、私の正直な気持ちだった。
2回目の応援で、前回よりも一人一人の選手をよく観察することができた。
予選通過した大学の選手たちと筑波大学の選手たちとの間に、それほど力の差はないように思えた。
「いやー、まだまだです」
「でも皆さん、一所懸命走ってました」
「まぁ、本気といっても…まだね、甘いところがあるんですよ…」
ふっと口をついて出たらしい、弘山さんのその言葉は、今でもはっきり覚えている。
弘山さんは「甘さ」の原因が何かをわかっている。
だが、それを本人たちには言っていないのだ。本人たちが気づくのをじっと待っている。
弘山さんは私のイメージ通りの人だった。
朴訥で、理性的で、辛抱強く、そして情熱家だ。
セーラームーンが困って泣いていても、代わりに敵を倒すことはしない。
ヒントを与えたり、励ましの言葉はかけるけれど、主役はあくまでセーラームーン本人であり、タキシード仮面ではないのだ。
話の最後、私は「陸上のことはあまりわからないけど、ネットでがんばって応援します」というようなことを話したと思う。
弘山さんと話し終わった後、一人の記者さんが、駅伝主将の川瀬くんに声をかけているのを見つけた。熱心に取材をしている。
その様子を見つめながら、心の中で手を合わせた。
あの記者さんは、川瀬くんが医学生であることを知っていたに違いない。
医学生でありながら駅伝主将を引き受けた。その大変さは想像もつかない。彼の頑張りと情熱は、必ず次の世代に引き継がれるはずだ。
どこの記者さんかわかりませんが、取材してくれてありがとうございます。
その夜、一つのtweetが流れてきた。
記事は、4years.公式HPにも掲載された。
すばらしい取材内容だった。
あのときの記者さんだと確信した。
筑波大学の取り組みに注目してくださっている方々がいる。私と同じように心動かされている人達がいる。
4years.さんの記事は、私を勇気づけた。
「筑波大学のクラファンサポーター」として、はじめて他人の記事にリプライを付けた。
名乗ったからには、もう後戻りはできない。
「いちサポーター」として、ネット上で暑苦しく暴れまくってやる。
そして次の予選会には、仲間をたくさん連れてくるのだ。
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