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41.危険なふたり

チームつくばタイトル

似顔絵駅伝でのやりとりの後、私は、鉛筆画家のkeikaさんとネット上で親しくお話をさせていただくようになった。
私の初めての「陸上関係のネットフレンズ」。
ところがそのネットフレンズは、じつは私と同じくらい陸上シロートだったし、さらに言うなら、トンデモな経歴の持ち主だった。

「エェ!?美大とかで絵の勉強をされてたんじゃないんですか!?」
「3年ほど前、大きい手術をして、その影響で握力やら弱ってしまったので、リハビリを兼ねて鉛筆画始めたんです。ネット上の鉛筆画家さんたちにいろいろ教えてもらいながら描いてます。」
イヤイヤイヤイヤ、リハビリってもう、そういうレベルじゃないですよね!?しかもほぼ独学!!??

2017年、小学校時代の友人からの依頼で神奈川大学の陸上選手たちを描いた。全日本大学駅伝で優勝した記念だったそうだ。その頃からアスリートさんを描き始める。

2018年に運命の出会いがあった。
世界マスターズ陸上で、男子4x100mリレー(45歳クラス)のメンバーとして出場、金メダルを獲得した佐藤政志さん。
keikaさん曰く「どストライクに好みのタイプだった(笑)」

【補足】2018年世界マスターズ陸上男子4x100mリレー(45歳クラス)金メダルメンバー(敬称略)
・1走 武井壮 (いわずとしれた百獣の王)
・2走 譜久里武 (日本人初の40歳代100m10秒台ランナー、一般社団法人陸上クラブアスリート工房代表)
・3走 佐藤政志 (一般社団法人 ネクストヒューマンリソース 代表理事、日本陸上競技連盟公認コーチ)
・4走 朝原宣治 (北京オリンピック4x100mリレー銀メダリスト、大阪ガス陸上競技部副部長)

以来、佐藤さんのカッコよさを広めたいと、ひたすら描き続けているうちに、「アスリートを描いて応援している鉛筆画家」として陸上界隈に認知されるようになったようだ。

「佐藤さんに生きる力をもらったんです」とおっしゃるkeikaさんと、「教育に恩返ししたい」という私。
どちらも明後日の方向から足を突っ込んだせいで、陸上界に関する基本知識がほとんどない。そして興味のある部分しか掘ってないから、知っている内容が偏っている。必然的に、会話もかみ合わない。

■ある日の会話1
う「学生連合で走った筑波大の相馬くんは、佐久長聖出身なんです。」
ke「おぉ。(さくちょうせい…聞いたことある)」←こんな感じの間
う「あ、えっと、長野の駅伝名門校で、マラソンの大迫傑さんも佐久長聖出身なんですよ。今年(2019年)箱根駅伝優勝した東海大学の両角監督は、もともと佐久長聖の監督だったですし。」
ke「なるほど!(ちょっとわかったかもしれない)」

【補足】佐久長聖高校駅伝部は、2020年現在、全国高校駅伝長野県予選会23連覇中。全国大会(通称「都大路」)でも2回の優勝実績がある強豪校。

■ある日の会話2
ke「そういえば年末、ヤクルトの小椋さんを描かせていただいたんです( ´艸`)♪」
う「ほぉ!(ヤクルト…?プロ野球選手じゃないよね?)」
ke「小椋裕介さん。青学で箱根駅伝走ってたらしいです。」←紹介者からの伝聞っぽい
う「へぇ~、それはすごい!(青学…テレビで見てるはずだが…覚えがない…)」

【補足】小椋裕介さんプロフィール
ヤクルト所属の長距離走者。青山学院大学卒。
2020年2月丸亀ハーフマラソンで、1時間00分00秒の日本新記録を樹立。ハーフマラソン現日本記録保持者。
青学在学時は4年連続で箱根駅伝7区を走り、3、4年次区間賞。2年連続の総合優勝に貢献。

一事が万事、この調子である。
陸上・駅伝ファンの方がその場にいたら、レッドカードで一発退場させられそうだ。
二人でネット上で会話していても、一向に陸上の知識は増えない。危険すぎる(笑)。誰か陸上(特に選手)に関する解説者が欲しい…

そんな中、3月頃だったか、関東学生連合の絵を見たときから心に秘めていた「計画」を、keikaさんに打ち明けた。

「あのー、もし、私が依頼したら、関東学生連合で5区を走った、筑波大学の相馬崇史くんを描いていただくことってできますか?出場記念にご本人に差し上げたいんです。もちろん、制作費はお支払いします。」
「ええ、ご本人の許可が得られれば、もちろん喜んで♪」
「そうか、肖像権の問題がありますもんね…。」

やっぱり、描いてもらうには本人の許可がいるよなぁ。もとにする写真だって撮影した人に使用許可とらないといけないし。
それに、許可と言っても、そもそも一度も話したこともないご本人に、どうやって連絡を取ればいいんだ。
たとえば大学気付で手紙送ったとしても、いくらクラファン支援者とはいえ、見ず知らずの人間から手紙きたら、あまりに不審すぎる。

物事には、タイミングというものがある。
いくら強く思っていても、その思考に無理があると、周りの条件も揃わないし、どんなに努力しても実現しない。
つまり「描いてほしい」というのは、まだ私のわがままのレベルであって、それを成す時期ではないということだ。
すでに、keikaさんと知り合いになれて、本人に許可をもらえれば描いていただけるというお話までとりつけたのだ。それだけでもすごいぞ、私。

いつか、相馬くんが卒業するまでに実現したらいいな。


2019年4月。春が訪れた。
筑波大学陸上競技部に彼らがやってくる。


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