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BOOK#30「欲しい ほしい ホシイ── ヒトの本能から広告を読み解くと」

●今回読んだ本

「欲しい ほしい ホシイ── ヒトの本能から広告を読み解くと」―小霜 和也著(出版社:インプレス|2010年05月21日発行)

●内容メモ #ネタバレ

・どの広告もロゴの位置が「右下」
右脳がイメージをつかさどっているため、人は左の視界にあるものの方を美しく感じてしまう。広告をレイアウトするときは、左側にビジュアル、右側にコピーや商品名と言うルールにしておくと美しい印象とともにメッセージも伝わりやすくなる。

・99%>100%
人には欠けているものが気になる。どこかに少しだけ違和感を残す。全てがすんなり整った表現と言うのは、認知するためのフックがない状態が多い。
(例)世界観は美しいのにナレーターが素人とか、編集でちょっとぎこちないつなぎ方とか、意味のないカットが一瞬挿入されるとか

・女性向けなら情報はできるだけ多く見せるのが良い。
特にダイレクトレスポンス広告の基本は、ターゲットのベネフィットがドカンとわかりやすく目に留まると言うこと。
また、目をつかんだ後は情報量で勝負。たとえ商品が1つであっても、その商品の情報はもちろん、発売に至るバックストーリー、完成するまでの苦労話、モニターの感想文など、できるだけ情報を盛り込む。

・記憶に残すか残さないかは「感情」が決める。
感情、あるいは情動とは、命令のこと。記憶については感情の命令によって保存するか、しないか。
全人類に共通する感情…「幸福感」、「驚き」、「恐れ」、「悲しみ」、「怒り」、「嫌悪」の6種類(ヒューマン・ユニバーサル)(ポール・エクマン。米・心理学者)。
これらを強く感じた時、人はその原因となるもの記憶する。ゆえに、広告表現はこれら6種類のうち何らかの「感情」を伴わなければならない。
ヒトはポジティブなものよりもネガティブなものに強く反応する。ただし、広告は「記憶してしまっているが思い出したくないもの」ではなく「記憶していて思い出すと良い気持ちになれるもの」を目指さなくてはならない。という事は、広告で利用できる感情は6つのうち「幸福感」と「驚き」の2つだけといえる。
(1)幸福感
baby (子供)、ビューティー(美女やイケメン)、ビースト(動物だけじゃなく、花や緑など、サバンナ的なものを見にすると人は幸福感を覚える。)の3Bは幸福感と結びつく。自分の人生が「好転」しそうだと感じられるものも記憶に残りやすい(例. お得表現)。その他の幸福感と紐づく要素は、古典感、競争要素、達成要素、協力要素、リズム要素、快感要素、知識要素。
(2)驚き
驚きは、サプライズパーティーや、怪談のような驚きは必要がない。例外的な表現を見せてあげれば良い。つまり、これまで知らなかったもの=例外的なものは記憶に残るのである。
「笑い」とは、意外なものに遭遇し、それが安全だとわかった時、安全だと言うことを他者に伝えるために湧き上がる警報解除メッセージだ。例外的な表現、意外性のある表現が記憶されるときは、副産物として笑いを伴いやすい。

・人は物事を「特徴」で記憶に定着させる。
人は物事を特徴で認識し、その特徴を肥大化させることで記憶に定着させる。特徴がないと覚えてもらえない。この表現上の特徴のことを広告業界では「フック」と呼ぶ。またフックは、広告が情報として人から人へ伝わるときの「持ち手」の役割も果たす。幅がないと表現がツルツルした状態、記憶のつかみどころがない状態となり法に残りにくくなる。

・コピーは未来への約束である
キャッチコピーとして、人の注目を得るだけのためなら、「よ!」だけで立派にコピーとして機能することもある。しかしそういう役割をコピーが果たす必然性はない。アイキャッチだけなら奇抜なビジュアルにもその役割はになるのではないか。ビジュアルやサウンドにはできない、コピーならではの機能とは何だろう。それは、未来への約束である。言語についてもう一度考えてみよう。ビジュアルは約束しないもの、言葉を約束するもの。これが人々の共通認識となっている。誰が決めたわけでもないのに。
コピーの役割はいろいろあるが、広告コピーの真骨頂は、やはり生活者に対して未来への約束をすることだ。コピーライターの冥利は、そのようにコピー戦略によって企業やブランドを正しい方向へ動かしていくことに尽きるのではないか。

企業スローガンもコピーの1つだ。ただ現状をコピー化してしまうのは間違いだ。その企業はそこから1歩も進めなくなる。1年先、数年先を見据えた上で、未来に目指すべきところを言語化しないとならない。企業やブランドの前進力は、あそこに行くんだ、と言うコンセンサスを持つことで生まれるのだから。
こういう役割は、企業スローガンに限ったことではなく、商品コピーも同様だ。ターゲットに対して、どの様な良いことをもたらすのか、未来への約束をしなければならない。これは言葉にしかできないことだ。

・仕事か家庭かと言う悩みは、文化遺伝子を残すか本来遺伝子を残すかとイコール。
文化遺伝子は本来遺伝子と同じように、自然淘汰されながら強いものがどんどん進化と増殖していく。作者がこの世を去った後も、増殖を繰り返したりもする。
「商品」…文化遺伝子。商品は製品とは異なる概念。
「製品」…物体そのものを指す。文化遺伝子がくっついて商品となる。すなわち、製品と言う原価値に文化遺伝子の価値が加わって、売り物になる。
「商品力」…商品にくっついた文化遺伝子の力で決まる。
「広告」…製品について、文化遺伝子増殖のサポートをする仕事。
「マーケティング」…生活者の心を読み解きながら製品に新しい価値を付加することである。そこを見失ってしまうと、ただの御用聞き、ご機嫌伺いに堕してしまう。つまり広告と同様。

・進化心理学に基づいて考える
人としての本当の姿を確認した上で、どうするか考えていく。この社会を持続可能なものにするためには、進化心理学に基づいたその作業が、今後、行政にも、教育にも、あらゆる分野で必要になってくるのではないか。

・役割分担のあるチーム作りをしよう
若い人が直感に頼りすぎるのは危険。経験の少ない人の直感はただの思い込みの恐れがある。自分を信じるのは良いが、自分の直観的判断を信じるのは自殺行為である。若葉マークのドライバーが、直感でヘアピンカーブに突っ込んだらどうなるかと言うこと。
でも、若い世代は経験がない分、自由な発想で新しい可能性を発見できる。若い広告クリエイターの1番の役割は、古い世代がまだ知らない、彼らの経験値が働かない新しい可能性をぶつけていくことだと思う。若い世代と古い世代が喧嘩する、その日は何か新しい価値を生み出す点火剤となるだろう。若い世代が好奇心で新しい手口を探り出し、古い世代が経験に基づく直感力で判断する、それが人の本能を生かすやり方だろう。そういう関係ができているチームは強い。

●その他

▽なぜ読みたいと思ったのか
広告関係の本を読むことが心理とマーケティングの勉強になって好きだから

▽興味を持ったきっかけ
コワーキングスペースの本棚にあったから

▽この本を読むことの意義
広告への理解を深めることで、日常生活の中でよりアンテナを張って視点を広く持てるようになりたい

▽どんな本の内容だと思って手に取ったのか
広告を見る顧客心理を語っている本かと思って

▽実際読んでみてどんな本だったのか
最初にパラパラと見た際には余白が少なくて若干読みづらい印象だったが、読み始めると内容が興味深く面白かった。出版より10年以上経ったとは思えないほど、内容が今でも役立つものだと感じた。

また、企業スローガンでは現状をコピー化してしまうのは間違いで、未来に目指すべきところを言語化しないとならない。という部分については『2枚目の名刺』と言う本で読んだ、まず肩書を名乗る。さすれば、そこに適そうとして自然と実績がついてくる、と言う話にも近しく興味深い。

更に、進化心理学に基づいて考えることが、この社会を持続可能なものにするだろうという話に共感した。私自身、最近正にそう思っていたから。進化心理学に基づいて、教育なり社会基盤なりを整えていくと言う事はとても大切だと思う。高度な情報化社会の中で心と体と脳のバランスが上手に取れず、進化の止まった私たち人間という動物の本能を理解した上で、生活のための土台を作り直すことは非常に大事だと思う。
結婚と言う概念も、そもそも疑問。一夫一妻と言う制度に縛られることは、将来を考えるといずれ廃されるものなのじゃないかとすら…これは決して愛情とか子供をないがしろにしたいと言っているわけではなく。親がずっと一緒にいて親からの愛情だけを受け、家庭の中で過ごしていく…そういうことに疑問を感じる。もっと拓かれた世界で、もっと多様な人間関係の中で、もっと様々な人と手を取り合い、助け合いながら。親以外の愛情を受ける場所、もっとたくさんの人たちで愛情を分け合える場所。少子高齢化と共に、そういう新しい時代が来るんじゃないのかな。進化が止まってしまった人間としての本来あるべき姿を、今一度考えて、改めてどう定義すべきかを議論する方が建設的なのでは。。。
それから、どこかで進化心理学の分野で日本が結構進んでいると聞いたような…? そういうところも踏まえて、最先端走ってほしい。

▽タイトルをつけ直す(要約)とすると?
(幸福感+驚き)×特徴=広告

▽知らなかった単語(用語)について
特になし

●Amazon


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