フランスな日々。 #留学編1
初めて海外に住むことになった初日に浮かんだ言葉。
「私、ここで生きていけるのだろうか…」
一人旅はしてきたが、今まで海外に住んだことは一度もなかった。
しかもフランス語なんて全く勉強したことがない。
ついでにいうなら、私が大学で選んだ第2外国語はスペイン語だ。(それすら忘れたけど。)
たしか大学入学時、誰かに言われたのだ。
“フランス語だけは選択するな。絶対に落ちるから”
あー、もし戻れるなら、あの時の私に催眠術でもかけてあげたい。
「あなたはフランス語を選択したくな〜る〜したくな〜る〜」
とか言って……
“ 結婚とは勢いだ。”
と、誰が言ったか知らないけれど。
留学だって勢いなのだ。
実際、私はそうだった。
それまでフランスに縁もゆかりも無い私が渡仏した理由だが、私はその頃、関節球体人形という自作のビスクドールを作っていた。
ひょんなことから自分の作品を、年に一度パリ近郊で開催されるJapanEXPOというイベントで、展示することになったのだ。
当時、このイベントは日本ではあまり知られておらず、私も全く初耳だった。
詳細は割愛するが、そのイベントで私はとても沢山の来場者に話しかけられた。
しかし全く言葉が解らなかった。
通訳の方はいたのだが、作品を作った私にみな話しかけてくるのである。
まあ、そりゃそうだよね。私だって作家本人に直接尋ねてみたいと思う。
前述したように、私はフランス語なんて全く触れずに生きてきたのだから、判るはずもない。
それなのに、どうしてもフランス語でコミュニケーションを取りたくなり、何を思ったのか、いきなり半年間の留学を決めたのである。
もはや何かに憑依されていたのかもしれない。
でもよく考えれば、昔から興味があることに関してのハマりかたが病レベルだったからな、私。
そういや、オタクからマニアのお墨付きをもらった事もあったっけ。
勢いは運命を変える。しかも簡単に。
実際にそれから私の人生は一変した。
語学学校に入ったからといっても、フランス語がすぐ解るようになったわけではない。
正直1ヶ月もの間、先生の言うことがさっぱり判らなかった。
毎日毎日、繰り返し同じことを先生が言っているにもかかわらず、だ。
授業初日、分かった単語は「Bonjour」のみ。(ありえない。)
私は当初、英語を交えながらフランス語を説明するのかと思っていた。
しかしそれは愚かな考えだとすぐに気づいた。
初日から先生はフランス語しか話さない。
“Yes”ではない。
“Oui”である。
“No”ではない。
“Non”である。
まあ、私、英語すら危うい人なんだけど……
当然ながら連日宿題は出るのだが、書いている問題の意味が分からない。
そこで辞書を引きながら、一問解くのに数十分。
「うーむ、まったく分からん……。」
入室したばかりの寮では、聞く人すらいない。
例え誰かいても質問できるレベルではないし、相手の言うことが分からないのだから、もはやお手上げだ。
当然だが、友人と呼べる人もいなかった。
完全アウェイ状態。
ぼんやり窓の外を眺めつつ、またあの言葉がよぎる。
「私、ここで生きていけるのだろうか…」
ゆるっと続。(-∧-)合掌・・・
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