「子なし猫女」は惨めなのか?
トランプがJ・D・ヴァンスを副大統領候補に選んだ狙いは、大当たり。選んだ理由のひとつが「人を怒らせるのがうまい」ことだというんですから!
ヴァンスの副大統領に対する暴言 ”Childless cat lady、自分の人生も惨めだし、彼女を選んだ国家も惨めにする “。(cat ladyとは、子どもがなく猫を飼う年配女性の俗称)
このヴァンス発言、ニューヨークでは連日TVニュースで動画が見飽きるほど放映されています。(テイラー・スウィフトさんの愛猫クリップと組み合わせたインスタ↓)
それにしても、たかが子どもがいるかいないかで、この大騒ぎ。しぶしぶ子どもを持った私からすると「どっちでもいいじゃない?」という感じです。
アメリカ・ビザより難関? 子持ち問題
子どもを育て上げて思うのは、自分の至らなさ。全力を尽くしたつもりではあっても、ふとした瞬間に「あれも、これも、できなかった」と……。
子を産むことも育てることも、部外者や道半ばの人が言うほど神聖な何かではない気がします。やり直しは効かない点が、一般的なタスクとは違うぐらい。
例えば、トランプ政権で私も締めつけをうけた就労ビザ取得。ビザ落ちしても、実力さえあれば返り咲きは可能。
私の元ルームメイトのルーは、熾烈化するH-1Bの抽選に落ちて、キッチンで”I wanna die(死にたい) “と顔を覆いました。
失意の中、ルーは私の運命をも変えた激励の言葉を残し、ロンドンに転勤になったのですが……。
見事にステップアップ転職を果たし、現在チェイスマンハッタン銀行の上級アナリスト。今もNYの古巣にいる私と近居で、寛げる家庭を持っています。
一方、子どもの問題はビザとは違い、ガッツでリベンジできる種類のものではありません。医療の手を借りるにしろ、結局は「授かりもの」。人は意図する・しないに関わらず、様々な事情で子どもがいたり、いなかったり。
そうした繊細な属性を槍玉に上げるのは問題。ただ私自身、子どもがほしいわけでもないのに、世間の目や周りの期待に抗えずに子どもを持った人間。なので、世間的な弱点を突く戦法はしたたかだと感嘆します。
育ての母より産みの母
子ども嫌いな私でも、子どもは世話をするうちに可愛いくなるもの。「生みの母より育ての母」は真理だと知りました。
お子さんたちの継母として子育てに献身したカマラさんを、カマラさんの夫君の前妻が全面援護↓(冒頭0:10〜)。「愛情深く、慈しみにあふれ、徹底的に味方になり、いつでも側にいる」と書いています。(聴きやすい英語)
私のインターン仲間(元NBCテレビ勤務)のアンドレアが勤めるUSA Todayでは、加えて継娘エラさんのインスタ投稿も紹介。(↓写真は継子のコールさんとエラさん)
↑“コールと私というcutie pie kids(可愛がってる子たち)がいるのに、どうやって「子なし」になるの?”
ところがなんと、共和党保守派の間では「実子(biological children)のいない人間は大統領になるべきではない」との議論↑YouTube(1:15ぐらいから)。保守派弁護士のWill Chanbarianは、「継母(step mother)はカウントされない」ですと↑。オイオイ!
歴代大統領だって、腹を痛めてなんかないでしょう。隠れ男尊女卑の輩には大ウケしそうな言い草。
レディ・ファーストの陰に、隠れモラハラ
今のところアメリカ世論は子なしに賛同の雰囲気ですが、建前だったら怖いです。
アメリカ男性は「Respect women(女性を敬え)」と育てられるため、反動が怖い! 未婚女性が責められる日本と反対に、「経済力がなく結婚できない男性」が問題視される昨今ですから。
↑有名ミュージシャンによるCat Lady 発言風刺の弾き語り(英語字幕あり)。共和党反トランプ派PACの出資による広告だそうで……コメントも好意的。やるなぁ!
策略家のトランプであれば、プライドが傷ついた弱い男性や子を産んで大得意な女性を刺激して取り込むのはたやすいでしょう。
先の弾き語りだって、「反トランプ」と言いながら、男系男子トランプを宣伝してるし〜。
対するカマラさんも、票取りには用意周到かも。「継続労働した不法移民に市民権」とか、何なんでしょう。苦心惨憺で申請した私たち”雇用ベース永住者”(選挙権なし)は、「正直者がバカをみる」……。
だけど、彼女の立ち居振る舞いや生き方は好きです。だから、品のないトランプが好きで支持する人の気持ちも、否定はしません。
何にしろ、今後の選挙戦が楽しみでたまりません! 前回2020年、トランプが敗れた瞬間に撮った動画↓。マンハッタン72丁目のTrader Joe’sでお買い物をして、ちょうど出てきたところでした。
NYの街が揺れたあの興奮と至福が、再び味わえるのか?!
人生の金メダルとは?
昨日オリンピックでは、日本の男子体操団体が金メダルを決めましたね。NYで放送されているのは、銅メダルを決めたアメリカ・チームの歓喜と狂乱!
日本では金崇拝みたいな傾向があるから、アメリカ・チームの喜びようには感動しました。
ヴァンスのように「優秀な子を持つのが女性の金メダル」と考える人は多いでしょう。でもアメリカの銅を観ていたら、人生のメダルは人からもらうのではなく、自分で決めるものと腑におちました。「すごいよ、自分!」と踊り上がれるかどうか。
「子なし猫女」についても、本人が「惨め」と思えば惨め。人に向かって「惨め」と言うのは、人を貶め怒らせていい気分になりたいだけだから、言わせておけばいいのでは。
周りと力を合わせてベストを尽くせば、どんな人生だろうが最高のメダルに値するのではないでしょうか?