新・「社会の歩き方」~中高生編
今の中高生は昔よりずっと勉強しています。でも勉強に追い立てられていて、ゆっくり考える時間はあまりなさそうです。
すべてではないでしょうが、こうした「受験と進学」を軸にした人生の消費は、このまま続くのでしょうか。
大学はドッと増えているし、同年代の人口はグッと減っています。大学もかなり入りやすくなっている気がします。
それにガチガチの学歴社会も、最近はずいぶん変わってきました。特にITなどの成長分野では、技術系もビジネス系も元気がいい人たちは学歴など気にしていません。
社会の歪みが大きくなったとき、そこにチャンスが現れます。自分はズルい人間なので、世の中の抜け穴を探してみたくなりました。
▷ いま起きていること
【必要な人材がいない】
終身雇用制に担保された学歴社会は日本の岩盤でした。今それが大きく変わろうとしています。
その背景の1つは、労働市場の問題。経済とビジネス環境の変化に突き動かされて、人材の流動化がどんどん進んでいます。
そしてもう1つは、人材スペックの問題。
【高学歴プレミアムはどうなる?】
上昇志向、安定志向の子どもや家庭が一斉に向かう学歴社会。しかし、JTC(Japanese Traditional Company)と呼ばれる伝統的な大企業でも、一部に学歴選別は残るものの、学歴偏重や学閥色は薄れつつあります。
高学歴のプレミアムは今後もなくなることはありませんが、銘柄は上位校(ハイエンド)に絞られていくと思われます。
一方で、高学歴を手にしそこなった場合は、そこに序列的なプレミアムはつきません。金メダル以外は銀メダルでも銅メダルでも同じです(学歴の二極化)。
それまでの労力と費用は(投資ではなく)コストとして計上され、空の彼方に逸失利益が飛んで消えていきます。
【ホントはそんなに勉強しなくていい】
「そんなこと言ったって」とおっしゃる大人の皆さんは、このデータをご覧ください。
これは、40年前と今のデータ比較です(1992年は第2次ベビーブーマーが18歳になった年で大学定員も暫定増員されました)。
大学進学者(進学率)は大きく増えています。でもトップ2校の入学定員はあまり増えていません。ゆえに「東大・京大は入りづらくなった」と考えますか?
それとも、18歳人口が減少しているので「入りやすくなった」のでしょうか。
大学進学者が増えているのは「高卒→大学進学にシフト」によるもので、この結果、名のある大学の偏差値は軒並み上振れました。
大学入試は宝くじではないので、人口減は上位校の合格争いには影響しません。「上から○○番」で決まる世界は、母集団が小さくなっても変わりません。
上位校に入るのが昔より大変になっているのは、皆さんが受験産業に煽られて、子どもにムリムリ勉強させているからです。みんながそうするので、求められる学習量が増えてしまったわけです。
株や不動産相場と同じで、みんなが欲しがるから加熱していますが、実質価値はむしろ逓減しています。
私大になると、少子化トレンドが決定的になった40年間でも入学定員は、早稲田大(7,500→9,000人)も慶應大(5,000→6,500人)も2割3割増です。2校に続く大学も含めると入学の間口はグッと広がっています。
そして少子化は更に進み、足元では「同い年は70万人を切る寸前」まで来ています。大学定員の増加はまだ続いているので、今年生まれた赤ちゃんが18歳になる頃は「全入でもまだ余る」状況が危惧されます。
小中高で系列校に入る内部進学組や、推薦、総合選抜などのルートが増えていることを考えると、
受験産業のノイズを取り除くと、時代は今ここに来ています。
「ウチの子は△△大学に行ければそれでいいんです」という親に「△△大学はダメです」といっているわけではありません。
「△△大学なら塾に行く必要はありませんよ」「その代わりに・・・」というのが、お伝えしたいことです。
▷「学歴よりもやりたいこと」という考え方
ここまでの話を前提とすれば、高学歴に届かない(あるいはそれを目指さない)中高生は、早々に別の道を選ぶ方が賢明です。
「行列のできている店に並ぶ」程度の考えで子どもを塾に行かせている家庭は、子どもの教育と進路を根本から考え直す必要があります。
【やりたいことが分からない】
ここで(ハイエンドを狙わないと決めたとき)、多くの人は壁にぶち当たります。
「勉強漬けのご褒美がゲーム」のような日常を送ってきた子どもにとって、「やりたいこと」とは何でしょうか。
「打ち込めるものってある?」と聞くと、大概の子からは「ゲーム!」という応えが返ってきます。
勿論それはそれで構わないのですが、そこからどんな方向にどうやって糸(新たな進路)を引いていくか。ここが今、子育てと教育のエアポケットになっています。
学校では習わない「プログラミング」や「3Dモデリング」に触れさせて、子どもの反応を見る。そして興味を持ったら応援してあげることは、なかなかいい方法です。
この2つは「論理的な思考力とプログラミング的な考え方」を知るとともに、「創造力と表現力」を磨くのに役立ちます。
そして何よりも、ここで身に着けるスキルは、間違いなく世の中の新しいサービスやプロダクトにつながるので、将来のキャリアにも広がりと新たな選択肢が出てきます。
音楽やアートもデジタル技術を活用したものがどんどん増えています。映像技術はAIとも結びつく無限の可能性を持っています。
こうした『新鮮な刺激』をルーティーン化した日常に入れ込んでいくうちに、子どもたちに変化が見え始めればしめたものです。
【新しい価値観】
中高生たちと話していると、「人の役に立ちたい」というしっかりした意識(価値観)を持った子が少なくありません。とても素晴らしいことです。
大人の皆さんは、このことに気づいているでしょうか。
がむしゃらに生きてきた自分。取り繕った人間関係。利他といいながら結局は自分のため。横並びの中でちょっぴり得したい。
そんな大人たちとは異なる視点で、社会との繋がりを持とうとする子どもたち。
そうした気持ちやそこから生まれる様々なアイデアを、カタチにして発信できれば、その伝搬を通じていろいろな人たちからの共感が期待できます。
大人がお手伝いできることがあるとすれば、それは、
そんなことを、いま感じています。
▷ プチまとめ
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