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Ep.3 後編 自我を超えていく

取材は、2022/06/13 大分市内の渋谷さんが構えていた「つむぎ」という名のスタジオで行われた。
対談  渋谷明子さん 以下(A)  
    平川景子さん 以下(K)
インタビュアー  ニドム 時人 以下(H)
          きょうこ 以下(Y) 
記事 きょうこ 
前回までのエピソードは↓のリンクからどうぞ!

 



話すことでの解放

(Y)お二人は、人を見る仕事にどのように向き合っていますか?

(A)景子ちゃんはマイソールスタイルでしゃべらない方法だけど、ここに来る人はけっこうな割合でしゃべりに来る。マッサージにきてるけど、しゃべりに来てるみたいな。ここがそういう場所に向いているのもあるのかもしれないけど。以前はどうなのかな?と思ったこともあった。でも今ではどんな方法でも、帰る時に清々しい顔して帰っていったらいいのかなあ、と。もはや、ここはそうゆう場所なんだって。ヨガの手法で話して浄化するってこともあるし。その人たちが何か楽になっているのなら、愚痴を言っても、楽しい話をしていても、いいんだろうなって今は思うようになった。

(K)日常生活で大人になると、話に合わせたり、言いたいことを控えたりすることってある。それを、時々言葉にして、会話の中で自分の考えを整理してスッキリさせることもいいのだと思う。

(A)自分の意見を合致させる作業が時々必要なんだろうね。あとは、私は答えを言わないようにしている。

(K)「あなたが間違ってますよ」とか、「それは違います」とか言わないですよね(笑)

(A)例えば、「ふつうはこうですよね?」とか聞かれても「ふつうは知らない」って同調したりもしない。自分の「ふつう」を考えたらいいと思う。正解は自分で決めたらいいと思うし、私が言うことではない。私がジャッジを入れないからみんなすごくしゃべるのかもな。

(K)しゃべりたくてきてる人が、しゃべれなくならないようにね!

(A)今回、この場所を閉めるってことを来てくれる人に伝えていったら、この場所を愛してくれていたっていう。この場所がばあちゃん家に来たみたいな、話しやすい雰囲気だったし、そうゆう役割だったのかなって思う。自分の特性かわからないけれど、ここではそうゆう役をはたしてきたのかなと思っている。



2024 メキシコ人講師アルネさんWS  主催 Mysore Oita

話さずに感じとる

(K)マイソールクラスは基本しゃべらない。聞きたいこと確認したいことがあれば話してもらっていいんですけど、八支則の実践をするために基本的には話さないんです。反射的に感じたことを言葉にするのっていうのも一つの癖なんです。それを一歩下がって、本当に必要なことかなって考える。そんな方法でやっています。私は教えることを始めた時に、*1 ドミニク先生に「生徒をジャッジしたらだめだよ」って言われたんです。しているつもりははいけど、やってしまうんです。例えば、この人は毎日来るな、とか。この人はポーズをとばすな、とか。この人は一回言っただけですぐにわかってくれる、とか。それで終わればいいんですが、だから好きとか、嫌いとか。そうむすびつけることを一番気をつけないといけない。自分と同じ考えの人は好きとか、違う考えの人は嫌いとか、よくやってしまうことだけど、それを超えることがヨガの目的だから。個人的に気をつけています。

(A)やっぱり気をつけるって大事なんだろうね。

(K)苦手な人、嫌に感じる人っているんだけど、なんでそうなんだろう?って深く掘っていくと、必ず自分の何かを反映していることが多いから。人に指をさすのではなくて自分に向ける。

(H)自分のなかで解決できることですか?

(K)そうです!マイソールクラスって、ひとりひとりが自分の呼吸と体を使って、それぞれに練習をしています。問題もひとりひとり違う。それにただ向き合っていればよい。指導者の立場の私が、自分の問題をその人に押し付けてしまって、自分の価値観を押し付けて、生徒さんの問題が出てこれなくなってしまわないように気をつけている。

(A)これって言葉がない方がいいんだろうね。言葉ってそれぞれイメージがあったり、意味が違っていたりすることがあるから。マイソールクラスのようにそれぞれが感じることを大事にしていると。そんなつもりはないけど、時々先生の意見を押し付けてしまって邪魔になっていることも見かけるから。生徒さん本人の練習なんだけど、先生の練習でもあるかもね?
(K)それもあると思います。本当にいつもありがとうございます(笑)


 景子さん @メキシコ

受け取ってきたことを受け渡す

(Y)それぞれの個性に寄り添うって気を遣う作業だと思います。心がけていることはありますか?

(A)そうゆうのは、段々にですよね?

(K)経験が必要だと思う。自分が正しいと思っていることが、自分だけが正しいのはおかしなことで、誰にとっても正しい事じゃないと教えられない。自分の体にとって正しい事を伝えるのではなくて。それを超えないといけないだろうなって思う。

(H)自分がヨガをするだけでなく、教えるって立場になった経緯は?

(K)ヨガを始めて、始めてインドに行って帰ってきてから、*2 カポタアーサナーが怖くてできなくなってしまったんです。それまでは、みんなで練習しても、一人でしても変わりないと思っていたんですけど、実際は変わっていて、一人で練習するのが厳しいなって感じたんです。それで何人かの人に声をかけて一緒に練習しませんか?って始めたのがきっかけです。
でもそれだと初めて参加したい人が来れないからって、教えることを始めたんです。当時は毎日練習できる場所がなかったから。教えているのにすみませんが、私は私が先生でなくてもいいなっておもっていました。誰か代わりに教えてくれる人がいたらその方がいいなって。
それで、メキシコに行って一年半くらいは自分の練習はするけど、人に教えることをしていなかったんです。それで、つい最近なんですけど、帰国する少し前に、アシュタンガヨガの自主練のコミュニティがあるから行ってみたらって言われて。それで行ってみたんです。自主練をしてる人が7.8人いて、その練習がメチャクチャだったんです。何やってるんだろう?ってびっくりした(笑)
私、教えないとダメかもしれんって。それが気にならなかったらいいんですけど、すごく気になっちゃって。やっぱり私、教えたいんだ!って。

(H)せっかくの練習だから、こうしたらもっとってかんじですか?
(K)そう!それです!それが本当に帰国の直前です。
(H)第二章の始まりみたいな?
(A)先生になったんだねぇ。
(K)世直し隊じゃないけど、表面的なことを教えていくと無知が無知を生むって。心も体も浄化するためにやっているじゃないですか?例えば、過去の記憶とか、価値観とかを整理して手放していくことをするんですけど、反対にそれを強めてしまうことってあるので。やっぱり、私は習ってきたから。習ってきたことを教えるってこと。ガイドする、手助けするってことが私にとっての指導です。
(A)受け取ってきたけんね!これはこうする、こうした方がいいってことは伝える。
(K)私が教えられて助かっているんです。10年間で心持ちが変わったんです。これはみんなに起こりうることです。


左 お母さんと妹 右 景子さん♡


旅の効能

(K)以前は、言われたことに傷ついて、自分の意見が言えないとか、協調性とか、空気を読むとか、めんどくさい人間だったんです。
(A)メキシコに行って発言することをしいられたね。以前は、答えるのにすごく時間が必要だった。日本人ってディベートに慣れてないから質問を用意しておかないと話せないとかがある。景子ちゃん、すごく変わったね!

(K)言語の問題もあるんですけど、ある日気づくんです。これは他言語だからじゃない。何語でも答えられないなって。日本語でも多分いえないなって気づくんです。

(H)そんな難しい質問なんですか?

(K)ぜんっぜん!そんなことなくって、例えばあなたの自己紹介をしてくださいとか、感想を教えてください、とか。全然難しくないけど私にとっては難しい。それは今までしてこなかったから。対人関係で、日本は察してくれるから言う必要がないことも、向こうにいると言わないと伝わらなくて。言わないと何で教えてくれなかったんだって言われるのが毎日あって。

(Y)日本だと日常会話で本音を言うってあまりないし、重たい雰囲気にしないことが多いですよね。

(A)悪気がなくて、バンって言ったことがすごく人を傷つけたりすることがある。日本人はみんな言わないから。

(K)言わないのって一見平和に見えるけど、どっちもわだかまりで不具合がいつかでるから、ちょこちょこ出して合わせていくスキルを築いていく必要があった。失敗をしたくないとか、失敗を見せたくないとか、恥ずかしいとか思っている場合じゃなくなって、言いたいことも言えない、何を考えているのかわからないって、子供に戻ったみたいな経験をして、変わらざるをえなかった。日本にいたらできなかった。環境が変わったことで、わからないことを、わかるふりをしなくなったり、わからないと伝えることを学んだ。

(A)外国に行くってそういうこと。英語を教えていた時に、外国に行った方がいいよってよく伝えていた。若い時に私の世界はすごく小さいんだって、こんなに違うんだ!って知ること。かと思えば、スズメとかは日本と同じだな!とか知る。
(K)あとは、ケンカとか対立とかはなるべく避けてきたけど、自分の意見を述べるって大切。日本では、反対の意見を言うと、否定していると思われちゃうから気をつけないといけない。メキシコのひとは、その仕方がうまい。言いたいことを言って、仲直りする。自分が何を思っているかを大切にしている。日本人はよくも悪くも相手がどう思っているかを大事にしているから。
(A)価値観が外にあるんだよね。自分が自分のことを認めていたら人がどうか気にならなくなる。我慢とかも。
(K)自分が自分であるっていうのが大事!
(A)メキシコは景子ちゃんを解放してくれるいい場所だったんだろうね。英語講師の時に、とにかく外国に行けって言ってたんだけど、自己解放にすごく簡単な方法だと思う。違う価値観に触れる。
(K)環境が変わると、視点が変わって失敗を恐れずにチャレンジできる。あとは、旅をすると、人に頼らないといけない時があって。何かを尋ねたり、正直にわからないと言ったり、相手の親切を受け取ったり。その経験って自信になると思う。日本にいると、自分で解決した方が早くって、人に尋ねることがめんどくさいことも旅に出たら、あえて人に聞いたりすることもいいです。
(A)普段会わないような人の面白い話を聞いたり、枠が外れる!



渋谷明子さん CA時代♡

(Y)今回のインド訪問の目的はありますか?

(K)以前は毎年通っていたけど、私の先生のシャラ(道場)が、ある時からすっごく人気になって、2017年にアプライしても満員で入れなかったり、その次の年も同じで、エントリーに疲れてしばらく行けないことが続いた。メキシコに行っていたりもしたし。コロナ明けに久しぶりに先生のシャラで募集が出たので、今だって。ちょうど帰国して、何もないし行ける状況にあるから。いろんな経験をして今、久しぶりりに先生のところに行ったら私はどう受け取るかなって気持ちでいます。

(A)オンラインで教えていただいている*3 チャンティングの先生に会うのを楽しみにしている。この場を閉めることもあって3ヶ月と長く滞在できる機会が今あるから、久しぶりに初心に戻ったようにアーサナの練習にフォーカスしてみると、どんな自分が出てくるのか楽しみにしています。

2024 サリー屋さんの明子さん

自分への手紙

最後に、この特集にはある仕掛けがあります。
お話を伺ったあとで、自分への手紙を書いていただいています。
時間が経って忘れた頃に、このお手紙は郵送でご本人に送ります。
お手紙を書く時に、自分の名前をつけて書き始めてもらいます。
また、お手紙にはある設定を設けています。

これから先の人生を生きて、
自分の人生を終えた後に、人生を振り返ってみるとします。
そのとき、今の私になんと言葉をかけますか?
または、自分を守護している存在がいるといるとして、
その守護霊が私に言葉をかけるとしたら、
どんな言葉だと思いますか?
俯瞰して静かな気持ちで自分へ向けた言葉を書いていただいています。


私へ

渋谷明子さん


平川景子さん

キャプション

*1 ドミニク先生 
アシュタンガヨガの創始者パタビ・ジョイス氏の正式指導資格者であり、30年以上にわたって指導を続けている世界有数のシニアティーチャー

*2 カポタアーサナ
アシュタンガヨガ インターミディエートシリーズの後屈のシークエンス出てくる難関なポーズ

*3 チャンチィング
チャンティングとは詠唱、マントラ(mantra)を唱えること。 サンスクリット語の音の振動が生み出す癒しの効果により、マインドフルネスや瞑想の実践に行う。



プロフィール

渋谷明子 福岡出身。航空会社勤務後、英会話講師、タイマッサージ店勤務を経て大分市内でタイマッサージとヨガのスタジオ「つむぎ」を2023年までの11年開設していた。現在はご縁のある方に施術やヨガの指導をしている。

平川景子 大分県臼杵市出身。2011年アシュタンガヨガに出会い、大きく感銘を受けて2012年よりインドマイソールにあるKPJAYI(現SYC)へ定期的に通い、Sharath joisのもと実践を深めている。2013年よりヴェーダンタ協会会長Medhasananda Maharajiのもとインド哲学と実践を続けている。KPJAYI Authorized Level2を保持。マイソール大分主催。

http://mysoreoita.jp/


サマディへの旅 完!
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