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男の未練の行方と女の自分探しについての考察-韓国ドラマ『都会の男女の恋愛法』

韓国ドラマ「都会の男女の恋愛法」は、チ・チャンウク演じるパク・ジェウォンとキム・ジウォン演じるイ・ウノを含む男女6人の恋愛が描かれるドラマだ。

「別れたら思い出の品はどうする?」「別れた人と偶然再会したら?」「望ましい別れ方はある?」など、恋愛に関する質問に登場人物たちが答えていくインタビュー形式で物語が展開する。



個人的には、タイトルが示す「都会の〜」的な洗礼された恋愛ではなく、主人公ジェウォンのウノへの「未練」がコテコテに演歌調なのが気に入った。

ここでは、ジェウォンとウノの恋を中心に「都会の男女の恋愛法」を観て感じたことを綴ってみたいと思う。


1.一途な男、ジェウォンの未練の行方

とにかく、このドラマの面白さは、ジェウォンの存在あってこそ。

イケメンで建築家としてのキャリアを持ち、父の会社でチーム長として働く彼は、ロマンチストで優しく、ある意味理想的な男だ。が、そんなジェウォンが恋に落ち、彼の持つイメージとは真逆な「未練がましさ」を発揮する。

その「未練」のきっかけとなるのは、長期休暇中、旅先で出会ったユン・ソナ(実はイ・ウノ。事情があり偽名を使っていた)との恋。

ジェウォンとソナは2ヶ月を共に過ごし、お遊びとはいえ結婚式まで挙げた仲。
そんな幸せの絶頂にいたにも関わらず、ジェウォンはいきなりわけもわからずソナに振られてしまう。

振られた理由がわからないジェウォンは当然納得がいかない。
ソナの心変わりに心当たりがない彼は混乱する。


連絡先すらもわからず別れることになってしまったソナのことが頭から離れないジェウォンは、この失恋のショックから立ち直れない。
それでも、ソナを「ひどい女」と思うことでなんとか心のバランスを保とうと踠いていた。


そんなある日、ジェウォンはソウルで偶然ユン・ソナを見かける。
しかし、彼を認識するなり全力疾走で逃げる彼女。

ここから彼の苦しみは急加速する。
別れの理由を知りたいジェウォンと別れた理由を話したくないウノ(ソナ)。
右葉曲折あってようやく再会した後も、ジェウォンは彼女に冷たくあしらわれる。しかし、ジェウォンはあきらめきれない。
ソナが偽名だとわかっても、結局は彼女を好きでいることをやめられない。


男の未練とは、論理的に理解できない状況下においては解消されることはないのだろう。悲しいかな、ジェウォンはウノの態度に翻弄され続けることになる。

一方で、女は未練はどうだろう。
未練は男女共に抱く感情ではあるけれど、少なくとも女は男より現実的。論理が破綻してようと、ダメなものはダメと諦められる。そして、次の恋が始まれば意外とあっさり忘れてしまう。



「男の恋は別名保存、女の恋は上書き保存」とはよく言ったもので、事実、男友達と話していて時々驚かされるのが、初恋の人だとか、片思いだった人のことだとかを事細かに覚えていること。

確かに私だって過去に恋した人の存在は記憶している。でもそれは高校の文化祭の思い出とか部活の思い出など、それらと同程度の位置付けで、新しい恋に出会えば前の恋は「思い出箱」にしまわれいつしか忘れてしまう。
いずれにしても、こと「過去」への想いに関しては男と女では温度差があるような気がする。



話しをジェウォンに戻すと、彼の気持ちは荒れに荒れる。ソナを忘れられず泥酔したり、ソナに対して悪態をついたりしたかと思えば、別れる前に彼女と約束した待ち合わせ場所に行って感傷に浸ったり、ペアリングをいつまでもはずせなかったり。

ジェウォンの心の傷は深く、そして「未練は続くよいつまでも」だ。

でも、そんな彼の姿こそがこのドラマの見どころ(少なくとも私にとってはツボだった)。

彼が嫉妬したり自暴自棄になったりする姿は、彼女への愛情の裏返しであり気持ちの強さ。そういう意味で女心をくすぐるのだ。


さて、物語はみじめな未練だけを描いていては進まない。

遂にジェウォンはウノの本当の気持ち、すなわち自分への気持ちが変わっていないことを知る。

それがきっかけとなり、ジェウォンの未練は「あきらめられない」から「あきらめない」に変わる。
この「あきらめられない」と「あきらめない」は同じ未練でも雲泥の差。
なぜなら、「あきらめない」には強い意志が込められているから。

ウノが心の傷を隠したがる気持ちは正直理解できないジェウォンだか、彼女が自分の意思でジェウォンと共に生きる決意をするまでは、何をしても無駄だと悟ったのだ。

だから「あきらめない」で、彼女を待つことにした。

そして、彼の未練の行き着いた先であるこの「あきらめない」が結局のところウノの心を動かした。

真面目で一途、そしてロマンチストなジェウォン。
かっこ悪いところも存分に見せてくれ、そこがまた愛おしい。



2.「自分探し」をする自分を見守る男がいる幸福について

一方でユン・ソナを名乗っていたイ・ウノはどうだろう。

図らずもジェウォンの心を弄ぶ結果となってしまった彼女。

確かに、ウノの心の傷(婚約者に二股をかけられていた)は彼女だけのものだけど、それをひた隠しにする気持ちには正直あまり共感できなかった。

とはいえ、失恋や就職の失敗よって自信を失ってしまった彼女が、立ち直りの途上にあったことは事実。ジェウォンの元から去った理由が、彼に本当の自分、つまりは「みじめなイ・ウノ」を見せる勇気がなかったという設定も、リアリティという意味ではありなのかも。

何はともあれ、ウノは、婚約者に裏切られるようなバカな自分から脱皮するために「ユン・ソナ」として生活していた時、ジェウォンに出会い恋に落ちた。

しかし、みじめでバカな自分を知られたくない一心で、一方的にジェウォンとの別れを決めた。

そうなると翻弄されるはジェウォンの方。
恋は秘密を持っている方に分があるのだ。
なんかこう、フェアではないけれど。


さて、ソウルでイ・ウノのとしての日常に戻った彼女はジェウォンに再会しても素直になれない。そのくせ、彼とのことを「過去」と割り切りきれずに苦しむ。

そして、ついにジェウォンに告げる。

あなたへの思いより 今は自分自身が大事なの


こうして何度もウノに振られるかわいそうなジェウォン…。

しかし彼は「あきらめない男」。

前述のように、彼女を見守ることを決意する。
心の傷と自信のなさから抜け出せないウノを待ち続けるジェウォンは、言うなれば全てを許してウノを包み込んでくれる王子様的存在であり、視聴者はそんなジェウォンに心が温められる。

何はともあれ、「自分探し」をする自分を優しく見守る男がいるとは、なんとも幸せなシチュエーション。ウノになりたい視聴者は数多いに違いない。


3.男女のリアルが描かれる「都会の男女の恋愛法」

このドラマの登場人物たちの言動、そして心の動きは、いわゆる「恋愛あるある」だ。

意地をはったり、素直になれなかったり、押せば引かれ、引けば押される。
想いが通じずやけになったり、嫉妬をしたり。さみしい夜に声を聞きたくなったり、酔わないと本音が言えなかったり。

とにかく、恋をしたことのある人なら共感できる要素が盛りだくさんなドラマゆえに、ついつい引き込まれる。男女のリアルがそこにあるのだ。


さて、実は「都会の男女の恋愛法」は「秘密の森2」と並行して鑑賞していた。
というのも、サスペンス系を見ているとどうしても気持ちが沈むので、サプリメント的に明るい恋愛ドラマで気分転換をしたかったから。

あまり期待しないで観始めたこともあり、途中離脱するかと思いきや、意外にもサプリメント効果は絶大だった。と言うより、続きが気になり、結局は「秘密の森2」より先に完走してしまった。


このドラマは1話約30分という尺で気軽に鑑賞できるのも良いところ。インタビュー形式での進行はテンポもよく斬新で「観心地」が良かった。
それに加えて、映像はスタイリッシュだし、登場人物たちのオシャレな部屋や生活から、今時のソウルが垣間見れて興味深かった。


「都会の男女の恋愛法」はドロドロ皆無、爽やかさと軽やかさがすがすがしい作品。

韓国ドラマはつくづく層が厚いと思うのであった。


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