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【自己紹介】『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』を読んで見えてきた私の価値観

原動力、そして忍耐力となる「なぜ」

「能力とかスキルとかって別に起業家だから必要なものはないと思ってて、逆に起業家だからこそ必要なのは忍耐力だと思ってるんですよ。色々な困難に耐え得るチカラ。んで、その忍耐力ってどこからくるのっていえば、起業家としてやっていく理由の強さだと思ってて、なんとなくファッションで始めた起業は、辛くなったら能力あってもすぐやめちゃうし、逆にどんな逆境でも絶対成功しなきゃいけない理由がある人とかはそういった意味だと強いなぁって思います」

私は将来、地元の青森に帰って事業をしたい。
でも今の仕事も続けたいから、青森で活躍している人にお話を聞きながら、具体的にどんな事業にしようかなーって妄想しているんだけれども、
先週、青森の先輩起業家からこの言葉を受けてから、私はずーっと考えることから逃げて、だらだらNetflix見たり、スマホいじったりする生活をしていました。

困難を乗り越える忍耐力、そしてその原動力ー。
先輩の言うことは起業だけではなく、スポーツとか、勉強とか、何にでも共通することな気がします。どうやるのか、よりも、なぜやるのか。
高校の部活でも、留学でも、就活でも「なぜ」を問いつづけてきたのに、最近のわたしはそこを完全に見失ってた気がする。

なぜ、青森に帰って事業をしたいのか。
なぜ、今この仕事をしていて、続けたいと思うのか。

ちょっと考えてはモヤモヤしてネガティブになり、だからなんとなく考えたくなくて、この1週間は仕事に身が入りませんでした。でも昨日本を読んで、少しずつ見えてきた気がします。


『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』を読んで

本の内容を超簡単にまとめると、「伝統的で高度な技術やこだわりをもって作られたモノが、正当な価格で買われ、地域経済が潤うような仕組みを作っていこうぜ!」みたいな感じです。著者はそれを、天然酵母から作ったパンを作って売ることを通して実践しています。(このパン作りへのこだわりがハンパないので、興味ある方は是非読んでいただきたいです!)

著者は野菜の卸会社で働いてたときに産地偽装したり、パン屋で修行してたときに無添加パンだと偽ったり、そんな会社に疑問を持っていました。

また著者は、現代の資本主義にも疑問を呈しています。資本家が利潤を追及するあまり労働者は搾取され、新技術ができて作業効率が良くなっても、すぐに競合がより良い技術を生み出し、商品は安くなって賃金も下がり、、、

人口的に培養されたイーストは腐らないパンを生み出し、食と職の価格を下げ、作り手への感謝の意までも奪っていく。お金も循環するどころか、投資による利潤や利子によってどんどん増えていく。筆者はこのような現代の経済を「腐らない経済」とよんでいます。

一方で、著者がめざすのは「腐る経済」
利潤は追求せず、天然酵母と地域の材料で丁寧にパンを作って、その技術や労力を消費者に知ってもらい、正当な値段で買ってもらうー菌が育って生地を発酵させるように、小商いや職人が育って、経済をよくする(発酵させる)、そんな地域社会を作りたい、とのこと。

(渡邉格『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』講談社、2013)

天候とか材料とか、いろーんな条件がそろわないと天然の酵母はうまく発酵してくれなくて、目に見えない菌と真摯に向き合って、自然と著者がつながってパンを作る感じが、すごーく神秘的に感じました。

同時にその神秘的な、昔の日本人の知恵や技に魅了させられました。
発酵食品、伝統的な建築技法、竹細工、染色技術・・・どれも生活に欠かせなかったからこそ、何百年と受け継がれてきたのです。

それなのに、伝統工芸の職人さんたちまで、「腐らない経済」の波にのみこまれています

私が今やっている仕事は、伝統工芸や町工場の職人さんが作ったモノと、国内外の小売店などのバイヤーをつなげることです。

確かに、昔ながらのタンスとか仏壇とか、現代人のライフスタイルに合わないから買わないよーって思うし、実際に売れてないから廃れていっているのが現状です。
だから伝統工芸の良さを再認識して売っていくために、デザイナーやプロデューサーが間に入って、商品のデザインやブランディングを手掛けています。実際にヒット商品が生まれたり、海外からも高く評価されたりしています。

でも、その先には何があるのでしょうか?
一度ヒットした商品でも、いつかは売れなくなり、また売り上げを伸ばすために新しい商品をつくる。市場には海外産の安くて便利なモノや、模倣品があふれているにも関わらず・・・。競合が多い中でも売っていかなくてはいけないから、価格も安くせざるを得ない・・・。

デザインやブランディングは、日本の伝統工芸に親しみのない人にも商品を買ってもらう手段の1つとして良いとは思います。でも、結局それは、「腐らない経済」のなかに伝統工芸が位置付けられていることを証明しているし、それだけでは伝統は受け継がれることはないのだと気づきました。

著者はこの本の中で、以下のように述べています。

 「差別化」しようとしてつくったものに、たいして意味のある違いなんて生まれないと思う。
 「個性」というのは、つくろうとしてつくれるものではない。つくり手が本物を追求する過程で、もともとの人間性の違いが、技術や感性の違い、発想力の違いになってあらわれて、他とどうしようもなく違う部分が滲み出て、その必然の結果として生みだされてくるものだ。・・・
 ・・・「人と違うことをしよう」という発想は、「人と違うものがない」ことを自覚していることの裏返しでしかないのだ。

そもそも伝統的な技って、生活に必要だから職人さんがこだわって改良を続け、立派な技術として受け継がれ、何百年も残っているんですよね。売って利潤を追求するために受け継がれたものじゃない。だからそもそも、現代の資本主義にそぐわないことは当たり前なんだけれども、かといってなくなってしまうと、うまく言語化できないけれど、人々の生きる力がどんどんもろくなっていくような気がして・・・。
自然栽培の野菜は、虫や菌などいろんな生態系の中で生きているゆえに、自分でそだっていく力がある。一方で肥料や農薬になれてしまった野菜は、自分で栄養をとったり、外的から身を守ったりできないから脆い。こんなふうに、このまま伝統的な知恵や技を受け継がなければ、現代人は自然を理解することも、その中で生きていくこともできないような気がしています。

この著者がパンで実践しているように、受け継がれてきた、つまり必要とされてきた先人の技術や知恵を理解して、適正な価格で買う人が増える仕組みを作れば、伝統工芸も決して廃れることがないのかな、と。
例えば私はこないだ、堺の庖丁を買ったのですが、原料をとってくる人、柄を作る人、刃物を切削する人、研磨する人、出来上がった商品を売る人、みーんなが潤って、地域が潤って、次世代の職人が育って、技が受け継がれていく。そんなイメージ。

とはいえ、モノの消費の仕方って、所得や価値観で変わると思います。わたしはいま、比較的所得は低いから、大事に思うモノコトにはお金かけるけど、それ以外は安いやつでいいやーって思っちゃう。
だから、モノを買うときの価値観を強制するわけではなく、昔から受け継がれてきたモノを買う、という選択肢や仕組みを作っていきたい。その仕組みがどんなものなのか、どうやって作っていくのか、私にはまだわかりません。でも、今の仕事をやりながら、答えを探っていきたいと思いました。


「腐らない経済」への違和感と挑戦

私はモノであふれている世の中に違和感を持ってきました。
安くて便利なモノの裏側には、途上国で低賃金で働いている大人や子供がいて、人体に悪影響のある材料が使われていて・・・。人々はそれを買っては、飽きればすぐ捨てて、また新しいモノを買う。環境にも良くない。

他にもたくさん疑問や違和感を持っていて、例えば途上国の援助。そもそも援助といっている時点で、私たち「先進国」と、支援される側の「途上国」みたいに立場に違いがある。それに援助される原因、つまり紛争や難民などを生み出した原因の多くは、先進国がくだらない利潤や政治的利権を求めたことにある。

一生懸命受験勉強して、良い大学に行き、大企業に入る。たくさん給料をもらっても、幸福度が低い人たち。良い機会を求めた結果、地方から人々が都市に流れ、過剰なくらいに東京は人口密度が高い。

移民(正確には日本に移民はいないことになっているが、便宜上よぶことにする)も同じ。機会を求めて国境を越えるが、その先で宗教や人種に基づく対立が起きている。

他にもたーくさん違和感を持っていて、いつも考えてはモヤモヤし、何も解決できない自分にイライラしていましたが、

『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』を読んで、これらの私の違和感は共通して、筆者の言う「腐らない経済」に対する違和感なのだと感じました。

田舎ですくすく育った私ですが、高校生ぐらいから知らぬ間に「腐らない経済」に巻き込まれてきたんだなと、気づきました。

別に資本主義を全否定するつもりはなくて、こうして生活できるのは今の会社が私に賃金を支払ってくれるからというのは承知しているのですが。

でもやっぱり私は著者のように、行き過ぎた資本主義から外れて、地域の1人ひとりの能力や技術が評価されて、正当に対価が支払われ、地域経済が潤うような仕組みづくりにすごく共感する。だからこそ、近い将来とっても故郷に戻りたいし、そこで事業をしたいんだと思う。

今はそのために、会社で修業する時期なんだと思う。
伝統的な技術や知恵を理解して、適正な価格で買う人を増やしたい。ゆくゆくは、地域経済が潤うような仕組みを作りたい。

困難を乗り越えるための原動力、私にとっての「なぜ」やるのか?それは「腐らない経済」への違和感であり、挑戦なのでした。

頭のなかスッキリしたから、ラーメン食べてこよーっと!\(^^)/

おわり。

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