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後発の記事だからこそ、面白くできる

「編集ってすごいなぁ」と、改めて感じた仕事だった。

近年、ベンチャー企業が急増している五反田。この地に拠点を構えるベンチャー6社が品川区と協定を結び、「シリコンバレー」ならぬ、「五反田バレー」を設立したという旨のニュース記事だ。

「五反田バレー」設立のニュースは、NHKをはじめとした有名メディアにも取り上げられており、見比べると各社のカラーがよくわかる。

先に挙げたように、弊社(ノオト)が運営する品川経済新聞でも、このニュースを取り上げた。ただ、スケジュールの都合や僕の執筆速度の問題もあり、他メディアより1日遅れて出すことになったのである。

後発のニュース記事なので、ほかのメディアが取り上げていない側面を入れようと努力した。でも、出来上がった記事は「あぁこんなものか」というもので、どこか物足りなかった。それでも自分ではどうしようもなかったので、煮え切らないまま原稿を編集に出すことにした。

しかし、編集から返ってきた記事を見て、僕は驚いた。「魔法」がかけられていたからだ。僕が感じていた物足りなさは、スッキリと消えてしまっていたのである。

具体的には、最後に付け足されていたこの2段落。

 設立発表会の模様はNHKやフジテレビのニュース番組で取り上げられ、ツイッターのおすすめトレンドにも「五反田バレー」が登場。「そもそも五反田は谷なの?」「バレーボール感がすごい」「五反田バレーってなんか下町ボブスレーみたいな語感だ」といった声のほか、「五反田バレーでリベロやってます」など、ノリのよいツッコミツイートも見られた。 

 品経の宮脇編集長は「これだけ話題になったのは、6社合同の広報・PRによるチーム力のたまもの。ネーミングがダサいといった声は確かにそう思うが、五反田にスタイリッシュさはいらない。かつてベンチャーだったソニーが成長を遂げたこの街から、日本を代表するような企業が生まれてほしい」とエールを送る。

引用:五反田のベンチャー6社が「五反田バレー」設立 ツイッターでは「バレーボール?」の声も

これの何がすごいのかというと、①後発の記事ならではの情報が入っていること、②ネットコンテンツらしい味があること、③五反田への愛情が込められていることの3点である。

①に該当するのは、ツイッターからの情報を記載した箇所。普通ニュース記事は、その場で取材した内容をすぐに記事にして出すため、ツイッターからの情報は取ってこない。これは後発だからこそできることである。

②に該当するのは、「バレーボール感がすごい」「五反田バレーでリベロやってます」など。ネットコンテンツらしい俗っぽさ、距離の近さを感じる内容で、記事にキャッチーさが加えられている。

③に該当するのは、宮脇さんのコメントである。あえて少しディスることで五反田への愛情がありありと伝わってくる。五反田に拠点を置く企業の代表であり、五反田を含む広域品川区域のニュースメディアの編集長でもある宮脇さんだからこそ言えることで、流石だなぁと感動していた。

とまぁ、あんまり自社記事の良さをアピールし過ぎると、「ただの自慢かよ」と思われたり、ほかのメディアが劣っているように見えてしまうかもしれない。しかし、そんなことは断じてない。イベントがまだ終わらぬうちに記事を出せる要約力や執筆力は脱帽ものだし、簡潔に必要な情報を伝えることにおいても大手メディアの方が確実に優れている。

ただ、後発情報だからこその面白さを引き出す技術においては、ニュース媒体を専業としていない編プロだからこそのものがあると思う。たまにこうして大手メディアと一緒に仕事をすることがあるが、そこで彼・彼女らのスキルの高さに劣等感を抱えるのは少し違うのではないか。経験や歴史の浅いネットメディアでも、自分たちが培ってきた技術や戦略をフルに使うことで、大手とはまた違った見せ方ができるはずだ。

この記事はその好例となり得るので、参考になればと思い共有させていただいた。僕自身こういうのが編集に出す以前に書けるように、「魔法」のレパートリーを増やしていこうと思う。

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