見出し画像

みんなのNPO研究室|#6学生時代のサークル活動が私たちにもたらしたもの

最終回となる今回は、『学生時代のサークル活動が私たちにもたらしたもの』をテーマに、2人のゲスト(予定していたゲストのうちお一人がご都合により当日欠席となりました。)と、ファシリテーターをお招きし、進路選択や将来への不安が軽減されたり、サークル活動の意味を考えることで明日の活動が楽しみになることを目的としたトークセッションを行いました。

地元京都にUターンし、志摩機械株式会社の社内ベンチャー事業で、大好きな自然と地域や次世代と関わる仕事に携わり、ネイチャーガイドや古民家活用、ラジオパーソナリティー、ソーシャルグッドプロデューサーなど様々な業務を担当している、山下恭平さん。

静岡県立大学国際関係学部2013年卒

静岡県牧之原市の市役所職員として働きながら、牧之原市消防団女性消防隊隊長も務める、宮崎真菜さん。

静岡県立大学国際関係学部2015年卒

そして、今回ファシリテーターを務めていただいたのは、認定NPO法人カタリバでユースワーカーとして働く、山本晃史さんです。

静岡県立大学国際関係学部2015年卒

ゲストとファシリテーターの大学時代から今まで

大学時代に見つけた自分のキーワード。-ファシリテーター 山本晃史さん

学生時代は、中高生が学校を超えて何かをチャレンジしていくことをサポートすることに面白さを感じる中で、海外の「ユースワーク」を学びたいと考え留学。その後、いろんな人の価値観に触れ、「対話」というキーワードも見つかりました。そんな山本さんが最初の進路選択ではどんなことを想っていたのでしょうか?

山本さん:誰かに声をかけてもらって、仕事が見つかると嬉しいな~と思っていたら、ちょうど東京でこんな仕事があるから一緒にやらないかと声をかけてもらって、対話を大事にしてまちづくりを行う社団法人に入りました。その他にも複数の仕事をもってやろうと思い、週末地域に出かけて行ったり、シェアハウスをやってみたり、区の非常勤の職員をやりながら、聞き合いのまちを作っていこう!ということを大事に仕事をしていました。

3-4年つづけ、いろんな世代のことを考えていくことが大事だと思ったそうですが、やはりもう一度、中高生のもとに帰っていきたいと思うようになり、現職「認定NPO法人カタリバ」に転職します。今では、ユースセンターの職員として働きながら、学校の校則やルールを題材にした生徒主体のルールメイキングを行う事業を立ち上げ、責任者も務めています。

好奇心で動いた大学時代と旅をする中で気づいた価値観。「何とかなる」って思えるように。-山下恭平さん

学生時代は、何か面白いことをやりたい!という想いで友達と一緒にテーマを決めて語り合うサークルを立ち上げたと同時に、好奇心でいろんなサークルへの所属と立ち上げを行いました。有機的に行って来たサークル活動と、たくさんの本を読めた(読まなきゃいけない環境にいた)ことが現在に繋がっていると感じ、本を読むことも大学生にお勧めしていました。また、社会貢献サークル以外に、大学入学以前より取り組んでいた音楽活動にも力を入れていました。卒業後はバンド活動に力を入れるべく上京します。関東4県の大会で準グランプリをとり、有名なプロデューサーとの出会いもありましたが売れず、夢と挫折の東京生活のなかで27歳で自己破産をし、国内ヒッチハイクの旅、そしてユーラシア大陸をギター1本で渡る旅へと出かけます。

山下さん:投げ銭をもらって生活する旅をして、どんな形で働いている人でも、誰かの生み出されたモノで生かされている(「1人で生きているのではなく、人に生かされている」)んだと気づき、ないものねだりをしていてもしょうがないと吹っ切れ、腹をくくり地元に帰ることにしました。

帰ってきてからは、得意なことで役に立てればいいとぼんやり思いながら、7つくらいアルバイトをかけ持ちしていましたが、たまたま知人から声をかけられ、NTT西日本で働き始めます。面白い子だと可愛がられていましたが、コロナ禍をきっかけに自分のやりたいこと、自分が働いてもらうお金のことを考えるようになり転職を決意します。

山下さん:植物や昆虫のことが好きで勉強をしていたので、子供たちや自然と関わることを自分のナリワイに出来ないかと思うようになりました。また、学生時代の「キャリア概論」の伊藤洋志さんの授業で、いくつか自分の得意なことを掛け合わせて役に立てればいいなとも思っていました。

現職では、里山のサイクリングガイドや、昆虫採取のイベント企画、コミュニティカフェの運営、ラジオパーソナリティ、子供たち向けのネイチャーガイドなど多くのことに携わっているそうです。自分を振り返るきっかけとなったコロナ禍では、どんな変化があったのでしょうか?

山下さん:営業は歩合が給料の割合を占めていたので、給料に差がありました。こういう資本主義的な数を追い続ける世界観、コロナになった途端に会社が補填するのだろうか…とコロナ前では考えなかったことを考えるようになりました。そういう社会制度そのものや自分が働くことでいただくお金のことを考えるようになり、外的要因で今までの当たり前が変わってしまったときに、(放浪していた時のように)自分が動いて何かが変わる、「何とかなるって思えるように」したかった(自分の手ごたえを試していきたいと思った)んです。それで独立しようと思っていたところ、活動資金を工面してもらう予定だった会社が現職で、うちに来ないかと誘われました。

そして、本当は、自分には複数のナリワイを持つことは出来ないと思っていたという山下さん。田舎に帰り、自分にできないことを安請け合いすることはなく、出来ることや好きなことをやるようにしていたら、お仕事の声がかかるようになり、今のようないくつものナリワイを持つスタイルになりました。また、本当に夢中になれたことを思い出す機会があったのも大きかったとおっしゃっていたのが印象的でした。

大学入学当初からは一転。サークル活動を経て得た価値観。-宮崎真菜さん

卒業後は海外に行くぞ!都会で働くぞ!と思って入学し、そのためには行動力をつけなきゃと思い、いくつかの社会貢献サークルに所属しました。しかし、サークル漬けで授業にはあまり行けず、留年と休学をします。同時期に東日本大震災があったことが転機となり、地元にも目を向けるようになりました。この時期に勢いとノリで愛媛県愛南町と秋田県横手市のNPOでインターンを経験し、田舎の人たちが楽しそうに暮らしている姿を見て、もう少し自分の地元を知ろうという思いをもって復学します。

宮崎さん:社会貢献サークルに所属して良かったと思うのが、素敵な出会いがたくさんありました。一つは、ファシリテーションに出会えたこと。こうやってみんなで話したり、作ったりしていくんだなと学びました。二つ目が、エンパワーメントと出会えたこと。その人が持つ力を発揮できるような応援をしていく、その人の力を信じ切ることに感動しました。もう一つが、仲間や師匠に出会えたことです。一方で、いまでもダメだったと思うのが、遅刻常習犯だったこと、やるやる詐欺だったこと、無責任だったなということです。

就職時も地元といえば市役所でしょ!と勢いで就職した宮崎さんが、仕事の楽しさややりがいにつながる学生時代の経験も語ってくださいました。

宮崎さん:学生時代からやっていたよな、きっとつながっているんだろうなと思うことが、大きく分けて4つあります。一つが、誰とでもフラットな関係性であること。まずは、相手を知って関係性を築くことから始めないと、いい方向に行かないと思っています。行政が、「~させる」「~してもらう」と考えたらダメで、市民の人や企業の人たちは一緒に地域を作っていく人と考えていかないとダメだなと思っています。二つ目が正解のないことをあーだこーだ話し合うこと。三つめがファシリテーションで、話し合いの場づくりについて学んだからこそ、話し合いから何かを生むということができています。四つ目が大きなあいさつ(笑)。第一印象は大事で、挨拶からコミュニケーションが始まるということを先輩から教わりました。

また、宮崎さんは仕事以外に消防団の団長としても活躍されており、大学時代の反省を生かした組織運営を行い、「これなら♬book」というハンドブックをみんなで作成したそうです。女性ならではの目線で、防災という言葉はあえて使わず、女性特有の被災リスクを軽減するための本で、みんなのやりたいを一番に考えて、団員みんなで作り上げました。

サークル活動は、自分にとってどうして大切?今の自分に影響していることは?

このトークテーマでは、参加している方々にも現在のサークル活動の振り返りをしてもらい、zoomのチャットで参加してもらいました。『頼る頼られる関係。人とのつながり。自分にとって何が大切か気づかせてくれる。尊敬できる人に出会える。物事を多面的にみられるようになった。』…などなどたくさんご意見をいただきました。

宮崎さん:きっかけは気軽だったけど、やっていくうちに、はまっていったという感じがする。それから、今日みたいな急なトラブルへの対応が出来る力は身についたよね。

山下さん:事前のアンケートであった、「社会人になって、他の同期の社員と比べて、サークルでの経験による自分の成長を感じたことはあったか?」については、同じ方向を見て、みんなで同じことをやる経験したことで、社会に出ると違う意見を持っていて、見ている方向が違う人がたくさんいるけれど、どんなところに行っても、人のことを尊敬してやっていけるなぁと思いました。それから、人間にとって「言葉が大切」ということに気づかせてくれたと思います。誰かと、ちょっと待てよと立ち止まって考える時間がサークル活動であり、それがかけがえのない時間でした。それで、今また立ち止まって、サークル活動時に読んでいた本を読みなおして、考えていたことを思い返してみたりします。でも、サークル活動は大変だったよね(笑)

宮崎さん:大変だったことを、今の糧にしている気がします。

サークル活動で経験したことや読んだ本を、今でも思い出してみたり、考え直してみたりしているというお二人。改めて、学生時代のサークル活動がお二人にもたらしたものとは?

宮崎さん:「生きやすくなった」かな~。学生時代から生きやすかったわけじゃなくて、学生時代にこれやって良かったということを続けてきたり、負の原体験を変えてきたことで、人に頼るということができるようになりました。それはここ1-2年で身につけたスタイルで、これができたことで生きやすくなったし、働きやすくなった。そして自分をさらけ出せるようになりました。サークル活動って即効性があるものではないと思っていて、これからもきっと影響が出てくるんだろうなと思っています。

山下さん:即効性があるものではないというのはすごく共感します。それで、始めるのにはきっかけはなんでも良いと思ってて、でもそこでできた友達が、一緒に議論できる仲間という財産になったし、自分自身の可能性を広げてもらえた(のがサークル活動だ)と思っています。今、就職活動などで自己分析している人も多いかもしれないけれど、何かをやったから自分が何かになれるという単純なものではないと思うので、(自己分析をした結果)自分を悲観的には見ないでほしいです。自分自身と真剣に向き合ってくれる仲間を大切にしてほしいです。その中でしか見えてこない、自分を相手の中に見ることが大事だと思っています。

みなさんのお話を聞いて

サークル活動そのものももちろんですが、活動の中でできた仲間や尊敬できる方との出会いも、今に大きな影響を与えているということがとても印象的でした。

大学生時代の数年間の活動ですが、真剣に考え行動し、仲間と語り合った日々は、社会人になっても思い出としてだけではなく、身体にしみついた癖となり、日々成長を続ける糧になっているんだと気付かされた会でした。現在、サークル活動に励んでいる大学生にとっても、先輩方の声を聞くことで、今の活動を振り返ったり、今後のことを考える良い機会となっていたら嬉しいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?