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読書記録:スプートニクの恋人 村上春樹

この小説のラストは、読み手によっていろんな解釈あるだろうなあ。

孤独で無機質な世界を、どうにか自分が生きていけるように、うまく思考する。実際に触れることができなくても、信じられる温かさを、心のどこかにつくる。救われるように。
わたしは、そんなラストなのかなあ、と思った。


村上春樹さんの小説を読んでいる間って、不思議な感覚になる。大げさに言うと、自分の意識がいまどこに属しているのか分からなくなるような。

物語にのめり込む、というのとは少し違う(のめり込むには不思議なことが起こりすぎていて、それを受け入れるのに時間がかかる)のだけど、わたしは確かにギリシャに居て、素朴で心地よい風を感じるし、そっと差し出された終わりの見えない孤独に、体の中心がずしりと重くなる。

と同時に、村上さんの文章に感嘆しているわたしもいる。感情の温度が伝わるような喩えに、思わず溜息が出る。物語の中とは別の、客観的なところにいるわたし。

そしてわたし側の現実世界では、慢性的に孤独と平等について思考を巡らせている。お店でペリエを見つけて、頼んでみる。

ずっと、村上さんの世界の中にいるみたい。


こういう感覚が好きで、また、読みたくなる。

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