IZUMI

30代の働くウーマンです。海外旅行と読書とコーヒーがすきです。

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最近の記事

読書記録:観光 ラッタウット・ラープチャルーンサップ

読んでいるあいだずっと、不思議な感覚がしていた。 哀しいとか切ないとか悔しいとか、思うのだけど、それらは登場人物たちが抱くものと同じではないような気がした。わたしの感情はわたしのものでしかなく、“共感”とも“感情移入”とも違うものだった。わたしが入り込むことのできない世界で、彼らのストーリーは彼らのものとして展開していった。 読み進めていくうちに、気づいた。 この本の登場人物たちは、文字通り“わたしが入り込むことのできない世界”=タイに住む人たちだからかもしれない。 徴

    • クウェー川鉄橋へ列車旅ー当たり前なんてないよねとつくづく思う、3日目

      早朝のまだ暗い中、Grabのバイクに乗って最寄りのMRT駅へ向かう。 通りには結構人がいた。彼らから発せられる空気感は、明らかに昨晩からずっとそこにいる者のそれだった。中学生くらいの子供の集団もいて、数人が殴り合い取っ組み合いになっていた。日本で言うヤンキーか?それとも、良い子はうちに帰る文化ではないのか?何はともあれバイクで良かった…。 MRTでBang Khun non駅まで行き、そこからトンブリー駅まで歩いた。もう空は薄明るくなっていた。ギラギラ都会は急に終わり、くた

      • USJもいつかアユタヤくらいBIGな遺跡になるのではと愚考した2日目

        デラックスベットの端っこで目が覚めた。なんてもったいない。 バンコク旅行2日目の始まり。 この日は日本語ガイド付きツアーを申し込んでいた。丸一日ギュギュっと効率主義ツアー。つまりなにも考えずただ楽しんでいればいい楽ちんな日。 朝6時台、高速道路の反対車線はすでに大渋滞だ。ガイドさん曰く、電車の通っていない郊外からの通勤には車が必須。みんな渋滞を見こして家を出るので朝は早く、朝食は屋台かどっかで買って車中で食べるのだそうだ。ふむ…それって根本解決にはなってないけど、彼らがそ

        • ギラギラしたバンコクにびびり、強い女であろうと決めた1日目

          バンコクって、こーんなに都会なんだ… スワンナプームから市内のホテルへ移動中、窓から外を眺めていて驚いた。ビル、ビル、ビル、どこまでもビルが続く。しかも、倒れやしないかと心配になるほど長い。高いというより、長いのほうがぴったりくる。 それに加えて、車の多いこと。道路を車が埋め尽くしている。車間距離をこれでもかと詰めながら、ちまちま進んでいく。”あおり運転”って言葉、ここの人たちには通じなさそうだ。 高速を降りて地道になると、アジアっぽい屋台やナイトマーケット風の店がぽつぽつ

        読書記録:観光 ラッタウット・ラープチャルーンサップ

        • クウェー川鉄橋へ列車旅ー当たり前なんてないよねとつくづく思う、3日目

        • USJもいつかアユタヤくらいBIGな遺跡になるのではと愚考した2日目

        • ギラギラしたバンコクにびびり、強い女であろうと決めた1日目

          読書感想文:なんくるない よしもとばなな

          沖縄旅行のお供に読み始めたから、タイムリーに沖縄パワーに共感した。確かにあの地には、いろいろを受け入れてくれる寛大さがあるような気がした。夢とか憧れとか、もしくは何かからはみ出したものとかも。沖縄には移住者が多いが、みなそういうパワーに引っ張られて来たのだろうか?わたしもあの寛大な空気の中で、すごく自分でいられた。武器も鎧もいらなかった。 最近、嫌なものばかりを目や耳が拾うようになってしまった。それには嫌な感情もついてくる。そしてそんな自分こそ嫌になる。もう全てをバッサリ切

          読書感想文:なんくるない よしもとばなな

          読書記録:旅の断片 若菜晃子

          旅先を決めるときって、ここに行きたいだとか、あれがしたいだとか、だいたいにおいてメインとなるものがある。でも行ってみたら、それとはまた別のところで不意に感動する景色に出会ったり、人の優しさに触れたり、はたまたトラブルが起こったり、旅のハイライトは意外とメインにしていたものと違った、ということが往々にしてある。 この本には、著者にとってのそういう”断片”たちがいっぱい集まっていた。華やかさはないけれど、すっと心に沁みるような景色。人々との心温まるやりとり。注意しておかないと通り

          読書記録:旅の断片 若菜晃子

          映画感想文:君たちはどう生きるか

          ※ネタバレあります。 ふと目を落としたら、自分の手が見えた。なんにもできなさそうな、頼りない手だった。映画に戻ると、マキトが、“弱虫!”と言われていた。自分に向けられているようで、悔しくて情けなくて痛かった。でもそのときはまだ、マキトのその弱さがなんなのか分かっていなかった。 勇敢で強いと思っていたマキトは、結局わたしと同じような弱さを持っていた。 社会人になり世界が広くなって、いろんな人がいることを知った。できることも増えた。経済のことはほんの少ししか勉強していないけ

          映画感想文:君たちはどう生きるか

          読書記録:号泣する準備はできていた 江國香織

          過去も未来もずっとひとつづきになっている人生だけど、どの点にいても”いま”がすべてで、わたしたちは今という点をひとつずつ生きるしかない。 過去や未来に翻弄されながら、その点を一生懸命に生きる人たちを、この本は描いている。その一挙一動、一語一句にすべてに重大な意味を含んでいるのではないかと思うほど、すごく丁寧に。 誰もかれも、孤独だなと思った。 いま確実に愛し合っている人がいても、保証され得ないふたりの未来を考えると不安に襲われ、結婚していても、どちらかの心の中に違う人が居れ

          読書記録:号泣する準備はできていた 江國香織

          歌っていいですね aikoのライブで思ったこと②

          音楽や匂い、あるいは視覚的に捉えられるなにかによって、どこかにしまいこまれていた記憶の断片が、ふわっと出てくることがある。それにリンクした人や出来事やそのときの気持ちが現れる。 aikoの曲も、そのトリガーのひとつ。 例えば、『蝶々結び』。小学生のときに中古で買ってもらったシングルのカバーが割れていたことや、それでも良いと思えるほどこの曲が好きだったことや、カップリング『帽子と水着と水平線』をすごく気に入ってタイトル曲よりたくさん聴いたことや。 なんでもないことなのだけど

          歌っていいですね aikoのライブで思ったこと②

          自分らしくいるという魅力 aikoのライブで思ったこと①

          先日、aikoのライブに行った。 わたしがaikoを知ってから、かれこれ20年近く経つ。その間、aikoはずうっと変わらず、aikoのまんまだ。それってすごいことじゃないか。単なる見た目のはなしではなく、魅力のはなしである。 “年相応”というなんとも窮屈な考え方に、わたしはいつからか囚われていた。何歳だから、何歳なのに、などと、何かにつけてそんな言葉がつきまとう。煩わしいが、世の中はそういうものであり、それに順応するべきなのだろう、と抗いもせず思い込んでいた。 しかし、

          自分らしくいるという魅力 aikoのライブで思ったこと①

          読書記録:いつも旅の中 角田光代

          旅のお供に、と読み始めた。 角田光代さんの小説って、全体を通して、ずん、と重い印象がある。だから、角田さんフィルターを通して見る旅も、そういう、ずん、としたものが出てるんじゃないかと思っていた。 しかし。角田さんが、こーんなにおおっぴらでおもしろいだなんて!時折り、繊細だと感じるところもあり、小説の雰囲気と重ねて、うむうむと自分を納得させながら読んでいたが、でも、わたしの中の角田さんの印象は全く変わってしまった。もちろん、良い方へ。 なんといってもまず、旅のスタイルに憧

          読書記録:いつも旅の中 角田光代

          語り合う相手のいない、温かい思い出

          この間、偶然、昔付き合っていた彼を見かけた。すれ違いざまにチラッと目が合って、思考が一瞬停止して、数秒後、あ、と思ったのだが、お互い歩みを止めることはなかった。 別れてから8年間、ずーっと、心の一部に、触れたくない嫌な思い出として残っていた。もう、好きという感情は全くないし、彼が好きだったバンドの曲はとうに聞けるようになったし、違う人を好きにもなった。ただただ、当時の嫌な感情が居座っていて、何かの拍子にそれが前に出てくると、どうしようもなく憎く苦しくなったりするのだ。 で

          語り合う相手のいない、温かい思い出

          楽しみが現実に変わるとき

          ロサンゼルス旅行、出発の日。 関西国際空港。 わたしの中では、海外旅行のゲートといえばここだ。だだっ広いフロアに整列する、無機質なチェックインカウンター。親切そうかつ事務的スマイルで、ピシッと仕事をこなしていくグランドスタッフの方々。出国する人々は、長い手続きに辟易しているのか、今からのフライトを懸念しているのか、はたまた元気を温存しているのか、大半が気怠そう(にわたしには見える)な表情を浮かべている。 そこには、とても現実的な空気が流れている。 なのにわたしは、ここに来

          楽しみが現実に変わるとき

          読書記録:金閣寺 三島由紀夫

          純文学に触れようと思った。 そうしたら、最初の1ページで、国語の教科書を思い出して、参ってしまった。 国語、嫌いだったなあ。 バツがたくさんついたテストが返ってくるたび、不服でならなかった。でも今思い返せば、わたしは答えを探すために文字を追っていた。作者の気持ちを気持ちで捉えず、機械的にマスに文字を当てはめていた。それはバツでも仕方ないよなあ、、とは思いつつ、やはり国語の授業に対する不服感は拭いきれない。作者の気持ちを答えるのに、作者でない誰かにバツをつけられるって、なんな

          読書記録:金閣寺 三島由紀夫

          読書記録:いのちは のちの いのちへ ー新しい医療のかたちー 稲葉俊郎

          この本とは、運命的な出合いだったな、と思っている。 そのとき最寄りの本屋さんで、”アノニマ・スタジオ 20周年フェア”をしており、そのコーナーの本棚には、デザイン展如く、素敵な装丁の本が並んでいた。その光景に心が躍ったし、これも出合いだ、と思い、一番にビビッときた本を手にとった。 『いのちは のちの いのちへ -新しい医療のかたち-』 驚いた。今のわたしが読むべき本なのでは・・ 病院で働いていると、現在の医療(病院)の在り方について、違和感を感じる。 対症療法じゃ、根

          読書記録:いのちは のちの いのちへ ー新しい医療のかたちー 稲葉俊郎

          読書記録:老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ

          老人が帰り着いたときの少年の涙につられて、わたしも泣いた。わたしは、ものすごく悔しかったから、泣いた。 他人や環境のせいにせず、厳しく自分を律する心。 海とそれを取り巻く環境を愛し、敵とも言える魚を敬愛し、平等に讃える人柄。 生死をかけた瞬間にも、諦めず、自己を信じて立ち向かおうとする、強靭な精神。 こんなにも、こんなにも、強く真っ直ぐに生きているのに。 なぜ。なぜ報われない? それが、悔しかった。 少年の涙には、どんな思いが含まれていたのだろう。 解説にあったが、

          読書記録:老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ