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読書記録:老人と海 アーネスト・ヘミングウェイ


老人が帰り着いたときの少年の涙につられて、わたしも泣いた。わたしは、ものすごく悔しかったから、泣いた。


他人や環境のせいにせず、厳しく自分を律する心。
海とそれを取り巻く環境を愛し、敵とも言える魚を敬愛し、平等に讃える人柄。
生死をかけた瞬間にも、諦めず、自己を信じて立ち向かおうとする、強靭な精神。

こんなにも、こんなにも、強く真っ直ぐに生きているのに。
なぜ。なぜ報われない?

それが、悔しかった。

少年の涙には、どんな思いが含まれていたのだろう。




解説にあったが、ヘミングウェイは、自身が海釣りの虜であったという。ふむ、だからこその、この精緻な描写なのか。

読みながら、夢枕獏の『神々の山嶺』を思い出した。似ている、と。
自身が経験したからこそ知りうるモノを描いているから、その細部に至るまでの情報が、生々しく迫力をもってこちらに届くのだ。

肝心なのは、自分がものを知り尽くした先に何が見えてくるか。作家は過分なほどに対象を熟知しているべきなのです。(p.147)

ヘミングウェイ手記より

自分の仕事に対して、こんなストイックでかっこいいポリシーをもっている、あるいは見出しているなんて。すてきだな。

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