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映画『異端の鳥』美しいものだけを見ていては、人間の本当の姿を知ることができない


世界は悪意に満ちている

社会に出たとき、私はそう思った。

子供のころは、いい人間になりなさい。
と言われて育っていく。
人にやさしくして嘘をつかず、盗まず、恨まず、ひがまず、正しく生きろと。

だから私はそうしてきた。常に人に優しく正しく生きてきた。

しかし、実際の大人たちの世界は

人にツラくあたり、嘘をつき、盗んで、恨んで、ひがんで生きている人ばかりじゃないか。

子ども時代にドップリと浸かってきた優しい世界はファンタジーだったのかと知り、ショックを受けた。

この時に感じた衝撃には、長年悩まされた。
人の悪意に振り回され、精神的にキツイ毎日を送ってきた。

最近になってようやく、子供時代に教わってきたことは建前だと割り切ることができた。

世界は悪意に満ちているという事実を受け入れることができたのだ。

子ども時代に、ほんとうのことを教えてくれていればよかったのにと思う。真実を知っていれば、ここまで悩むことはなかったかもしれない。

美しいものだけを見ていては、真実を知ることはできない。
人間には善と悪があり、どんなに善の人でも悪を持っている。

悪は世の中だけではなくて、自分の中にも存在する。

いい人間だと思ってきた自分の中にも悪の部分がある。
直視したくなくても、悪の部分に目を背けたり、隠したりして生きていくのでは、偽りの人生を送ることになる。

悪の部分を知って初めて、人間の真の部分を知ることができる。

映画『異端の鳥』は、人間の正体を描いている。
白黒の美しい映像で描き出すのは人間の悪意だ。
悪意の渦に巻き込まれた少年の姿に目をそむけたくなるかもしれない。

だけど、悪の姿を知らなければ、人間の正体を知ることができないのだ。

だから、私は最後まで見た。

悪を知ったからこそ、善の部分を増やしたいと心から思うのだ。


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