見出し画像

お化粧しましょ

一人暮らしをしていると、休みの日は1日中誰にも会わない日が多い。
部屋にいるので化粧もしない。
用事は夕方コンビニへ行くくらい。
UVクリーム塗って眉毛書いて、マスクを付けてちょっと出かける。
そんな私が毎日ずぅっと休みだったら…と思うとちと怖い。

認知症グループホームに入居している人は、毎日休み。
「世間じゃ今日から3連休、わたしゃ連休終わって、また連休。」

別にどこも行かないから

「化粧道具あるけど使う?」
「え?別にどっこも行かないから、お化粧しなくていいわ。」
そうそう、私もそうやけど。
「もしかしたら、誰か来るかもしれへんでぇ。」
「来たって家族でしょ。」

朝起きて洗顔、歯磨き、うがいってのは習慣になってる人もある。
部屋で化粧までしてからリビングに来る人は、ほぼいない。

お金にならない習慣

認知症グループホームの1日の予定の中に「口腔ケア」は入っている。
でも「洗顔」「ひげそり」「化粧」などの予定は入っていない。

実は、口腔ケアには加算手当(口腔衛生管理体制加算)がついていて、実施することで各自治体から事業所(施設)にお金が入る。
要するに、入居している人が歯磨きやうがいをすることはお金になる。
他の習慣はお金にならない。

赤系のアイシャドー

ある朝、早く起きてしまう人に洗顔後に化粧道具をもっていってみた。
「お化粧する?」
「どうするの?」
「これがファンデーション。
スポンジにつけて、顔にポンポンってするねん。」
「こうぉ?」
「そうそう。
これ、アイシャドー。
今日の洋服に合わせて赤やブラウン系のとかどうお?」
といって化粧する。

最後に口紅を塗って、鏡を見る。
「えぇなぁ。」
「嬉しい~!」

で、他の職員が出勤してくると。
「○○さんの目元赤いやん。
どうしたん?腫れてる?」

あの、化粧したんですけど…。

化粧する時間が楽しい

特に用事はないけれど。
朝に1人が化粧をしていると、他の女性が「お化粧した?」と注目する。
「やってみる?」と聞くと、だいたい「えぇわ。」と断られる。
でも、他の職員がその一人を褒めだすと「やってみようかなぁ。」となる。

で、リビングの机の上に化粧道具と鏡を置く。
「口紅、何色がいいかなぁ。」
「ピンクがいいわよ?」
「あんたも化粧しぃ。」
と入居している人同士でわいわいにぎやか。

男性も、お化粧して華やかになった女性に囲まれて、自然と笑顔になる。

今から皆でどっか行きたいなぁ、と思ったりする。



#未来のためにできること