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自らの手と足で歩む唄

「沖縄DEナイト」終わりました!

4月はニライカナイ(弁天太朗)、喜納昌吉、cocco、どんとという比較的に自分が歌ってきた曲をチョイスしたので、今回はもっとディープ沖縄に挑戦しようと選んだのはこんな歌。

(セットリスト)
①波(どんと)
②童神(古謝美佐子)
③黄金の花(ネーネーズ)
④ミーファイユー(BEGIN)
⑤ありがとうありがとう(ニライカナイ)

2023年8月20日 沖縄DEナイト 吉田峰子セットリスト

最初はatelier23の藍染Tシャツに白いスカートを着ようと思っていたのだけど、前日になって「いや、沖縄DEナイトはそんなに何度も出れるものではないし、今回の選曲や今の私にはコレ以上の衣装はない!」と、みるくゆがふを歌うカニTを選んだ。

奄美大島在住のあおきさとみさん作 
奄美大島の植物と虹とカニ

私はどうしても「あの世」チックな歌を好んで歌う嗜好があるし、この日の選曲はBEGIN以外はあの世感強め。

そして西表島の道路で見たカニの死骸を見た際、車に轢かれて死んでるのにピースして陽気(ただそんな足と爪なだけだが)に見えたことに何だか感動して、「轢かれて死んでもピースしてるカニみたいな人になりたい」と思ったのを思い出した。

そんな想いを込めて歌った当日。

写真:高架57マスター

たくさん練習した割には何故かDmのコードミスが多かったのは悔しかったけど、それでも心を込めて想いを乗せて歌うことはできたと思う! それでも少しモヤモヤすることがあった。私は真面目すぎるんだろうか? と思って少ししょんぼりした。

そんな帰り道に思い出した言葉がある。はじめとおおじで活躍されているジャズドラマーの木村純士さんが以前SNSの投稿で音楽仲間から聞いて感銘を受けたトルストイの言葉。画家のマシマ タケシさんが教えてくれた石垣島で安里勇さんから伺った言葉。その言葉は私の目指すところだったのでノートに書き留めていた。それをここに記してみます。

「芸術とは一人の人が意識的に何か外に見えるしるしを使って自分の味わった気持ちを他の人に伝えて他の人がその気持ちに感染してそれを感じる様になるという人間の働きだ。

芸術によって同じ時代の人達の味わった気持ちも、数千年前に他の人達が通って来た気持ちも伝わる様になる。

芸術は今生きて居る私達にあらゆる人の気持ちを味わえる様にする。そこに芸術の務めがある。」

レフ・トルストイ 「芸術とは何か」より

唄はただ唄うのではなく、歴史的背景やその唄が作られた背景を、自らの手と足で歩まないと本当の唄になりません

石垣島の唄者 安里勇さんの言葉

私のギターや歌の技術では、まだまだこの域に達せられてない気はするけど、私は自分で好きな歌をうたいたい!と思った時からこれを目指していた。

どんとの「おめでとう」を聴いて何故か感涙してしまった。よくわからないけど「生きててよかった!」「生まれてきてよかった!」と感じた感動をもう一度味わいたいし、この歌を作ったどんとが見ていた景色を見たいと思って歌い始めた。大好きな歌を歌う時は、この歌に込められた背景や心情ごと味わって表現したいと歌う。その域に到達できるように日々歌うしかないんだなぁ。

ライブを終えて、足はまだ完治してないし、遠征や階段の登り降りはまだキツくてできないけど、徐々に歌う機会を自分から作っていこうと思った。

ライブの告知してもお客さんが呼べなくて申し訳ないし恥ずかしい気持ちと、なかなか上達せずに思ったようにできない悔しさ。変に耳が肥えてる上に音楽の好き嫌いが激しいから合わない人の歌や音楽を聴いてると辛くなったりもするし、仲良く交流するというのが苦手なので躊躇していたけど、そこも踏まえて、そんな私のままで勇気を出していこう。無理してやるから疲れるのであって、無理のない私を曝け出して歌っていこう。打ちのめされても歌ってみよう。本当に好きならやれるはず。やめてしまうなら、それほど好きじゃないだけだ。

自分が好きなもの、自分が大切にしている歌や音楽を貶されたりバカにされるのが怖かった。すぐに引っ込みたくなってた。褒めてくれるような人ばかりでなくても、思いもしなかったことや批判を受けても、「これが私の表現なんだ」と顔を上げて自分の世界の扉を開いて、外に向けて歌ってみよう。

子どもの頃は道端で大声で歌って、どんな場所でも私が歌えばそこがステージだった。誰も観てなくても誰も聴いてなくても喜んでずっと歌ってた。いつの間に隠していたそんな私ともう一度手を組もう。

そう思えた機会を与えてくださったサトコリン、高架57、出演者のunreasonableさん、ナカッジーさん、お客様、ありがとうございました。

沖縄DEナイト主催のサトコリン

最後にこの「沖縄DEナイト」に出演するにあたり、読み返した岩波ジュニア新書「沖縄のいまガイドブック」という本があります。照屋林賢さんと名嘉睦稔さんが対談で語っていた「沖縄ポップスと島唄」「伝統文化のリズム」の項から、胸に刻みたいと思った宝物みたいな言葉を抜粋して終わります。

音楽とは、自分たちのものを自己追求する、表現する。

自発的に本当に自分が震える音楽とは何か「表現したかったことは何か?」が大事。

自分が表現したかったのは、自分のなかだけの問題。マイナーであることを恐れることは何もない。卑下することも何もない。自分の奥を見つめる作業の中で、そのことを自分の哲学として獲得した人は行動も違っていく。

伝統とは、人間たちがそれに意味を見出したからにはそれを貫徹する為にある程度意固地なまでやらなければならない部分がある。血肉になる。歌は生き物。

楽しめなくなったら歌は死んでいると同じ。自分の歌を自分で直してもいい。自分の歌い方で歌う。ひとつの基本型があって、それにその人の気分や表現方法で歌う。何度歌っても、完全にこなし切ったと感じることはない。

岩波ジュニア新書254「沖縄のいまガイドブック」

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