Week 1-6 マインドフルネスと自己統制
<マインドフルネスと前頭前野>
マインドフルネスは脳と身体に良い効果をもたらすということが研究により明らかになっています。
研究者が注目している領域の一つは前頭前野と呼ばれるところです。頭の前部分に手を当てて、額まで下ろすまでの範囲が前頭前野にあたります。特に、この中でも「DLPFC(背外側前頭前野:Dorsolateral prefrontal cortex)」は感情のコントロールや集中力の他、欲求や記憶力にも関係していることが知られています。上の図で緑色に塗られた部分が「DLPFC(背外側前頭前野)」を示しています。
前頭前野は特にエグゼクティブ機能(実行機能)を受け持つ脳の領域です。目標を実行するための行動を司る一連の脳の働きを行うため、こう呼ばれています。
例えば、計画する、統括する、戦略的な計画を立てる、アテンション(注意)を向ける、細部を記憶するなどの機能は、前頭前野が働くことにより可能となるのです
このような機能を実行する時、前頭前野は脳内の様々な領域で起こる活動を統合する中心的な役割を果たしているのです。
「Mindful Brain」(ダン・シーゲル著)の中で、シーゲル博士は、「マインドフルネスのプラクティスはこのエグゼキュティブ機能に働きかけるプラクティスである。」と記しています。マインドフルネスのプラクティスがエグゼキュティブ機能に働きかけることによりもたらされる人々の幸福感の向上に関して、次の様に理論化しています。
身体の統制:脳神経内のブレーキとアクセルがバランス良く働いている状態。統制された状態では、適した緊張感とエネルギーレベルを保つことができる。
自己認識:自分が自分であるという認識。今ここにいるというアウェアネス(現在)と、これまでの人生(過去)、将来の像(未来)が一線上にあり、首尾一貫したライフストーリーが描けた状態。社会との前向きな関わりを創造するためのカギ。
感情統制:感情が程よく活性化した状態。人生に意味と活力が生み出される。感情統制が壊れた時に混乱や動揺に陥る。感情が統制されていない時に落ち込みや鬱に陥り、人生に意味が見出せないという感覚に陥る。
恐怖感の調節:自分自身に落ち着きをもたらし、労わりを向ける能力。自分自身の内側にある恐れを除く能力。
研究発表された「メタ分析」で、21人の瞑想者の脳機能を可視化したデータから次のような結果がまとめられました。この研究によって、「瞑想によって脳内の構造は変化するか」という問いに答えたといえる結果が出されました。それによると、「瞑想者の脳は八つの領域で明らかに変化している。メタ認知、外受容性及び内受容性の身体アウェアネス、記憶の統合と再統合、自己と感情の統制、左右脳間のコミュニケーション」今後の研究も必要ですが、信頼のおける発見といわれています。
<参照>
Siegel, Daniel J. (2007). The Mindful Brain. New York: W.W. Norton & Company. [Link]
<マインドフルネスと自己統制>
下の図は、マインドフルネスがどう機能するかを提案したモデルで、マインドフルネスが自己統制にどう働くかを示したものです。
注意力(アテンション)のコントロール
感情の統制
自分への気づきに基づく自己認識
の3つの要素が自己統制に作用するとされています。
マインドフルネスの実践は、自己統制を高めていくための修養とも言えるのです。
プラクティス:
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