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(連載小説)パーク〜小さなお話1

短編小説のような小さなお話〜不定期ですが少しずつ書きはじめようかな。

始まりは突然、空高くリズミカルに舞うボールが
白と夕闇のコントラストで私の心占めた。
持ち主と白いボール、平凡な私が何思う。
解らぬままに魅了された日々。

それは私のいつもの帰り道。
仕事を終えると、もうくたくたで足取りなんかはとぼとぼと、道すがらの小さな公園にちらりと目をやるのが日課。

立ち止まるでも無く立ち寄る訳でも無いけれど、道すがら少し並んで歩くような距離が程良い小さな公園は、平凡な帰り道のちょっとした目のやり場。誰も居ない公園は静寂をまとい、とてもハンサムな佇まい。

夕方の公園は季節変われど、1番好きな落ち着く顔をしているんだ。

昼間の様子はごく普通。
子供らが滑り台、ブランコめいめいの好きな遊具で遊び、付き添いの親は傍らのベンチに座り、たまに子らに声を掛け手洗いを促すために自ら水道の蛇口をひねる。

子供に任せるとほら、水なんか全開で出して手を洗うどころか水遊びが始まって服が水浸しになるからね、楽しいけど困るよね。
親が注意深く蛇口をひねる様子、それを待つ子ら、細く垂れる蛇口の水、糸のよう。

普通の公園の賑わいを見せた後、皆が家に帰ったのを確認した小さな公園は、静かに1日の終わりを愉しむ。誰も居ない静寂もまた必要な時間と言わんばかりの落ち着き払った小さな公園。

帰り道の私は、その人っ子一人居ない公園に今日も1日お疲れ様とちらり目配せするように歩く。
そうしてようやく閉じる1日。

そんなある日の帰り道。
小さな公園の夕暮れ時に、ひとり見慣れぬ青年が背負っていたスポーツブランドのリュックを地面に下ろし、おもむろに手のひらサイズの白いボールをいくつか鷲掴んだ。

あまりにも無造作ででも儀式のように何かが始まる。ふたつみっつと白いボール、お手玉のように交互に投げては繰り返すそれを1度はテレビなんかで見た亊のあるジャグリングだと、直ぐに認識した。大道芸の登竜門みたいな、あの舞うボール軽やかなジャグリング。

学生さんかな、若いな。
ジャグリングの練習するには広い場所と静かな、そうね、盲点だったけど夕暮れ時の公園は案外練習するには適してるんだ。

こんばんわ。先客がいる小さな公園に私は通りすがりに挨拶し、白いボールの軌道がとても綺麗で目で追う私はいつもより遅い歩みになったかと思ったら、初めてくらいそこに立ち止まるという事をした。

私が公園を正面から捉えた日、小さな公園のいつもと違う新しい顔を見た。

白いボールと夕暮れ時の青紫から茜色へと徐々に色付くコントラストに、激しく目を奪われた。

2に続く。



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