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初代プレイステーションアーカイブにテンションが上がらない理由:CDの盤面が黒くない

プレイステーション有料会員「PSplus」のサービス追加が予告された。

オンラインサービスに会費を払って、かわりに毎月無料でゲームが配信される。
追加料金でより多くのソフトと、歴代プレイステーションのソフトが遊べるようになる。それがなかなか盛り上がってないのだ。
ニンテンドースイッチでは、ファミコンソフト2.3本でも軽くお祭り感になるのに。
この感じは「復刻ハードブーム」のときにも感じた。

復刻ハードブーム

昔のゲーム機のミニチュアを作って、その中に代表作を詰め込んだ「復刻ハード」ブーム。ファミコンミニが大いに話題になって、メガドライブとスーパーファミコンは予定されていたが未発売に終わったタイトルを「このため」に収録するなど大いに盛り上がったのに、「プレイステーションクラシック」だけが在庫潤沢であった。

中身は絶対にすごいはず。スーファミをやってた子供が次に憧れたやつなのに。
「ファイナルファンタジー7」「メタルギアソリッド」「バイオハザード」「グランツーリスモ」
すでにリメイクや続編でじゅうぶんだったり、ドット絵末期は今見るとすごいのに、ポリゴンキャラを今の鮮明なテレビで見ると、思い出の中の初恋の人の寝起き顔を見てしまったような気になるとか、ゲーム1本5800円の中に1500円で販売した「シンプルシリーズ」の感覚が今だとわからないとか。理由はいくつか浮かぶ。

プレステの思い出を聞く企画で、思い出のシーンといて語られるのが「バイオハザードの最初のゾンビを見たとき」「FF7の終盤のあのシーン」だ。
この衝撃は、最初の1回しか体感できない。音も動画もないゲーム雑誌から想像を膨らませた人だけが味わった、特権。

マリオやテトリスの、いつでも何度でも変わらない味とは違う。プレイステーションってその時代にしか味わえないものを作ってきてるんじゃないか。 

フト単体ではなくて、90年代後半のゲーム世界を丸ごとひっくるめた「現象」がプレイステーション

音楽に合わせてボタンを押す「パラッパラッパー」は、他のゲームが複雑でシリアスになっていく中で投下されたから味わえた。こんな変化球が「音ゲー」ってひとつのジャンルに定着するとは思わなかった。

そこから進化した?「ストールンソング」という、ピック型コントローラをテニスラケットとかにべんべん叩きつけて布袋寅泰のロック魂を呼び起こすゲームが出た。

「ビートマニア」「ダンスダンスレボリューション」がゲーセンでギャラリーを集める脇でこういう実験作も出る。今のインディーズシーン並みのカオスなエネルギーの溜まった時代。

子供には縁のなかったゴルフをわかりやすくしてミリオンセラーまでいった「みんなのGOLF」。
CMを見たとき「なんちゅうダサいタイトルだ。野球とサッカー以外のスポーツゲームは売れないのに、他のゲームなくなったんか」と心配になった。

バーチャファイター、鉄拳、デッドオアアライブ。
若者文化の最先端、3D対戦格闘ゲームブームに歴史シミュレーションゲームのコーエーが反応した!
「三国無双」は初見の情報で苦笑したのを謝りたくなる完成度!

見たこともないものが凄まじい宣伝量で迫ってくる。
ハタチ越えて持ってると恥ずかしい「オモチャ」だったゲームに、何かが起きていることを一般層も感じていた。

リアルタイム世代も忘れてそうな、プレステのいいところ

スーファミを持ってた自分にとって、プレイステーションの何が羨ましかったって、まずRPGのセーブデータが消えないことだ!!
声優さんがセリフをしゃべるとか、実写ムービーが挿入されるとか、そんなんじゃない。お母さんの掃除機が引っかかっても衝撃でデータが消えて最初からにならない。これが次世代機の実力である。

コントローラーを初めて持ったとき、グリップがついてて手にぴたっと来る感じがすごい。
まさか20年後に攻撃ボタンになるとは思えない、用途が謎のR2.L2ボタンがなんかすごい。
(セガサターンのコントローラは正面にボタン6つで、慣れない友人はどれが決定だよ、って顔をしていた)

見たこともない黒いディスクで、見たことのないコントローラを握り、見たことのない3DCGを動かす。
プレイステーション2と3では、DVDとブルーレイをそれぞれ使ってみたかった。
最初のiPhoneのように、「この機能を使いたい」というよりは、それを手にして、人類の技術はここまで来てるんだって感動したい。そんな人が多い気もしてきた。

PSPLUSの新サービスが世界を驚かせてないのは、XBOXゲームパスに対抗するにはこれやるしかないよな、って予想内だったからだけど、今プレイステーション5をわざわざ抽選に応募して買った人は、俺たちが求めるのはコスパじゃねーんだ!コントローラにスピーカーとすごい振動機能つけてびびらせてほしいんだ!って思う気質があるはず(であってほしい)。

歴代プレイステーションのソフトも遊べるようになるサービスよりも、本当に期待しているのは100本の思い出より1本の未来というか、ここでしか味わえないフレッシュなゲーム体験。
…だけど、20年以上ゲームをやって映像的に何を見ても驚かなくなると、そんな凄いゲームが世に出て、それが自分にとっていいタイミングで「刺さる」なんて、どれほどの確率だろうって寂しくなる。
それでも、映画好きは文句をいいつつ映画をやめないし、本好きは本を諦めないし、旅行好きは一回や二回のトラブルで引きこもらない。ゲーム好きはいくつになっても、新しいものには興味が抑えきれない。

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読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。