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【読書】タイトルの由来が驚きの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

聞いたことはあるけど内容は知らない話を読むシリーズ。(以前には蠅の王やフランケンシュタインなど読みました)

なんとなく、「郵便配達員が旦那のいない時間に来て奥さんと不倫する話」かと思っていた。
なぜ不倫に関する話なのかは知っていたのか謎でそれは当たってたんだけど、郵便配達員ではなかった。

ストーリー序盤の男女がくっつくまでが、島耕作ぐらいのテンポ感ですすむ。
犯罪歴があってろくでなしの男と、なんとなく人生に行き詰まりを感じていた女が、共謀して今の旦那を殺して二人で新しい生活を始めようとするのだ。

しかし、妻が旦那の頭を殴って逃走する手助けをするところで、新しい男が警察官と会う。そして逃走に使う「はしご」を見られてしまう。

その日だけ立てかけていたはしごで、偶然ノラ猫が遊んでいるところが警官の視界に入ってしまう。
「見てくれ、猫がはしごを登ってるぞ!」
なんでこんな日に限って…!
ネコがその日だけ立てたハシゴを登りだして、その瞬間を警官に見られてしまう。

あまりにも印象に残る場面になってしまった。
そこで主人公は急きょ犯罪を中断する。
そのまま計画を実行したら、確実に警官が現場検証に来て、「猫とハシゴ」があったことを思い出す。ちょっとした違和感が証言の矛盾を呼び、なにもかも終わる。
女のほうは旦那さんの頭に一撃くらわせていたんだけど、とどめをささず、元旦那さんは「記憶があやふやだけど、頭に何か食らって死にかけた気がするが、妻のはずはない」と片づけられ、実行した男女は口裏合わせで奇跡的に無事。
しかし二人は懲りずに、ここでやめとけば良かったのにってところで二度目の犯行を計画する…。

あとがきで書かれているが、作品とタイトルは関係ない。奥田民生のマシマロという曲と同じ。本文は関係ない。

タイトルについて様々な憶測があったが、作者が友人のシナリオライターと会話したとき、編集者から来る郵便がつらいという話で出た言葉。
その響きが気に入って関係ないのにタイトルにしたそうだ。

そんなことがあるんだろうか。夏目漱石の「門」は遺作だからお弟子さんがとりあえずつけたとか、絵画にも実は勝手につけられた無関係なタイトルがいい感じにマッチしてしまう例があるけど。

作中で男女は二度の犯罪を計画して、厄介な連絡も来るから、タイトルと内容がうっすら繋がっているような気がして、直接的じゃない「粋」なタイトルに思える。
自分が読解力ないからタイトルと内容のつながりが理解できなかっただけかと思った。
最近、漫画家のペンネームですごく適当に思える名前を見るけど、タイトルが無関係でそれが効果を生んだなんて聞いたことがない。
音楽ならありそう。アルバムタイトルがよくわからないパターン。

関係ないけど完全に適当に名付けたわけではなくて、「その一文」以外にも文章は無限にあって、「それ」を選んだセンスで勝利したわけで、完全に適当なタイトルをつけたわけではない。そのセンスはどうやって磨くんだろう?


よく考えたら 奥田民生のマシマロは関係ないと触れていることで関係ある。
もしも藤井風とかマキシマム・ザ・ホルモンとかが新曲のタイトルに「君が代II」とか、ポポポボホボボボンとか、全然関係ないタイトルをつけても、優れた作り手はファンに色々想像させるので、聞く側が勝手にタイトルと内容をあれこれ想像して結びつけてしまうだろう。

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読書感想文

読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。