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【覚書】兄妹とは似て非なるもの

当然のことといえば、当然の話だが。
我が息子と娘は性格が真逆で、同じ環境で同じように育てたつもりなのに、
不思議だなあと彼らが赤ん坊の頃から、夫と首を捻り合っている。

大人数の子どもたちの中に彼らを放り込んだら、
そう、彼らは同じ部類の人間で似ているところが沢山あり、
その面ではやはり兄弟で、同じ環境で育った者同士なのだが、
家族内で個々に見てみると、
兄妹でこんなにも違うのか」と面白くなる。

最近、お兄ちゃんと同じ中学に通いたいと塾に通っている娘。
その気持ちは尊重してあげたいし、親としても兄妹で同じ学校に通ってくれたら助かる。
親の私が言うのも何だが、お兄ちゃんは勉強ができる方で(まあ井の中の蛙、親の欲目もあるのだが)かなり期待して塾に通わせていた。
結果、それがお兄ちゃんを苦しめてしまったので、大いに反省し、
娘にはあまり過度な期待をしないように心がけている。
だが、娘。塾に通い始めたら、いや、通う前からも過度な期待をしない、
いや、できないということがひしひしと伝わる。

先日、彼女が解いた国語の問題の丸つけをしていたら、
こんな問題が出てきた。

次の単語の中から形容詞を4つ選びなさい。

娘の塾の宿題より

娘の答え。

「おいしい」
「涼しい」
「新しい」
「すずむし」

え?

ちょっと待て。
最後の答え、おかしくないか?
「(娘の名前)ちゃん!なんでこれ『すずむし』って書いてんの?!形容詞が何かわかってる!?」
慌てふためく私。
「え、だって塾で先生が『形容詞は最後、伸ばしたら”いいいい”ってなるやつ』て言うてたもん。『おいしいいいい』『すずしいいいい』『新しいいいい』
すずむしいいいいい』な?」

「な?」ちゃうやろがい!!!

「(娘の名前)ちゃん?形容詞が何かということを理解せんからそういうことになるねん。なんでこの中の選択肢で鈴虫を選ぶのさ。
(ちなみに選択肢は「食べ物」「おいしい」「楽しい」「運動会」「新しい」「秋」「涼しい」「すずむし」であった。)
すずむしはどう考えたって虫やろ?
形容詞っていうのは状態とか感情を表す言葉やろ?
『鈴虫い』って、どういう状態なん、言うてみい!」

「なははは〜」と笑って誤魔化す娘。
ああ…娘よ…。

お兄ちゃんはこういう珍回答には縁がなかった。
漢字ドリルの書き取りでの文章を作る問題で独創性溢れる文章を作っていたことぐらいだろうか。その時にハマているものが常に彼の文章作成のテーマとなる。
ホームズやコナンにハマっている時は、漢字ドリルが殺人で溢れていた。
物騒極まりない漢字ノートの完成である。

おっとりしているが、意外と真面目で小心者なところのある娘。
時間には娘の方がきっちりしている。
学校や塾の時間は、前倒し前倒しで用意し、毎朝時間通りに出ていく。
お兄ちゃんの方は、間に合えばいいんじゃね?的な感じでギリギリに行こうとするところが目立つ。毎朝、私に時間を指摘されるのはお兄ちゃんの方である。

物欲が激しいのは娘の方。
お兄ちゃんはあまり物欲がなく、ここ数年誕生日に欲しいものが見つからずに
悩んでいる。
最近、好きな漫画を買おう、と決心したらしく、ついに「呪術廻戦」全巻購入に踏み切った。古本なども合わせて、これまで貯めてきたお小遣いを投入しつつ、
買い揃えたお兄ちゃん。
これまで、お出かけの時は私がその都度、お昼代などを支給していた。
月に3回も4回も行って結構な出費であった。
それ以外には特に物欲もないのでお金を使う必要性もお小遣いの必要性も
感じていなかったため、お小遣いを私ていなかった我が家。
ただ、今回、「漫画を買いたい」という欲求が芽生え、
お小遣い(お年玉など)もたくさん使ってしまったため、
今後は「お小遣いが欲しい(月額制)」と言い出した。
「じゃあ、月〇〇円(ヒミツ)あげるから、漫画とか欲しいものに当てて。
みんなとのランチは月2回までお母さんが支給するけど、
それ以外は自分のお小遣いで行くなり我慢しよう」などと話しあっていた。
ところが、お兄ちゃんはこの「〇〇円」の金額に対して、
えぇぇぇー貰いすぎちゃうかなあ。どうしようかなあ」と金額に悩む様子。
漫画は欲しいものの、漫画を買う以外は物欲がなく、親の懐事情を心配している。
その横で、我々のやりとりを聞いていた娘がすかさず
私も欲しい!私もお小遣いが欲しい!」と割り込んでくる。
「え、別にいいけど。
じゃあ、毎日お手伝いをして月に400円でどう?」と言うと
娘は
「むり。500円!」と返してくる。
「いやいや、別に使うことないやん。欲しいものとかもすぐおねだりしてくるやん」と私と夫。
「いやや。お兄ちゃんがもらうんなら私も欲しい」
お兄ちゃんが貰いすぎかもしれん、と減額を申し出てくるのに対し、
娘は増額を主張。
おう…なんだこの差は。

そいえば、夏、実家で皆が集まった時に
母が「誕生日プレゼント、何あげていいかわからんからみんなにそれぞれ商品券をあげる」と孫たちに商品券を配っていた。
数日後には、その商品券を握りしめて、玩具屋にいき、リカちゃん(乙骨くんのじゃないよ。タカラトミーの方)を購入した娘。
すると、先日、実家に帰った際に何故かお財布を握りしめている娘。
「ばあば、商品券…むふふ」と笑っている。
すかさず、私が「あんた、誕生日でもないのに商品券ねだったらあかんで!」と
言うとすごすごと財布を引っ込めていた。
「リカちゃんの洋服買おうと思ったのに…」と未練たらしくしている。
が、がめつい…
誰に似たんだ。

皮算用の激しい娘に対して、お兄ちゃんは堅実。
お兄ちゃんは基本的には「家を出たくない」と普段は言っているが、
この頃、折に触れて
「家賃がいくらぐらいなのか。自炊をしたら1ヶ月どれぐらい必要か」などと
私に聞いてくる。
先日など、新聞に挟まれたチラシを真剣に見ているので
何を見ているのかと思ったら
求人のチラシである。
「なんでそんなん見てるん?」と聞くと、
「時給1000円やと何時間働かんなんかな。」
「夜勤やと時給高いな…」
一体何の仕事をするつもりなんだ。
一体どうゆう生活をするつもりなんだ。
私は彼ぐらいの歳のころ、そんなことを考えたことなど
なかった。
生活にいくらかかるか。
自炊にいくらかかるか。
彼は「毎日、白ごはんに納豆キムチでいこう」などと
すでにメニューまで考えている。
なんだ、その貧乏学生的なメニュー。

金銭的に、かつ家族にはガツガツと主張する娘だが、
学校などでは周囲に自分を主張するのは苦手なよう。
おっとりしていて、周りに言われるままに行動するところがあるので、
ちょっぴり心配している。
対してお兄ちゃんの方は、
嫌なものは嫌。一度不快な思いをした相手にはとことん距離を置く
ところがある。
幼稚園の頃、いや、それより前は、彼の繊細さが気になって、
初めての子どもであることもあり、
「嫌なことは嫌って言うんやで」と言い聞かせていたのだが
(いや、もしかしてそれのせいなのか?)
年長になる頃にはやたらめったら大きな声で
やめて!!!」と声高に主張する子になっていた。
小学校高学年に上がる頃には、来るもの拒まず去る者追わずスタイルが
出来上がっていた。
割とフレンドリーで、いろんなタイプの子と機会があれば話すようだが、
相手が嫌なことを言うタイプだと急にシャットダウンし始める。
当然のことではあるが、私や娘みたいなタイプは
そのシャットダウンがなかなか難しいのだ。
嫌な気持ちを我慢しつつ、半笑いでいる娘を見ると、
なんだか自分の幼い頃を思い出して、切なくなってしまう。
そういえばお兄ちゃんは読書にハマっていた頃は、
一人教室で本を読んでいるタイプだった。
みんなが話しているゲーム機がなかったことも影響していたのかもしれない。
そういえば、今周りの子が遅い時間まで遊んでいても
我が家は「この時間には帰ってきて」と門限が早めでも、
文句も抗議も言わず返ってくる。
交渉もしてこない。
「周りがこうだから」というセリフは息子に限っては言わない。
娘は言う。

こうやって考えていくと、生まれながらにもったものもありつつ、
親や周りから徐々に影響をうけ、自分なりに取捨選択していったのかもしれない
とも思う。

「兄妹で違うよなあ」と思うが、横顔、寝顔、ふとした表情は
本当によく似ている。
でも、違っていて、面白い。
違っているからこそ、面白い。
それぞれがどんなことを言ったって、それぞれに個性があって、
本当に面白い。





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