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東京駅を東京人のスピードで歩けていた時がもう思い出せない

神奈川生まれ神奈川育ち、

全くもって東京人などではない。

だけどお隣だから、それなりに

東京駅を、宝塚劇場のある日比谷駅を、銀座を、渋谷を、新宿を、池袋を、六本木を、お洒落して歩いたものだった。

そういう時ばっかりは、大好きな横浜魂をどっかに置いてきて、さも自分は東京人であるかのように振る舞う。少しでもきょろきょろしようものなら、「あら、お江戸に慣れていないのかしら、どちらからお越しなの?」そんな視線が飛んで来そうで。

大学は神保町だった。のんびりした街だったが、それでも神田、後楽園、秋葉原などは賑やかで楽しいものだった。

そんな街を歩くことに、なんの疑問もなく、満員電車への不平不満を日々嘆きながらも、楽しく、毎日を愉快に過ごしていたものだった。

ディズニーシーに行こうものなら、(年パスを持っていた)東京駅の人混みなんぞ気にやしなかった。東京駅にいる、誰よりも、ディズニー、舞浜に向かう人間が幸福で強いと感じる。まあ、たどり着く先は千葉県なのだが。そこがまた愉快だ。

きょうび、うつ病の自分は、友人との約束を取り付け、電車を乗り継ぎ本郷三丁目の喫茶店に向かっている。

乗り換えの最大の起点は、東京駅だった。東京駅で、JR線から丸の内線へ。

東京駅に降り立つ瞬間、人々の足の動きに心臓が止まった。ホームにいる自分以外、インラインスケートにでも乗ってるのではないかというスピードでホームを移動している。

移動しているだけでなく、それらはすべて目的地の決まった動きで、さらには平行移動しているようにも見えて、私は早速目が回って壁際に張り付いた。2020年花組公演『はいからさんが通る』の編集長が如く。

壁伝いにどうにかエレベーターへ辿り着き、ホームから脱出、次に臨むは乗り換えクエストだった。

東京駅はダンジョンだった。

もちろん今までそんなふうなことを考えたことはなかった。

ダンジョンでの敵は、まったく私を見えていないふうな仕事帰りの人群。立ち止まった途端、波に呑みこまれる。ゲームオーバーだ。

私は乗り換え先の丸の内線をしっかりと見据え、どうか何事も起こりませんように。(人にぶつかりませんように、転びませんように、倒れませんように)祈りながら進んだ。

たどり着いた丸の内線改札。

自動チャージのPASMOをタッチした瞬間、戦いは終了した。私はダンジョンを抜けたのだった。

丸の内線のホームも、相変わらずインラインスケートに乗ったかのような人群でごった返していたが、気にはならない。私は東京ダンジョンを抜けたのだ。

喫茶店に着き、友人を待つ。

喫茶店は、麦。

名曲・珈琲 麦 https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131004/13018618/

ここは静かで、クラシックに鈍い私だけど、クラシックが流れている、それが良かった。

流行りの曲、iTunesランキング上位曲を流されたものなら、流石の神奈川人でもなんでやねんと突っ込みたくなる。

ソファの沈み加減が心地よい。深く深く沈む。

心落ち着けて、友人を待つ。

東京ダンジョンは今の私には目が回る、魔界のようなものだった。今日のように、朝から時間通りに薬を飲みつつも、誓いを破り図書館に行くことができず、昼過ぎまで眠り、その後起きても唸り、胸が苦しい、嫌ないちにちを締め括るには、東京駅はあまりに不向きだった。

しかし、ダンジョンを抜けたからこそ、この麦に辿り着き、クラシックを聴き、友人と語り合い、笑い、心を温めることができるだろう。そして、この目の回る感覚も消えるだろう。楽しみだ。

早く来ないかな。

どんなにつらいいちにちや、出来事があったって、友人との約束があれば、なんだって楽しい。

心躍る。


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