海砂糖 夏のつぶやき 意味深な 黄金の塚 それもありなん
海砂糖かな。
上原は広場の橋のほうにひっそりとある、石垣で積まれたものを見てこうつぶやいた。「海に砂糖って、海と言えば塩じゃないの？」上原に異を唱えたのは、すぐ横にいた同級生の友達、赤峰である。
「いや、この石垣が黄金塚と書いてあったから、ふと思ったことだ！」と上原は大声を出す。
「黄金と砂糖って意味がわからない」赤峰は顔をしかめる。上原はそんな赤峰をやや軽蔑のまなざしを向けながら、「説明しないとわからないか。砂糖は江戸時代までは貴重品で薬として重宝されていたらしい」
歴史に詳しい上原、赤峰も決して疎いわけではないが、上原の視点は独特だ。
「堺から南河内にある長野（河内長野）まで運ばれてきたのだろうけれど、おそらく貴重だったであろう当時の砂糖には黄金のような価値があり、楠木正成が埋葬したのは黄金ではなく実は海から運ばれてきた砂糖ではと、ちょっと想像を膨らませて考えただけだ」
「それは違うと思うよ」赤峰は即座に反論した。「それだったらわざわざ黄金塚なんて書くかなあ。薬塚とか糖塚ならわかるけどな」
「さて、どっちが正しいのか、わからないのは確かだな」上原はあえて持論は押し付けない。だから赤峰も上原と友達付き合いができる。こうして上原は黄金塚のある高台から海のほうに向かって短歌を詠んだ。
海砂糖 夏のつぶやき 意味深な 黄金の塚 それもありなん
（うみざとう なつのつぶやき いみしんな おうごんのつか それもありなん）
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今日は、こちら小牧幸助さんのシロクマ文芸部という企画に参加しました。
こちらの本日の記事をモチーフに創作しています。
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