【文学フリマ京都8】『悪天を裂く』 試し読み
土砂降りの朝だった。灰色の雨雲が空を覆い、湿気のせいか陰鬱としていた。雨音がやけに大きく聞こえ、耳を塞いでも遮ることができない。雨に責め立てられているようで胸のうちがざわざわする。背中に鉛が乗ったように重く、十時になってもベッドから起き上がることができなかった。
朝七時半に母さんは仕事へ行った。最近は忙しいらしく、帰るのが遅い。夜十一時くらいに帰ってきて、冷凍食品を温めている。そして俺に小言を言う。「家にいるんだったら家事のひとつくらいやっといてよ」「女手一つで育ててきた