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これだから中華料理屋はいいのだ

 六本木の贅沢な街並みに馴染んでいる中華料理屋。五、六階ほどの高さのビルの一階に入っている。ドアは開きっぱなしになっており、道路側一面に貼られた窓も開放されていてとても清々しい料理屋だ。
 このお店の料理のメニュー表に目をやると定食と坦々麺という二つのジャンルに分けられ料理名が並んでいる。麺類ではなく坦々麺。ここに中華料理の強みを感じさせられた。こんなメニュー表を渡されてしまったら坦々麺の中から選ぶしかない。
 料理を注文し終わると、友人が餃子を頼むのを忘れていたことに気づく。ラーメンを食べる時、一緒に餃子を食べるのがスタンダードにされているが何故だろうか。ラーメンと同じ脂っこいもので、ラーメンに入っていそうなひき肉にネギ。よく一緒に食べれるものだ。同じ脂っこいものでも唐揚げの方がマシだ。中華料理屋の油淋鶏に勝る唐揚げはないからな。話を戻すと、友人は忘れたことに気づくとすぐに店員を呼び「餃子もお願いしていいですか」と聞く。店員が了解したので餃子を頼もうとするが、先ほど料理のメニュー表を回収されてしまったため何個入りの餃子がここのお店に用意されているかわからない。店員が「何個にしますか」と聞くので、友人は「一番安いのは何個ですか」と聞く。すると店員は「どれが安いとかないです」と答えるのだ。むむっと眉間に皺を寄せるような反応を見せる。友人も店員も。埒があかないと思い、そんなことあるのかとは思いつつ「何個でもいけるんですか」と尋ねると、驚いた、店員は頷くのだ。大体三つ入りと六つ入りがスタンダードであり、個数を自由に頼める餃子は初めてだ。
 ここまで綴ったように好印象な中華料理屋だ。しかし、ここまでで少し汚点を感じることがあったかもしれない。先ほどの友人と店員のやり取りで店員が眉間に皺を寄せたことだ。だがしかし、これもまた良し。これもまた中華料理屋の良さなのだ。このお客だからといって最上級の敬いをしなくてもいいスタイルがアットホームであり、いい意味でらしさを出していると思うのだ。さらにこの後もっと嬉しかったのは、厨房の中国人と中国語と日本語ごちゃ混ぜにしながらホールの店員が口喧嘩をしていることだ。ちょうどその時餃子だけなかなか来ないと思っていたところで、おそらくホールと厨房で餃子の注文が正しくいき通ってなかったのだろう。こう言ったことがあるから餃子には決まった個数があるのかもしれない。他のお客がその口喧嘩を不穏そうな目で振り返り見ていたが、おそらく私だけ我慢できずにやけていた。
 最後、餃子を私たちのテーブルに置く際、口喧嘩の怒りをぶつけるように半分投げる気持ちで置いてくる。なんてことがあったら星五をつけるところだったが、流石に無礼者ではなかったようだ。


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