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スマートシティ本部のビジョンと戦略


弊社で働くことを検討してくださっている方たち向けに、LINEヤフーコミュニケーションズのスマートシティ本部の詳しい情報を書きまとめています。
この記事が第2話。第1話の「働くメリット編」も是非ご覧ください。
また、この第2話は私たちから見た現在のスマートシティ業界についての考察、その中で私たちはどのようなポジションを築いていくかの戦略についても触れます。スマートシティやまちづくりに関わる皆さんにも読んでいただき、ご意見などいただけますと幸いです。

業界の現状と課題

急速な成長が見込まれる市場

周知の通り日本は少子高齢化が加速し、地域によってはすでにリスクが顕在化してきています。そうした変化の中でも暮らしを維持したり多様化するライフスタイルに対応していくために、行政、交通、医療などあらゆる領域でのデジタル化による効率化・省人化が求められています。つまりスマートシティ化への期待は大きく、市場は大きく成長していくと予想されています。

行政DX・スマートシティ(都市OS)国内市場規模
※KPMG社レポートより抜粋
行政DX・スマートシティ(都市OS)国内労働市場規模
※KPMG社レポートより抜粋

これらの図からわかる通り、スマートシティの行政・都市OS領域だけでも金額規模や働く人数が年平均50%も成長していくことが予想されています。
海外のスマートシティの市場予測を見ても、CAGR20~30%以上というデータが多く、「今後さらに盛り上がってくる業界」と言えると思います。

実際、日本全国でたくさんのスマートシティプロジェクトが勃興しています。東京や大阪などの大都市や、福島県会津若松市、静岡県浜松市、兵庫県加古川市、沖縄県名護市など、街の規模も課題も様々です。
なので、「スマートシティ業界の課題」を端的に言い表すことは難しく、抽象化・一般化して解説したいと思います。

スマートシティ業界の構造

業界の構造を下図のように簡単にまとめました。(実際はもっと複雑だったり、プロジェクトごとの個体差も大きいです)

スマートシティは様々な業種の団体が関わっていて、代表的なカテゴリを経済規模順に並べてみました。規模が大きいほど出来上がるのに時間がかかります。
弊社は主に住民サービスに該当しますが、同じスマートシティでも不動産やインフラの企業の予算規模と比べると桁違いです。実際、国内のほとんどのスマートシティプロジェクトは規模の大きな不動産やインフラ、あるいは横断的に携わる行政やコンサルが主導権を握って進んでいくことが多いです。

スマートシティ業界が今後抱える課題

①社会貢献性と経済合理性のジレンマ
スマートシティは地域の課題解決と銘打ちながらも、たくさんの企業によって推進されるため、各企業のビジネスメリット追求を切り離して考えることはできません。
それによる弊害として「解決難易度が高すぎる課題」や「特定の人たちや地域のみが深刻に抱える課題」などは経済合理性を理由に着手されにくくなります。一方で、共通性の高い課題に対し汎用的なソリューションを生み出す流れがすでに強まっていると感じます。

出典: 山口 周 著『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す』
プレジデント社(2020)

上記書籍の指摘のように、問題の普遍性が高く(市場規模が大きい)、問題の難易度が低い(コストが低い)ところに対して企業は注力するのが摂理です。
つまり、スマートシティのほとんどは経済合理性限界曲線の内側で行われており、今後どのように外側の問題に向き合い、曲線の位置を引き上げることができるかが課題であると考えています。


②プロジェクト長期化による住民や参画企業のネガティブなリアクション

2つ上の図では5年ほどのスパンで表現してますが、実際はさらに長期化するケースも多く、計画の「遅延」「延長」、最悪の場合「中止」という情報を耳にすることもあります。自治体や複数の企業の思惑が錯綜する中で、調整ごとがうまくいかなかったり、意見がまとまりにくかったり、想定外の問題が発生したりするからです。
やがて、住民の中には「何も変わらないじゃないか」「税金の無駄遣いをしてるのではないか」「どんな街になるのか不安だ」といった懐疑心や不信感を抱く人が出てきます。数年の月日のうちに、自治体や企業のトップが変わることもあり、突然の方針変更で規模の縮小や撤退になる可能性もあります。
こうしたネガティブなリアクションを防ぐ、あるいは柔軟に対応するための施策の必要性が高まっているように感じます。「共創」や「市民参加」というキーワードが流行り始めているのもその現れだと思います。


私たちスマートシティ本部の強みと弱み
(業界の課題への向き合い方)

強み

第1話では、以下の4つを私たちの強みとして定義しました。

<インパクトの大きさ>
 ・1億のユーザーを抱えるプラットフォーム
 ・ユーザーを理解し、動かす力

<課題解決スピードの速さ>
 
・高い勝率で、短期間で、企画を実現する力
 ・地域の有力プレイヤーとの強固なネットワーク

一言で表すと、「短期間で定量的な結果を生み出す」 です。

業界の課題に対し、私たちの強みをどのように活かし、業界の成長に貢献していくのか

課題①「社会貢献性と経済合理性のジレンマ」に対して

私たちの代表事例の一つである「福岡市粗大ごみ受付LINE公式アカウント」は、経済合理性限界曲線の外側の事例であると捉えています。
実現にあたり、福岡市には難易度の高いご調整をたくさんしていただきましたし、私たちもこの機能の開発とマーケティングなどに多くの時間とコストをかけてきました。正直、企業の経済合理性としては破綻しています。
しかし、その結果として全国初事例が生まれたし、粗大ごみを出す人の約半数がLINEで申請するほど住民の暮らしの当たり前を変えることができました。これまでに10万人以上の住民がこの機能を利用し、この街から合計で数万時間もの無駄な時間を消失することができたのです。

解決に多大な時間やコストを要した福岡市粗大ごみ受付LINE公式アカウントは
住民が抱える普遍的な不便さを解決することができた

このような取り組みを実現してきた私たちのノウハウは、業界の課題解決に役立つと考えています。


課題②「プロジェクト長期化による住民や参画企業のネガティブなリアクション」に対して

私たちがこれまでに企画したサービスの多くは以下のレンジに含まれます。
・アウトプットまでの期間 3〜6ヶ月
・利用した住民の数 4〜7桁 ※参考:福岡市の人口164万人(2024年4月)
このように数年先の未来というよりも「現在の課題」の解決に注力することで、住民の皆さんはポジティブな変化の実感を得られたり、テクノロジーに対する安心や信頼を持てるようになります。
長期的なスマートシティのプロジェクトの過程で、このように連続的にテクノロジーフレンドリーな状態(下図では「市民と技術のCLOSING THE DISTANCE」と表現)を土台として形成することは必要不可欠と考えます。

未来にいきなり大きな変化を起こすのではなく、
現在の課題を解決し続けることで住民の皆さんの安心と信頼をつくることが大事


弱み

一言で表すと、「業界内でのプレゼンスの弱さ」 です。
前述しましたが業界の構造上、不動産・インフラ・行政・コンサルといったプレイヤーが主導権を握りやすく、経済規模が小さい私たちのような取り組みはどうしてもそのヒエラルキーの下のほうに位置してしまいます。
また、LINEヤフーの子会社であるLINEヤフーコミュニケーションズがスマートシティに5年以上取り組み、福岡市の情報発信や粗大ごみ受付、商業施設の順番待ち解消、オンデマンドバスの呼び出し、シェアサイクルのポート新設のリクエストなど、様々な実績があることもまだあまり知られていません。

ビジョンと戦略

私たちはみんなが使っているLINEヤフーのサービスの特性を活かし、行政・交通・飲食・医療など暮らしの中で生じるあらゆるコミュニケーションの課題を解決し、さらなる便利さをつくることが使命だと考えています。また、同時に得たいものは「住民の皆さんの高い満足」であり、住民の皆さんが誇りに思うまちづくりに貢献したいと考えています。

スマートシティ本部のビジョンとミッション


組織戦略

このビジョン・ミッションを達成するためには、社会貢献性と経済合理性のジレンマを解消する持続的な体制づくりが必要と考えています。
現在私たちの組織では、社会貢献性を追求するチーム(経済合理性限界曲線の外側)と、経済合理性を追求するチーム(経済合理性限界曲線の内側)を切り分け、それぞれが生み出した資源「知見・スキル」「資金」を循環させるサイクルをつくっています。
つまり、スマートシティの取り組みそのもので儲けるのではなく、スマートシティの副産物によって別のビジネスを起こしているのです。ただし、その別のビジネスも「地域の課題を解決するもの」と定義しているので、私たちはこのサイクル全体をスマートシティの活動として捉えています。


事業戦略

私たちは、スマートシティ業界のアンチテーゼのポジションをとることで業界の成長に貢献できると考えています。

構想発表、実証実験開始、協議会設立など業界の主なニュースは「空中戦」の様相を呈している

私たちはサービス実装、実績発表といった「地上戦」のアウトプットを行う

数年×数百億円をかけるドリームプロジェクト

私たちは、数ヶ月×数百万円という規模ながらも住民が今困っていることに向き合うリアルプロジェクトを行う

※これらは、言わば私たちの行動指針でもあります

このように、業界の各プレイヤーが「必要と感じながらもできていないこと」をやることで私たちの強みや存在価値を認識してもらい、そこからいくつかのパートナーシップを形成し、「スマートシティのコミュニケーション領域のNo.1企業」というポジショニングをつくりにいきます。


次回、「応募を検討されている方へのメッセージ」について更新します。

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