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街に散りばめられた声を探して

スプレーで落書きされた壁を、いつもまじまじと眺めてしまう。

街を歩いているときに、壁にスプレーで描かれた絵や文字をふと見かけると「実は何かしらのメッセージがあるんじゃないか」なんてことをじーっと立ち止まって真剣に考えたくなる。

大前提として、もちろん落書きはいけないことなんだけど。


もしかしたら、本当にただの落書きかもしれないし、書いた人が自分のサインを残していっただけかもしれない。

でも、めちゃくちゃ大切な何かを教えてくれている可能性もあって、わたしはその可能性をどうにも捨てきれないような気がして。

なんだか不思議なもので、壁の落書きって意外と絵になっていて、上手に描かれていたりする。だからちょっと面白くて、魅力的に思えてくる。

本当は、然るべき場所にそれが書かれていたらもっともっと素敵なんだけど。


こんな風に、わたしは街の中にあるモノの中に隠されているメッセージを探したり、物語を見出すのがすきだ。

カメラを持って歩いているとき、街の片隅に乗り捨てられてしまった自転車があると、わたしは何故かシャッターを切ってしまう。

壁の落書きを見たときとよく似た感情を抱く。

この自転車が醸し出しているものが哀愁なのかなんなのか、わからない。

正体のわからない何かに引き寄せられていって、もっともっと知りたくなる。そこにある”かもしれない”メッセージを、見つけたくなる。

どちらかというと、辿り着きたいわけじゃなくて、
『探してみたい。』という気持ちが強い。

持ち主とこの自転車の間に、一体どんな物語があったんだろう。

捨てられたとき、自転車は悲しくなったりしたのかな。雨の日もずっとここで待っているのかな。いつか、ここから居なくなるのかな。




川沿いの柵に、”造花”のバラが一輪、飾られていた。

なんで、こんなところに”咲いている”んだろう。

このバラに「理由」があるのかないのか、わたしには分からないけれど。
ここは、誰かにとって忘れられない大切な場所なのかもしれない。


レンズを向けてシャッターを切り、わたしはそこからまた歩き出した。




街には、誰かの想いや忘れられない思い出、そして、微かに、でも確かに響いてくるメッセージが沢山散りばめられている。

辿り着けそうで辿り着けない、掴めそうで掴めない。街の中に潜むそんな"声"を、探していたいと思う。

だからわたしは、シャッターを切ることをやめられない。


2020.10.8

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