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脳内に「映像」が流れる文章のつくりかた

いい文章、人の心を動かす文章は、読む人の脳内に映像が流れます。

そのときの情景が目に浮かぶ。著者が話している姿が想像できる。そんな文章には、ぐいぐい引き込まれ、つい最後まで読んでしまいます。

では、どうすればそんな文章が書けるのか? 最近、WORDSでいくつかヒントをいただいたのでご共有します。

冒頭5行で「著者の声」と「場の雰囲気」を伝える

柿内さんが編集された「2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義」という本があります。

この本の冒頭の5行を引用します。

はい、瀧本です。
とくに今日は自己紹介する必要もないと思うので、バーっと進めますね。
僕は話すのがちょっと速すぎるようで、よく通訳が必要とか言われるんですが(笑)、ここに集まったみなさんは頭も良いかと思うので、京大の授業でいつもやっているようにやります。

(『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』星海社新書/瀧本哲史 著より)

この5行、実はものすごく計算し尽くされているのだそうです。

これを読むと、ざっとこれぐらいのことがわかります。

・この人は「バーっと」のように擬音を使う話し方をする
・どうやら早口らしい
・この会場には頭がいい人が集まっているらしい
・この人は普段、京大で授業をしているらしい

つまり、この情報を冒頭で読むだけで、読者はその後に続く文章を「早口で、擬音を使いながら喋る人」の音声で再生していくのです。

しかもその脳内には、頭の良い人たちが集まった会場で、すごいテンポで講義が展開されていく様子が浮かんでいる。

このように「視覚的」「聴覚的」な要素を効果的に使うと、脳内に映像が流れる文章になります。

しかもこの場合は、著者の「声」と、会場の「熱」を想像できる文章を冒頭に持ってくることで、文章全体の印象を大きく変えているんですよね。

ちなみに、この冒頭の5行は実はこの講義ではなく、瀧本さんの他の講義での発言から引用したものなのだとか。それも「編集」の力なのだと、すごく勉強になりました。

「いきなり情報からはじめちゃダメ。読者は情報が知りたいのではなく、情報からその人の”キャラ”が知りたいんだよ」

という、柿内さんの言葉を胸に刻みたいです。

「固有名詞」「地名」を入れる

固有名詞や地名も、空気感を伝えるのには効果的です。

竹村さんが編集された、こちらのUUUMの鎌田社長のnoteから引用します。

最初のオフィスは、原宿竹下通りのマクドナルドが入っているビルの401号室。ワンルームです。
マクドナルドの隣にはピアスなどを売っている小物屋さんがあって、客の女子高生たちにまみれながらエレベーターに向かうんです。本当に狭い部屋で、来客があったら「みんな、下のマックでメシ食ってきて!」と言って、追い出していました。

この描写、ものすごく情景が浮かぶと思いませんか?

「原宿のビルの一室」ではなくて「原宿竹下通りのマクドナルドが入っているビルの401号室」

こう言われることで、「雑多な場所にあるビルで、そんなに治安も良くなくて、普通のワンルームで、本当に狭いんだろうな」と想像できます。

なんなら「お金がなくても、夢と仲間がいてがむしゃらに頑張っている、いい空間だったんだろうな」というぐらいまで思いを馳せてしまう。

このように、固有名詞や地名を効果的に入れることで、より生々しく「空気感」を感じられる描写になるんです。

「当時の資料はないの?」

クライアントさんのnoteをつくっていたときに、柿内さんがおっしゃった言葉です。

そのnoteは「業績がかたむいた会社が新事業を起こし、なんとか軌道にのせていく」というストーリーです。その途中で「セミナーが大成功した」という話がありました。

「この当時のセミナーの資料はないの?」と言われて、「たしかに!」と思ったんです。

これまでたくさん取材させていただいて、文章も何回も読んで、私はすっかりこのストーリーをわかった気になっていました。でも、当時の生々しい雰囲気や熱量、実際のセミナーの情景まで想像することはできていませんでした。

当時の資料を送っていただくと、文章で読む以上に当時の空気感が伝わってくる気がしました。実際のnoteにも、その資料を取り入れています。

これを読んで、脳内に「映像」が流れるか?

風景や、声や、においが浮かんで来るだろうか?

もし映像が浮かばないのなら、きっとそのための要素が足りないはずです。固有名詞なのか、視覚・聴覚的な描写なのか……。

今後、多くの人の心を動かす文章が書きたいときには、この観点から読み直して推敲しようと思います!



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