氷川きよしさんのアイシャドウと多様性のこれから
先週、音楽番組SONGSで氷川きよしさんが特集された。
この文章を見た人の中にも多くいると思うけれど、わたしはドラゴンボール主題歌の限界突破×サバイバーを歌っている姿を見てから氷川きよしさんが好きになった。
以前から氷川きよしさんが好きだったというファンの方がこの文章を読んでいたら、「あなたのようなファンのおかげで今の氷川きよしさんが見られています。」
と感謝したいです。
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限界突破×サバイバーの動画が拡散され私たち若い世代でも話題になったのは、
・演歌歌手がヘドバンをしながらロック調のアニソンを歌い上げるギャップ
・メイクをする等自分のありたい姿で歌っていることへのリスペクト
があると思う。
そしてこのどちらも、今までのキャリアが無ければ起こらなかった感動だ。
「氷川きよし」という役
わたしは、その芸名の「役」に飲み込まれているくらいの人が好きだ。
その求められる「役」とその人自身の本気の本音が混ざり合うようなパフォーマンスをする人だ。
他の歌手だと椎名林檎さんなど。
私自身が未熟で演歌に興味を持っていなかったため、「氷川きよし」にハマることは今まで無かったが、
この人もその求められる「役」に対する精神が凄まじい人だな、と感じていた。
実際、SONGS番組内で
「氷川きよしとして求められる姿に応えねばという気持ちで、20.30代は外食もほとんどしてなかった」
と仰っていた。
今回の限界突破×サバイバーが話題になったのは、その完全な「氷川きよし」像を打ち砕くかのようなパフォーマンスだったからだろう。
今までの「氷川きよし」は打ち砕かれてしまったのか
でも、その「氷川きよし」像を打ち砕いてしまったのかというと、そんなことは無い。
むしろ、かなり慎重に「氷川きよし」をアップデートしてきたと感じる。
限界突破×サバイバーは話題になったのは最近だが、リリースされたのは2017年だ。
そして、当初この曲は今までの「氷川きよし」の姿で歌っていた。
詳しい時系列までわからないが、2017年から2019年までの間にライブでアイシャドウをがっつり入れたフルメイクで歌うようになり、それが最近SNSで話題になった。
そもそもロック調の曲に挑戦することにも「演歌で精一杯やってここまでやれたな、とクリアできたら思い切ったことに挑戦したかった」
と仰っていたので、ファンや周りの反応に配慮しながら変えてきたのだろう。
「キー・ナチュラル」こそ多様性のアンサー
メイクをすることについてはこう言う。
一人一人違うから。自分がやりたいとかこれ、美しい、と思うことはやっていいと思う。自分だなって思いますもんね。画面を見てて「あ、これ自分だよね」って思える
そしてそれを「キー・ナチュラル」と自ら呼んだ。(キーは氷川きよしさんの愛称)
今まで自らのアイデンティティについてきっと悪意ある憶測も含めて、散々言及されてきたのだろう。
それに耐えつつ歌手活動を続けることによって、ファンからの信頼を得た結果の「キー・ナチュラル」
きっと、カテゴライズできる多様性など一つもないということを言いたいんじゃないだろうか。
個性というのは何かチェックリストがあってそれに当てはまればA、そうでなければB、というような無機質なものではない。そのどちらにも少しずつ当てはまる人や、どちらにも全く当てはまらない人だっている。
自分が自然と感じることをする、自分の好きな自分でいる、
そして、それは「氷川きよし」を捨てたわけでなく、これからも今までの地続きの「氷川きよし」であり、
それを支えてくれるファンとの信頼関係が築かれていること、
それを世の中に発信する言葉として、
「キー・ナチュラル」と言ったのではないか。
いつでもフルメイクできる世界に
昨年、氷川きよしさんはレコード大賞、紅白歌合戦、共に出演された。
その時の映像が録画してあったので、もう一度見てみると、限界突破×サバイバーを歌っているのにメイクは控えめだった。
他の音楽番組でもそうだったので、
恐らく「多数の出演者がいるテレビ番組」では控えめにしているのだろう。
あくまであのフルメイクをするのは、自分の特集番組やライブ等、
「自分が主役の時だけ」と決めている様子だ。
いきなりフルメイクのライブ映像を目にした私たちとしては、豪快に舵を切ったように見えるけれど、かなりTPOを考えている。
推測だけれど、これからも「氷川きよし」を進化させたい、そして世の中の多様性に対する意識を本当に変えたいと思っているからこその考えなのではないか。
恐らく今、音楽番組でフルメイクのパフォーマンスをしても、ファンはついてくるはずだ。
でも自分のファンでは無い不特定多数の視聴者にも、徐々に自分の新しい在り方を浸透させ、いつか誰もがそういった在り方をするのが普通になること、そこまで考えて様子を見ながらパフォーマンスをしていると感じた。
勿論、その時のパフォーマンス次第でメイクを変えているのならそのままでいてほしいけれど、もし「この曲は本当はフルメイクで歌いたい」と考えているのであれば、
はやく、紅白歌合戦でフルメイクで歌う氷川きよしが見たい、それが自然な世の中に一刻も早くなってほしい。
また、演歌を捨てたのか、という意見が調べると時々見えたけれど、演歌も今まで通りリリースしている。
「大丈夫」という曲について、
「限界突破しても大丈夫」というメッセージだと仰っていた。
これからもずっと「氷川きよし」でいて欲しい。
「氷川きよし」のまま私たちはずっと勇気付けられているし、きっと世の中を変えてゆくと思うのだ。
私がこれまで経験してきた苦悩や悲しさ、そして、それを乗り越えて生きてきたのだというメッセージを歌に込めることで、一人ひとりの個性を大事にする世の中にしていくお手伝いがしたいのです。そしてそれが、歌手氷川きよしに与えられた大切な使命だと、“確信”しています。
https://fujinkoron.jp/articles/-/1616?page=4
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