「羨ましい」


俺たちの持つ解離の特性を、「羨ましい」と言う人はわりと多数いる。

当事者からしたらこんなん羨むべきものでもなんでもないんだけれど、どうしたって隣の芝生は青っぽく見えちゃうんだろうね。「羨ましい」、それって言われる身としては嬉しい言葉だったりするんだろうけど、解離のことに関してのそれは、全然嬉しくも有難くもない。


実際めちゃくちゃ大変だし、人格同士はしょっちゅう衝突し合う。他人様に対しての恋愛対象のタイプも全然違うから毎回身体デバイスの取り合い。奪い合い。
譲り合うことなんて殆ど無くて、行われてるのはパイロット席を賭けた”戦争”だ。


こんなもんが無ければどんなにもっと気楽に生きられたことか、方向性が定まるのが早かったことか、俺としては人格が一つしかない人の方が余程”羨ましい”よ。



でもね、何もかもに言えるけれど、プラスに捉えなきゃ何事も始まらない。
どうにかマイナスの属性もプラスに転じさせることで、捉え方をポジティブに変換することで、なんとか気張って生きてます。



人格たちは常に戦い合う。「俺が、僕が、私が、(人格の中で)一番輝いてる」と、互いに競争心を持ちあって、妥協し合って、時にパイロット席に座るべくして座って、時に他人格に席を譲るべくして譲って、そうしてこの身体の生活が送られてる。



おそらく客観的に見て他者様から羨ましく見えるのは、解離の特性ではなく、この「自分が誰よりも一番輝いてやる」という姿勢だ。
逆境の中で、絶望的な状況の中で、喧嘩し合いながら、手を取り合いながら、泣き合いながら、笑い合いながら、何度も何度もぶつかって、そうして築かれた確かな絆と、前向きに生きようとする姿勢が、これこそが他者様から見た「羨ましい」なのだと予想する。




自身らは常に、焦燥感に駆られて生きている。
一人分の身体の人生を15で割った時間しか生きられないから、時間を常に勿体なく感じ、有意義に消費しようとする。
ボヤボヤしてたら、すぐに人生なんて終わっちまう。
単純計算で、じゃあ例えば健康寿命80年を15人で割るとして、一人あたり5.333333333333年しか生きられないので、尚更なのである。

常人とは生きる体感もスピード感もまるで違う。
これが俺たちの常なのである。




羨ましい?
本当に羨ましいか?
5.333333333333年しか生きられない人生、本当に羨ましく感じるか?
あなたにとってのその時間の体感、振り返ればあっという間だったんじゃないの?
俺たちに例えたらね、じゃああなたが30歳前後だとして、もうあなたの生きてきた時間だけで、5~6人の人生は終わっちゃってんだぞ?



記憶も飛ぶ。道も間違える。単純計算すら時に出来ない。大事なことも、忘れちゃいけないことも忘れてしまったりする。
きちんと自分の出来事として感じたいのに、他人事にしか感じられなかったりする。
誰かと繋いだ手の温もりが、確かに伝わるはずの熱が、とても遠いものに感じたり。
寂しいことも、辛いことも、悲しいことも多いよ?
本当に羨ましい?



”15人合わせて一人”じゃ無いんだよ。
15人が一人分の身体を奪い合いしてるだけなの。
本気でぶつかり合ってるの。



俺たちのことを羨む前にさ、目の前の現実を見てよ。
俺たちも、どんなに他者様が一人分の人生を好きなように謳歌できるさまを羨ましく思っても、口には出さず現実を見つめて、戦っているから。



俺はね、いつも逆境の中、負けたくない、死にたくない、こんなとこで人生終われるかよ、自分一人だけの人生じゃ無いんだ、統合も自死も絶対選びたくない、負けてたまるかよ!!って気持ちで、今まで生きてきたよ。



な?

勇気出して、今日を、明日を、見つめようよ。

俺もそうする。


辛い時は俺が何らかで絶対助けになってやるから、まずは一人で地に足つける努力する姿を俺に見せてよ。
嫉妬羨望する時間があるんなら、勿体ないじゃんか。
楽しいことでもしようよ。好きな映画でも観よう。それか、俺とどっか一緒に遊びにでも行く?最高に気晴らしさせてやるよ。



俺は今日、そんな気持ちで生きてる。

あなたは今どう?
悩み事があるなら俺に話して。
力になるよ。





読んでくれてありがとう!!


また会えることを願ってる。
ほんとに読んでくれてありがとうね。
出会ってくれてサンキュー!





千川悠里(10)


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