人を天使にするのも悪魔にするのも人だと思う
ふとしたときに思い出す、
実の家族のこと。
わたしは実家の家族全員と絶縁中で連絡を取っていない。
そのことは以前、一度だけ記事にしたけれど
(両家顔合わせに来ない親 参照)
やっぱり思い出しては胸が痛む。
実の家族とはどうして家族になれなかったんだろう。
◇
わたしに母はいない。
幼い頃に両親が離婚し、父に引き取られてからは父と妹とわたしの三人で暮らしてきた。
家族三人の暮らしは自由で、くだらないことで笑い合って、とても楽しいものだった。
だけど我が家には母がいないこともあり
昔から率先して家事をやる人がいなかった。
だから家の中はいつもホコリまみれだったし
食べ終わった食器が何日も放置されていたり
バスタオルは、前に取り替えたのいつ?
ってものがずっとかかっていたり…
ここに書くのはお恥ずかしいけれど
実家は不衛生な環境だった。
父と妹は何かと気にならないタイプだけど
わたしはそういうのが気になるタイプなので
なるべく家を清潔に保とうと
物心がつくと
お風呂掃除やトイレ掃除などの掃除全般、
時間があるときは庭の草むしりや窓拭きなど
気づいたところを一人できれいにしていた。
もちろんタオルもこまめに洗濯して取り替えた。
だけど三人生活していると、数日も経てばすぐに家は汚れてきて、妹は食べ散らかした食器を洗わず放置するので洗い物も溜まっていく。
わたし一人で頑張ったところで清潔を保ち続けるのは難しかった。
放置されてる洗い物に対して
「洗ってよ!」と言っても洗わず、キレる妹。
父に言っても、父は気にならないらしく
むしろ「そんなことで怒りすぎだ」と、
わたしが説教される始末だった。
食事はそれぞれで外食がほとんどだったけど、
わたしだけは家で作ることが多かった。
そして自分のバイト代や働いたお金で作った料理の残りを冷蔵庫に入れておくと
妹に食べられてしまったり、
挙句には「お姉ちゃんは料理が下手」「センスがない」などと言われた。
父と妹はわりと不衛生な環境でも平気な人だったので、誰もやらない家事をやっても感謝されることはなかったし
むしろ「うるさい」とか「気にしすぎ」などと言われ、作った料理はいちいち上から目線に評価された。
でももちろんわたしは専業主婦ではなかったし
家事をすることでお小遣いをもらっていたわけでもない。
学校生活やバイト、働きながら家事をやって
そのうち、どうしてわたしが家事をやってるんだろう。
どうしてわたしばっかり?と思うようになり
どんどん心が疲弊していった。
そしてこのときから、わたしはモンスター化していったのだと思う。
家を汚し、人のものを勝手に食い散らかし
常に上から目線の妹。
(わたしからすると妹こそモンスターだったのだけど)
妹に甘く、わたしにだけ厳しい父。
家事に協力せず、わたしを悪者にする家族。
そんな家族にストレスが溜まったし
妹は普通に言っても話が通じないので
わたしは怒鳴ることも多くなり
「お前ふざけんな、食器洗えよ!!」
「勝手に食べるな!材料費払え!」
などと汚い言葉を使うことも多かった。
そんな三人の生活があり、そこへ父の彼女が現れ一緒に暮らし始めたことにより
もうどうにもならないくらいの溝が深まり絶縁することになった。
実の家族からは度々、
「お前は結婚できない」
「男つかまえて、子どもだけ産んだら?」
「結婚したとしても、どうせ離婚する」
など、ここには書ききれないくらい
たくさんの酷い言葉を浴びせられた。
だけど自分でもそう思った。
実の家族と上手くいかなかったんだから
きっとわたしは誰とも暮らせない。
結婚もできないんだろうな、と。
なのに、わたしは結婚した。
無理矢理結婚してもらったのではない。
大好きな人がプロポーズしてくれての結婚だった。
そしてその結婚生活は穏やかで、毎日やさしさと笑顔で溢れている。
夫に対して怒鳴ったことや、
汚い言葉を吐き捨てたことなんて一度もないし
夫はわたしのことを
「mimiちゃんは天使だ」と言ってくれる日々。
天使?わたしが?
実家にいた頃の自分が嘘のよう。
わたしがそんな穏やかな生活をしているなんて
実の家族も、そして当のわたし自身も想像できなかった。
だけどこれは現実だ。
わたしは天使ではないし、むしろ怒り狂ったモンスターになったこともあったのに。
だけどそのモンスターはいま封印されていて
わたしは毎日天使でいられているらしい。
これは間違いなく夫のおかげだと言える。
夫は家事をやるわたしに毎日
「ありがとう」と言ってくれる。
「ごはんを作ってくれてありがとう」
「洗い物してくれてありがとう」と、何回も。
なにか不満があったときも
「夫くん、ここはこうしてほしいな」
と普通に言うだけで改善してくれるし、
間違っていたら謝ってもくれる。
夫にわざわざ怒る理由が見当たらないのだ。
わたしにとっては夫こそ天使で
そんな夫がわたしを天使にしてくれたのだと思う。
だけどわたしの中にはモンスターが眠っているのもまた事実。
いなくなったわけではなく、場合によっては
また目覚めることがあるかもしれないのだ。
そう自分でわかっているから、なるべくモンスター化しないように気をつけているけれど
もしかしたら関わる人によっては
そして夫とだって場合によっては
今後モンスターになることだってあると思う。
ひとつ屋根の下で同じように生活していても
わたしを天使だと言う夫もいれば
モンスターのように扱う家族もいた。
わたしは天使でも悪魔でもないけれど
きっとどちらの性質も持ち合わせている。
でもそれはきっと、ほとんどの人がそうなのではないか。
もともとの性格ももちろんあるけれど
愛にあふれた生活だったら天使になるだろうし
身近にとんでもないストレスを与えてくる人がいたら悪魔にもなる。
自分のマインドコントロールだけではどうしようもないことだってあるのだ。
ニュースを見ていても思う。
「あんなに優しくて穏やかな人がどうして」
なんて言われる人が犯罪を犯すニュースを見ると、そんなに優しくて穏やかな人が我慢できない、よっぽどの何かがあったのだろう、と。
そしてわたしも、あのまま実家で家族と暮らしていたら
そう言われることをしでかしたかもしれない…
なんて想像すると怖くなる。
作った料理を勝手に食べられ、文句を言われ
自分で食べた食器は洗ってほしいと言うと逆ギレされ、うるさいと悪者にされ、暴言を吐かれ
突然知らないおばさんが暮らし始める実家。
実家の家族との生活を思い出すと
理不尽にぶつかってくる事故のようなことばかりだった。
自分が本当のモンスターになる前に、そして家族を本当のモンスターにしてしまう前に、
逃げてよかった。と思うのだ。
いくら自分の性格を見直しても、気をつけていても、人間関係だけは自分の努力だけではどうにもならないことがたくさんある。
この人といると、やさしい気持ちになる。
この人といると、嫌な気持ちになる。
人と付き合う以上、そういう気持ちを持って当然だと思うし
穏やかな人を攻撃的にしてしまうのも
攻撃的な人を穏やかにできるのも
人を天使にするのも、モンスターにするのも
最終的には相性であり、人なのかもしれないと思うのだ。