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旧友からの着信

 電話がいつまでも繋がらなくて、「お出になりません」とだけ伝えるアナウンスで唯一繋がっていた電波も切断される。お呼びしましたがと付け加えているところに機械なりの優しさを感じて、その優しさが妙に痛い。
 それでも私はもう一度、履歴から番号を呼び出してコールする。繋がれ、繋がれと願いながら。
 彼に連絡するのはかれこれ十年以上ぶりにもなる。ふと数えてみた時に経っていた十年という歳月は、お互いの関係をあまりにも変えてしまっているかもしれないし、冷凍保存されていたかのように何も変わっていないかもしれない。
「うわっ」
 テーブルの上に置いていたスマートフォンがブルブルと震えながら、床の上に着地した。
 まさかと思い拾い上げると、見慣れた通話アプリの画面に映る見慣れない名前。中学校を卒業して以来連絡を一切取ってこなかった同級生が、いったい今さら何の用だというのだろう。
「どうせビジネス系の勧誘だろ」
 いつまでも途切れないその呼び出し画面を指でなぞり、微かに繋がっていた電波をたたっ切る。
 先ほど電話をかけた彼からは、未だに連絡が返ってこない。

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