車両の行く末
駅のホームを通り過ぎる電車を見送る。もうこれで何本目になるかわからない。
各駅停車しか止まらない駅で、ただひたすらに特急列車が止まるのを待つ、いつかはそこに乗車することができると信じて。
私と同じように駅のホームに立っていたはずの人たちは、知らないうちにどこかに行ってしまった。
諦めて家に帰ったのか、それとも各駅停車に乗車して次の駅を目指したのか、それは私にはわからない。
時折、私のことを奇異の目で見る人がいた。
「あの、ここの駅には各停しか止まりませんよ」
優しくそう声をかけてくれた女性は、予定していた時刻に到着した電車にするりと乗り込んだ。
私はそれでも、一つの希望に縋りつづけずっとここで待つ。立ち尽くし続けてもう何年になるのかも忘れてしまった。
幾度となく日が沈み、次の日には何事も無かったかのように日が昇る。そんな毎日をどれだけ繰り返したことだろう。
その間にも私の後から来た人たちは、当然のようにひとつ前の駅からやってきた電車に乗っていく。
もう疲れた。もう無理なんだろうか。
これまで何人もの人々を見送ってきたが、何度繰り返しても駅に一人残される寂しさには慣れることができない。
心も体も限界を迎えようとしていた頃、目の前に一台の車両が停車する。
頭の回転を疲労が妨げる。上手く思考することができないまま、救いを求めるようにその車両に一歩足を踏み入れた。
私が乗り込んだそれは、ゆっくりと速度を上げて動き出す。しばらく窓の外を覗いていたが、やがてあまりにも深い眠りに落ちてしまった。
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