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公立中学校の先生が本を出版した話

先日、本を出版しました。

僕には小さな夢がいくつかあります。北海道に行って、山盛りのいくら丼を食べる みたいなレベルのものです。

その小さな夢の中の1つに「30歳までに本を出版する」というものがあり、やっと叶えることができました。

■どんな本なのか。

本の表紙

本のジャンルは、中1数学の学習参考書です。自分の授業で実践して効果のあった教え方で構成されています。

Amazon   Kindle版 価格は0円

楽天Kobo   電子書籍 価格は0円

上記の2つのサイトで出版しました。(クリックするとページに移ります)  本名は抵抗があったので山田太郎というペンネームで出しています。

本の書き出しである1ページ目を紹介します。

 兵庫県の公立中学校の数学の先生が書いた本です。

 算数に苦手意識がある。「でも中学校に入学してから数学を頑張りたい」と思っている生徒の背中を押したいと思い、この本を書きました。

 自分の受け持つ生徒から「説明がとても分かりやすい」と、実績のある1冊です。

 本の内容は、中1数学の正の数・負の数の加法と減法です。中学数学の基本ですが、生徒が一番はじめにつまずく単元です。本書は、教科書よりも文字数が少なく、その分イラストが多くあるので、勉強しやすいレイアウトになっています。

 「数直線で考える加法・減法 意味分からん!」と思っている中学生へ。この本を読めば、きっと理解できます。

 この本が、一人でも多くの人の役に立てることを願っています。

本の1ページ目の文章

本を出版する目的は、自分の小さな夢を叶えること。したがって利益を求めることはしません。また書いた本の内容が少しでも広がることを望んでいるため、読者がノーリスクでクリックできるように、価格を”0円”に設定しました。

出版にあたっての僕自身の金銭的コストも0円なので、問題ありません。

■出版までの流れ

  1. 本を執筆する

  2. 校長先生に本を出版する許可をとる

  3. 教員委員会に本を出版する許可をとる

  4. Amazonや楽天に原稿を登録し、本を出版する

大まかに 1 ➞ 4 の流れで出版することができました。

❶本を執筆する

 この工程に一番時間がかかりましたね。僕はword で文章やイラストを作成しました。

 執筆を終えると、紙媒体で本がほしくなりました。自分用と教室に置く用で2冊製本しました。

 製本は、製本直送.comで簡単にできます。word 形式の原稿を pdf 形式に変更して、製本を依頼するだけです。コストは2冊で1500円くらいだったと思います。

本は郵送で自宅まで届きます。
製本された本を手に取ったときは嬉しかった。「俺は本を書いたぞ!夢を叶えたぞ!」

❷校長先生に出版の許可をとる。

校長先生は快く本の出版を応援してくれました。(許可をとる前々日くらいに勤務のことで校長とバトルしたので、許可をもらえてホントよかった。)

本の出版といっても、正直、僕も校長も何をすればいいか分かりません。僕はネットで調べて、”校長と委員会の許可がいる”と知ったので、とりあえず校長先生に相談したという流れです。

校長先生に、教育委員会に電話をしていただきました。委員会の許可が下りやすくなるように

  • 生徒にとって価値ある指導法を世に出したい

  • 利益を目的としないので0円で出版したい

という言い方で委員会の人に伝えて下さいました。

そのとき分かったことなのですが、僕の所属する自治体では、職員が電子書籍で本を出版した前例がないとのこと。したがって委員会の人もどう判断したらよいか分からず。「出版の件はこちらで相談と検討します。」と言葉をもらい、電話を終えました。

前例をつくったということが僕の 中2心 をくすぐりました。

❸教員委員会に出版の許可をとる。

2週間ほど経ってから「本の内容を見せてほしい」と委員会から折り返しの電話がありました。

5月の平日の勤務終了後、製本された本を持って、教育委員会事務局があるビルに足を運びました。

原稿を持って高層ビルを見上げる僕。自分の書いた漫画を 出版者の方に見てもらう漫画家はこんな気持ちなんだろうか。

事務局まで行き委員会の方に本を渡しました。とても丁寧な方で、その場でペラペラとページをめくり、「すごいですね。この内容なら問題ないと思います。あらためて検討してお返事します。」と言葉をいただきました。

「お願いします。お仕事を増やしてすみません。」と伝え、本を渡してその話を終えました。10分程度のことでした。


7月の上旬に委員会の人から電話をもらいました。本の出版は可能だということです。今回の許可の下りたポイントは以下の2点です。

  • 内容が公務員として問題がないこと

  • 0円で販売し、利益が目的でないこと

一連のやりとりの中で教育委員会は、出版によりトラブルで信用を失墜することを恐れているのだと感じました。とりあえず、出版の許可が下りて良かった。あともう一息。

今回は、あくまで所属する自治体とは関係なく、個人で出版するという扱いです。著作権は山田太郎(ペンネーム)にあるということです。

❹Amazonや楽天に本を出版する

AmazonのKDP、楽天Koboのライティングライフで、原稿を登録して出版完了です。この工程でも予想外のつまずきが多く、かなり時間がかかりました。

【つまずき1】
アマゾンの電子書籍の価格は99円~20000円の間でしか設定できないのです。アマゾンは1円でもロイヤリティーがほしいのです。「ええー!0円で出版できないやん」という壁がありました。

これはある裏技をつかって、クリアすることができました。期間限定ではなく、永年0円で出版できます。

【つまずき2】
つくった原稿はイラストが多いので、原稿を登録する段階で文字化けしたり、ずれたりするのです!しかも 形式はword やpdf ではなく、epub という形式です。なんとか、epubに変換しても、やっぱりずれる。

これはあるサイトを経由することでクリアすることができました。

PC上のつまずきを解消する方法は、マニアックすぎるので別の記事に記します。


話は変わって、公立中学校の教員は公務員であるため、自身を縛る法律がいくつかあります。好き勝手に出版することはできませんし、見つかったら処分されることもあります。

本を出版して良かったことは、出版までの正しい手順を勉強できたことです。書籍の出版にあたり、公務員として何が〇で、何が×か 、という基準を知ることができました。

■今回の出版で学んだQ&A

これってOKなの? という〇と×の基準を記載します。

Q 委員会の許可をとらずに、個人として出版してよいか。

A 法律的にNOです。でも勝手に出版してもたぶんバレません。本を出版していることを知っているのは、あなただけですから。


Q Amazonや楽天で出版していることを自分の生徒に伝えてよいか。

A NOです。委員会の人曰く、それは職権を乱用していることになるからだそうです。「0円だから、勉強に使いたい人はダウンロードして使ってねー」は言っては いけないということです。


Q 紙ベースの製本した本を、自分の生徒に貸してもよいか。

A    OKです。委員会の人曰く、自分の所有物を生徒に貸すのは問題ないとのこと。


Q 紙の本で出版したい。その方法はどんな方法?

A わかりません。出版社と連携して出版したり、自費出版したりすることになると思いますが、実際にやっていないので分かりません。ただ委員会の人 曰く、紙で出版する場合や利益を求める場合はもっと多くの相談と検討が必要であることを聞きました。


Q なぜ電子書籍で出版したのか?

A コストがかからないからです。本当は紙の方が勉強しやすいと思いますし、自分の受け持つ生徒に製本した本を貸して勉強をさせたこともあります。
 しかし、そこまで売れることが予想されない本を紙ベースでいくつか製本して保管しておくことは、リスクです。


■もう1冊出版する。

本気で気が向いたら、もう1冊 本を出版します。本のタイトルは「早く帰る教師術」です。僕の得意分野であり、情熱を傾けているところです。

元出版社勤務の方と話をする機会がありました。”早く帰る教師術”というタイトルの本や、”中学生のライフスタイルにあった勉強法”のような本を書いてみたい、と伝えました。

その方は「早く帰る教師術は売れると思う。時間管理術系の本は需要がある。なおかつ教員というのが良い。」とおっしゃていました。

次の1冊は、利益を得にいきます。

夢を叶えるために歩んだ3ヶ月間は、最高に楽しかったです。


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