見出し画像

百日紅(さるすべり)。

昨日出先で歩いていた時、街路樹の百日紅が目に入った。

街路樹には、濃淡のあるピンク・赤・白の満開の百日紅がたくさん並んでいた。

『〝木肌がツルツルしていて木登りが得意な猿も滑って落ちそうだ〟ということから百日紅って言うんだよ』と、一昨年亡くなった祖母が小さかった私に教えてくれたのを思い出した。

訳ありの家庭で生まれた私は、必然的におばあちゃん子となった。私を育ててくれたのは母よりも祖母だった。

昭和一桁生まれの祖母はカタカナばかり書いていた。兄弟の世話をしていて小学校すらろくに行けなかったと何度も聞かされた。きっと好きでカタカナばかり書いていたわけじゃないと、幼い私にも理解できた。

早朝に近所を走る祖母について行き、その途中にあるお豆腐屋さんのできたての温かい豆乳を一緒に飲んだのは良い思い出。60歳過ぎても中型バイクに乗るような元気な祖母にツーリングで色々な場所へ連れて行ってもらったことも良い思い出。高血圧・糖尿病と長年付き合いながらも、好きな食べ物を好きなだけ食べるという豪快で自分勝手な部分を持ち合わせていたのもまた事実。

祖母への感謝も思い出もたくさんたくさんあるけれど、実のところは良い思い出ばかりじゃない。

そんな祖母の最期の瞬間に私は間に合わなかった。流行病で大変な時期だったこともあるけれど理由はそれだけじゃなく…それは2年弱経っても私の中に大きな陰を残している。心のかさぶたがまたひとつ増えたようだった。

時々、このかさぶたがズキズキして…胸がぎゅっと締めつけられるような想いが湧いてでてくることがある。だけど、この青空の下で満開の百日紅を眺めたら…ほんの少しだけお互いを赦し合えた気がした。

気がした、だけなのだけどね。



今回は、山根あきらさんの青ブラ文学部企画 ✒️| 「習作」のための課題、に参加させていただきました。
素敵な企画をありがとうございます。

私の中では「#気づかなかった愛」も「#癒えない傷とともに」も「#灼熱の悲しみに悶絶して」も「#言いそびれた『ありがとう』」も「#言えなかった『ごめんなさい』」も祖母との記憶に凝縮されているのですが、結局のところテーマとしては「#言いそびれた『ありがとう』」を選ぼうと思います。

削ぎ落としていくと、結局それしか残らない気がするから。

というわけで、最後までお読みいただきありがとうございます。ではまたね。

この記事が参加している募集

#夏の思い出

26,319件

そのお気持ちがとっても嬉しいです。 心から…ありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)ꕤ*.゚