【遺稿シリーズ】無音と無明の恩寵
みこちゃん家の本棚の隙間から、某文豪の未発表の遺稿が見つかったので掲載しました
(゜0゜)
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黒さというものが無音を意味するということを初めて知った。
漆黒の中に無限の無音がひしめいていることを、京都で知った。
京都とは街全体が無音だ。
この街に音はないのか。
音を探して、遊郭に行ってみた。
「一見さんは…」
言われて音は聞こえなかった。
帝大生とはこんなもんなんだな。
改めて自覚した。
宿に帰る間に、カバンの中に入れてあったドイツ語の教科書を開いた。
いきなり目に入ってきたのが、Ich liebe dich.
こんな単語は小学校の時に知っていた。
だが、本当に知っていたのか。
刃を突きつけられるようにその単語が目に、摩耗するように擦り付けられた。
失明の悦びを知った。
漆黒の中でのみ見える光の明るさをまざまざと見た。
宿に帰ってから、りんごの横にある果物ナイフの鞘を抜いた。
両の目を射抜いた。
暖かな光が見えた。
寂滅とした彷徨の果てに見えた漆黒の光。
それをまざまざと見た思いがする。
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嘘ですみこちゃんのオリジナルでしたー(^-^)
第三回目は! 三島由紀夫でしたー
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