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No.054 よろしく!小野先生(3)ルミさん・看護専門学校の入試のバカバカしさ

No.054 よろしく!小野先生(3)ルミさん・看護専門学校の入試のバカバカしさ

「ルミさん、これが都立看護専門学校の過去問ですよ」
「え〜、何ですか〜!これ〜!」

2年前、5月の中旬でした。連絡もなく、ユウキちゃんが一人の友だちを連れて一緒にやって来たのは。ユウキちゃんは塾の卒業生、小学1年生の娘さんと1歳になる男の子のお母さんになっていました。

「お〜、久しぶり。ユウキちゃん」「しんやさん、元気そう!」卒業したら、先生と呼ばれたくないので、名前で呼べと伝えています。ユウキちゃん、よくできました。隣にいた女性が「こんにちは!ルミです」とメガネの奥の目に笑みを湛(たた)えます。ちょっとふくよかな体型によく似合う声と笑みです。明るく人生を切り開いていきそうと、勝手にレッテルを貼ってしまいました。

まあまあ、お茶でも。相談ごと?思い出します、ユウキちゃんが初めてこちらに相談に来た時を。中学3年生の5月、学年順位54人中48番、それでも明るく「わたし、バカなんです。キャハハ」。こういう子、嫌いじゃないんだよなあ〜。「ひどい成績だね〜、でもオレのいう通りにやれば、成績は上がるよ」「ホントですか!」いつもの自画自賛、書くとちょっとイヤらしいですね。

ひと月後の中間テストで数学95点。担任の先生に「怒らないから正直に言え。誰のカンニングしたんだ?」「ええ〜、してません」周りの同級生が全員悪い点数で、疑いが晴れた話もいい思い出です。結局、半年後には54人中5番の成績で、到底無理と言われた志望校にも合格しました。

ルミさん、小学3年生の息子さんを残し、ご主人に亡くなられました。悲しみから立ち直るのも大変でしたでしょうが、看護師になろうと決心しました。「よし、やるぞ〜!」行政機関で勧められた看護師向け予備校に通い始めました。ところがルミさん「さっぱり分かんない…」。そこでママ友のユウキちゃんに悩み相談。「わたしが高校受験の時通った塾の先生、ちょっと変わった人(余計じゃい〜!)だけど相談してみる?」

こちらは小中高校生向けの指導をしています。看護師専門学校の試験がどのようなものか分からないし、受験のシステムも未知の世界でした。ルミさんに話を聞きます。英数国の入試問題6割くらいの正答率が欲しいのと、志望動機とかの提出。看護学校試験の過去問題は見ていない。その前に基礎を築きましょうと、小学5年生の算数を学習している。割合も食塩水の問題も分からない。個別なので、大学生の講師に聞くが理解できないし、講師がよく変わる。英語は中学一年から復習という。

割合?食塩水の問題?過去問も見ていない?その前に基礎?

「ルミさん、三日ください。ちょっと調べます」。都庁に行けば、過去問が見られるしコピーも取れることが分かりました。過去問を入手し、分析しました。英数国ともに高校1年生レベルの問題。数学は計算問題をしっかり解けるのと、関数・三角比の基礎力は必要。解答が全て四択なので、選択肢からの逆算でも解ける。ちょっとしたコツが高得点への道。割合・食塩水の問題などに時間を割くのは言語道断。英語は会話文と長文読解が必要、文法問題出題ほんの少し。予備校、何教えているの?

腹が立ってきた。そもそも看護師になるのに不必要な知識の問題ばかり。看護師が不足している現状に、何をくだらないことをしているのだ。因数分解や英語の長文読解が看護師になるのに、何の役に立つのか。こちらの意に反する部分も大いにあるのだが、このくだらないテストに合格するしか看護師への道がないのだ。教えるのも虚しいが、そんなことは言っていられない。革命は、日を改めて実行しよう。調べると、自分が勧めた予備校のことを、行政機関の係の人間がよく分かっていないのだ。予備校に行ったこともないと言う。

ルミさんが予備校に支払った授業料の返還はできませんでした。では、個別授業を算数から中学3年レベルの計算問題に切り替えることを提案、何度かの交渉を重ねようやく実現しました。自分たちの都合で、授業を進めているのですね。

数ヶ月後に、こちらでの指導を始めました。ルミさん、人生で初めて勉強しているとの感想を漏らしました。楽しいですねとも。こちらの説明に「分かりませ〜ん。しんやさん」。「アカんですね〜。こんなのも分からんか〜い」「分かんな〜い」教えていて、とても楽しい人です。救いです。

「ルミさん、この様子撮影してユーチューバーデビューしません?メチャうけると思うなあ〜」「それって、わたしのバカさがさらされ、しんやさんがカッコいいだけじゃないですか〜?」「それが、いいんですよ。絶対受けます!稼ぎましょう」「やで〜す」儲け損ねました。

ルミさん、合格おめでとう!頑張りましたね。こちらの勉強にもなりました。ありがとう。

ルミさん、今、看護師になるべく頑張っています。課題の量が半端ないです。息子さんが寝てから、ファミレスに勉強に行き、明け方まで勉強します。時々、ここ分かりません、教えてくださいと、相談があります。頑張っているなあ〜。

ルミさん、くれぐれも体調には気をつけてくださいね!
リュウシンくんの成長も見守りながらの勉強がどんなに大変か、想像もつきませんが応援していますよー!

リュウシンくん、お手伝いして頂戴ね!
いつもお母さんの背中を見ておいてね!一番の勉強だよ!

ルミさん、看護師までの道のゴールはもうすぐですよー!!
ファイトーー!!

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