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No.155 旅はトラブル / オランダ・アムステルダム&イングランド・コッツウォルズ訪問ひとり旅2012(4)アムステルダム / ホテルオークラOkura・私設秘書をゲット?

No.155 旅はトラブル / オランダ・アムステルダム&イングランド・コッツウォルズ訪問ひとり旅2012(4)アムステルダム / ホテルオークラOkura・私設秘書をゲット?

No.152の続きです)

室内の電話をとると、先ほど会話を交わしたショートカットの髪型が似合うホテルフロントの奥田さんからだった。用件は僕が頼んだ延泊の件で、今の料金に一泊3000円だけ上乗せした金額であれば三泊延泊可能との提案をホテルオークラのマネージャーから得たとの連絡だった。

学習塾の仕事をしているが、簡単な暗算でもたまに間違えることもある僕だ。その時の一泊料金に3000円を足す計算を慎重にしてみたが、それでもかなりの割安の料金だった。オランダアムステルダム二泊の後にベルギーブリュッセルに足を伸ばす予定は無くなり、ホテルオークラアムステルダム22階このスイートルームにひとり五泊の贅沢な時と空間を確保した。

延泊をお願いし受話器を置いた後に、室内に取り付けられたスイッチを操作するとカーテンが静かに左右に動き、全面ガラス張りの窓に、昼間の景色が装いを変えて目に飛び込んできた。幾何学的な屋並みは闇の中のいくつかの灯火に変わっていて、夜の初めに広がる朱色の空を、水平に一直線に切り裂くようにして地平線を描いている。

高層階から見る夜景の美しさを、明日からも楽しめるなと微笑みつつ外を眺めていると、遠くの朱色の空はそのままにガラス窓に雨が当たり始めた。見る間に雨は激しくなり、雷鳴が鳴り響き、空に何回か折れた直線のような稲妻が光る。ヨーロッパで初めて出会う土砂降りの様相は美しいものだった。

デジタルカメラは持って来ていたがネット環境は持たず、この時の旅もガラケー一本で、旅行前にオランダのことはろくすっぽ調べていなかった。多くの人と同じようにオランダは「風車とチューリップ」の美しい国との偏見を持ち、多くの美術愛好家が知るようにゴッホ、レンブラント、フェルメールなどの有名画家たちを輩出して彼らの作品を多く鑑賞できる環境であることは既に知識として持ってはいた。

個人的には敬愛するマジシャン、フレッド・カップスを生んだ国として好感を持ち、サッカーワールドカップフランス大会準決勝でのブラジルとの激闘が思い出された。そして、アムステルダムと聞けば多くのヨーロッパ人は「ドラッグと売春」を連想するらしいと言ういささか危ない大人向けの情報は何処で得たものだったか。

長旅の疲れと、ホテルオークラでの五連泊の安心感とが入り混じる熟睡から目覚め、朝食を取りにグランドフロアにある「カメリア」に向かった。昨夜は見かけなかった日本人らしき方たちの姿も見えた。この朝はアメリカンブレックファストをいただいたが、いずれもの皿にも丁寧な仕事が感じられた。

現在のホテルオークラアムステルダムはどうなのだろうか?ヨーロッパの高級ホテルに通常見られる「コンシェルジュ」は、この時のオークラには特におらず、フロントの方達が「コンシェルジュ」を兼ねている様子だった。日本のホテルなので、言葉の問題などがあるのかもしれない。

朝食後、群青色のネクタイ姿でフロントに立つ男性、斎藤さんから色々と情報を得た。アムステルダム国立美術館は改装中だが、レンブラント「夜警」フェルメール「牛乳を注ぐ女」ゴッホ「自画像」をはじめとする有名作品群のほとんどは、特別展示室で鑑賞可能と言うことだった。国立美術館共々ゴッホ美術館もホテルから徒歩圏内だったし、アムステルダムのトラム(路面電車)網はヨーロッパでも有数だと知ったので、4日間の乗り放題チケットを購入した。

「ゴッホ美術館」と「クレラー・ミュラー美術館」は是非訪れたい美術館であった。クレラー・ミュラー美術館までのアクセス方法を知り、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を所蔵するマウリッツハイツ美術館の話をすると、斎藤さんすぐさまネットで検索してくれた。電車で最寄り駅まで約50分かかるが、その時「真珠の耳飾りの少女」は貸し出し中という事で残念だったが、無駄足を運ばずに済んだとも言えた。

この旅の帰国後に、クラシック通の友人永澤くん(No.071)からまたも顰蹙(ひんしゅく)をかう事になるのだが、アムステルダムには「コンセルトヘボウHet Concert Gebow」と言うクラシック音楽の殿堂の一つがある事を知らず、斎藤さんに何処かクラシック音楽を聴けるところはあるのかと尋ねた。斎藤さんは優しく「はい、ございます。小野様の滞在中に席を確保いたしましょうか?」と頼もしい事この上ない返事だ。

コンセルトヘボウ のあるダム広場が市内の中心地にあたり、他の人気のスポットとして「アンネ・フランクの家」や「レンブラントの家」などがある事を初めて知り、アンネの家はかなり混雑すると教えてもらった。

変わったところでは「ミッフィー美術館」が電車で20分ほどの街ユトレヒトにあり、ミッフィーちゃんの信号機も見れるそうだ。ユトレヒトから「クレラー・ミュラー美術館」へのアクセスもあるので、一日を二つの美術館の訪問に充てては如何ですかと、優秀な私設秘書を持った気分になってきた。

恐ろしいくらい事前の準備なしで来ている目の前の一人旅の僕を、斎藤さんは呆れている様子を微塵も見せずに、むしろプロフェッショナルな自分を発揮できる喜びでも感じたか、僕の5日間のアムステルダム滞在を親身になって計画してくれた。出発前に目論んだ「ホテルオークラ」滞在ならば適切な情報を得られるだろうとの計算は見事に当たった訳だ。

ベルギー・ブリュッセルへ足を伸ばす予定は変わったが、アムステルダムでの五日間は、私設秘書の助けもあり大いに楽しめる事間違いなさそうだった。

・・・続く

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