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散歩の急ぎ足が原稿書けない病を解決する/作家の僕がやっている文章術059

取材が済んでいるのに、書けない。
着想が浮かんでいるのに、書けない。
書かなくてはならない要素がたくさんあるのに、書き始められない。

机に向かってキーボードを叩いては消し、また書いては消す。

そんな負のルーティンに入ったときには脱出してしまいましょう。

歩くことです。それも室内をウロウロするのではなく、ドアを開けて表に出かけてしまいましょう。散歩、早足、ウォーキングをするのです。

ただし、小さなメモ帳と筆記具をポケットに入れて出かけます。

国立障害者リハビリテーションセンター研究所と東京大学の共同研究の結果はなかなか興味深いものでした。

ウォーキングで足が着地する衝撃が頭部に伝わり、脳機能の維持や調整につながっているというのです。

脳内の組織液が流動し、神経細胞が生物にとって、都合の良い方向に機能変化するらしいのです。

そういえば認知症の予防にも急ぎ足のウォーキングは推奨されています。

運動による衝撃と脳機能の関係については、これくらいにしましょう。

原稿が気になっていると、ついうつむいて考え事をしながら、ゆっくりと歩きます。散歩のスタートは、それで構わないと思います。

何となく馬鹿らしくなってきたら、しめたものです。

顔を上げて、胸を張って、すこし大股で歩きます。

歩くことに集中できたら、さらに早足で歩きます。

いまの季節(冬)であっても、額にうっすらと汗をかく程度に急ぎ足で歩きます。

すると、私の経験では「あっ!」という瞬間が訪れます。

どう書けばいいか分からなかった原稿の、糸口のようなものを思いつくのです。

ポケットのなかのメモの登場です。
糸口の言葉を、糸口の考えを、足りないなと思われる情報を、ササッと書き留めるのです。

『作家の僕がやっている文章術032/メモは1分で書き留める方が効果的』でお話したように、1分以上のメモは無駄です。

無駄というより、無意味なのです。

1分以上のメモを書いているということは、自分の思考を、つまり考えを書いているわけです。

じつは文章を書く際に、もっとも執筆者をじゃまするものが本人の思考。それも結末があやふやな堂々巡りの思考なのです。

それよりも、第一の糸口を大事にします。

この段階で、書けるなら帰宅してOK。

しかし、もう少し糸口をはっきりさせたいなと不安に思ったら、また散歩再開です。

うつむき加減から、顔を上げて胸を張って、やや早足。
そのうちに汗を少しかくくらいまでスピードを上げます。

書くべきコトへ無意識のうちに集中が高まり、余計な思考が薄らいでいく。いわゆる雑念を消すわけですね。

「あっ!」の第二弾が訪れます。
ぼんやりしていた糸口の輪郭がはっきりしてくる。
あるいはまったく別の糸口が思い浮かぶ。

さっそく1分以内のメモをとります。

この段階で、書けるなら帰宅してOK。

この繰り返しです。

散歩、急ぎ足、ウォーキング、あっ!、1分メモ。

私の経験では30分~1時間、ときに2時間ほど『原稿のための、原稿からの脱出散歩』を続けると、まったく書けない状態から、早く書き出したくて、帰り道がワクワクする状態に変化します。

だまされたつもりで、お試しあれ


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