南アフリカ総選挙③歌って踊る選挙 多数派3党の訴えは Johannes-blog #19
「ヨハネスブログ|Miki's Johannes-blog」です。
南アフリカ・ヨハネスブルクでの暮らしを記録しています。
「南アフリカ総選挙」、きょうは多数派3党の訴えと有権者の声を伝えます。
音楽は必須!南アの遊説行脚
ズン、ズン、ズン、ズン……
足元から響く、低音強めのイケてるクラブ(っぽい)ミュージック。
そして、コール&レスポンス!
この国で初めて選挙の遊説を聞きにいったのは、先月のこと。
「あれ、フェス……!?フェス会場に来た!?!?」
これが、南アフリカの選挙取材の第一印象です。
ステージには、ダンスチームに、ヒップホップのアーティスト。
演説の前後は、ナイスな音楽とダンスで会場を温めるのが南ア流のよう。
また、別の演説会場では、党首もダンス!ダンス!!ダンス!!!
ここでは「選挙と音楽(とダンス)」は切っても切れない関係です。
日本では「候補者が一方的に話す」というのが基本スタイルなので、こんな選挙もあったんだ!?とびっくり。
でも、南ア流の集会は、若者も参加しやすい雰囲気だったし、家族連れも多くて、素直にいいなと思いました◎
南アにはたくさんの政党がありますが、いま国会で議席を多く持っている多数派の3つの党と、それらを支持する人の声を集めました。
「苦境」も……根強い支持集める与党ANC
「ミスターラマポーザ!」「ミスタープレジデント!!」
ラマポーザ大統領が生まれ育った街・ソウェトを訪れると、その姿を一目見ようと、あっという間に人だかりができました。
「苦境」とされる与党ANC(アフリカ民族会議)ですが、大統領の人気はまだまだ健在のよう。
ラマポーザ大統領も、「ANCは私のリーダーシップのもとで、南アフリカ全体をカバーする選挙活動をしてきた。国民はANCに過半数の議席を与えるだろう」と自信をのぞかせます。
かつて初代黒人大統領のマンデラが率いたANCは、ここ30年で初めて議席の過半数を失う公算が高まっています。そんな中、雇用創出や、太陽光発電による電力供給増などの公約で有権者に必死のアピールを続けてきました。
会場近くで、ラマポーザ大統領の顔がプリントされた布を纏っていた男性に話を聞きました。
1994年からずっとANCを支持しているというウォルターさん(59)。
「アパルトヘイトの時代に戻りたくない。戻るのは怖いからANCに投票している」と話しました。
「レストランもトイレも白人と区別され、(黒人が)簡単に逮捕された。一言では言い表せない大変な時代だった。それに比べたら、いまはずっと良い」
同じくANCを支持する女性、ノンタンタさん(47)も、「第一党だから、ずっと支持している。今さら『国の父』は変えられない」とのこと。
最近では汚職などもあるようですが、それについてはどう考えていますか?と投げかけると……。
ノンタンタさんの声が、ちょっと大きくなりました。
「それはANC(内部の)の問題であって、自分たちの問題ではない」
さらに、近くにいたANC支持者の男性も加勢します。
「自分たちが南アフリカのために何をするか、南アフリカをどうやって良くするかが大切だ!」
攻勢強める野党第一党DA
'Enough is enough, we are tired of this!'(もうたくさんだ、私たちはうんざりしている!)
DA(民主同盟)のスティーンハイゼン党首がANCによる汚職や経済政策の失敗を批判すると、会場が歓声に包まれました。
野党第一党のDAは、元々白人の支持者が多い党として知られていて、党首も白人。そのDAが、黒人が多く暮らす地域での集会を開くというので聞きに行ってきたんです。
隣に座っていた男性(60)は、1999年までANCを支持していましたが、その後、DAに投票先を変更。
「最初はANCが良いと思っていた。でも、彼らは自分たちの面倒を見てくれてはいない」と不満を漏らします。
「ANCは家を建ててあげる、仕事をくれると言っていたのに、いまぜんぜんないでしょ?何もしてくれない。約束を破ったんだ」
確かに、南アフリカの失業率は大問題になっていて、AP通信によると2023年10-12月の南アフリカの失業率は32.1%、15-24歳の若者に関して言えば、失業率は59.4%にのぼります。
DAは、この日の集会で、工場を作って雇用を生み出すことなどを約束。水道・電気や郵便など公共サービスの向上や、貧困層への補助金増なども掲げました。
参加したウレさん(38)とピートさん(45)は、「他の政党を支持したことはなくDA一筋」だといいます。ANCについてどう思っているかの聞くと、「『権力』と『腐敗』、それだけだ」と言葉少なでした。
いま伸びている"急進左派"EFF
最近、裁判所を巻き込んで物議を醸した急進左派政党があります。
第二野党のEFF(経済的開放の闘士)です。
なんでも、EFFは「(オランダ系の)白人を殺せ」(!)という歌を繰り返し歌っていて、これがヘイトスピーチにあたるかどうかが裁判で争われていたんです。(ちなみに、司法判断は「ヘイトスピーチには当たらない」)
そんな過激派・EFFのマレマ党首は、「私たちはマンデラのことが好きだけど、マンデラはANCだけを解放し、ANCにだけ仕事を与えた」とANCを批判。失業対策や電力供給の安定、大学教育の無償化などに取り組むと訴えました。
私の大好きな南アフリカ人の友達・ノロさん(33)もEFFの支持者のひとり。「若い党だから、若者の声を代弁してくれる」と、投票することに決めました。
実はいま、EFFがじわじわと支持を広げています。人気を支えるのは、ノロさんのような若い層、特にアパルトヘイト後に生まれた「ボーンフリー世代」の若者です。
2013年に結党してから、最初の選挙でいきなり25議席(得票率6.35%)を獲得して第三党におどり出て、前回の選挙では44議席(得票率10.80%)とさらに躍進しました。
ノロさんも、かつてANCを率いたマンデラ元大統領については「彼は必要な存在だったし、その時代にできる精一杯のことをしてくれたと思う」と評価しています。
一方で、最近のANCの見かたは「残念ながら、力を持ったら貪欲で怠惰になり、居心地が良くなってしまった」と批判的です。
「以前と比べて格差は悪化し、大きくなり続けている。経済成長率もどんどん低下している。仕事もないし、保険医療も良くないし、やることは山積み」
では、EFFは未来を良くしてくれる?と聞いてみると。
「とにかく議会を揺さぶって目を覚まさせることが必要。少なくとも、議会に何をすべきか思い出させるのは、与党じゃなくて野党だから。」
「いまは、政権に対する強力な反対勢力が必要」
積極的なEFF支持というよりは、反ANCの意思表示としての投票です。
さてさて、南アフリカは投票日につき、今日は祝日。
いままさに、投票が続いています。
結果などについても伝えようと思います。
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※最近になって、大使館から「総選挙の実施に伴う注意喚起」が出ました。今後の選挙に関する安全管理については大使館情報もご参考に。