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【企画メシ4期#4】あなたの好きなものを理解したい【編集の企画】

社会人になってから、小難しい本とか、映画とかたくさん見れなくなって、
純粋なエンタメ漫画ばっかり読んでいて、それを自分では隠していた。
インテリだと思われたかったのだ。

だけど、万人が楽しめるエンタメを創作できることは素晴らしいことで、
エンタメは現実がどんな状態であろうと、その人を救える力があるということ。

自分が好きかどうかだけで判断するのって、なんか貧しいな…

そんなことを噛み締めた、企画メシ第4講は編集の企画。
講師は、現在小学館の月刊少女漫画雑誌「Cheese!」編集長を務める、
敏腕編集者の畑中雅美さんだ。

企画メシとは、電通のコピーライターの阿部広太郎さんが主催する企画講座です。詳細はこちら !
CareerHackさんにも、本講座のレポート記事が掲載されています!

人は「嘘の物語」がないと生きていけない

物語は、大きく2つに分かれる。現実直視型の物語と、現実逃避型の物語に分かれる、と畑中さんは言う。
漫画でいうと、
現実直視型の代表は、浅野いにおさんの作品、
現実逃避型の代表は、島耕作シリーズを思い浮かべるとわかりやすい。

畑中さんは旅行中、ギリシャの教会で、聖書が読まれるのを聞いたとき、
聖書は、地球上のあらゆるところで読まれており、地球史上最大の現実逃避の物語だなと気づいた。
その時に、
人は嘘の物語がないと生きていけないのでは、
だったら、私は現実逃避の漫画、より多くの人を救う漫画を作ろう

と思ったそうだ。

誰のこともハッピーにしない物語は、エンタメではない。
逆に、自分は救われなくても、誰かを救っていれば、それはエンタメだ。

目利き

新卒で小学館へ入社し、いきなりCheese!編集部に配属された畑中さん。
作家さんがより多くの人を救う(売れる)作品を生み出すには、編集が作家の鏡でなければいけない。
編集者が作家に信頼されるためには、目利きにならなければ。
そう考えた畑中さんは、読者アンケートの順位と部数を当てられるようにし、確実に当て続けることで、作家の信頼をえたそうだ。

信頼を得るためというより、それ位できなければ、
編集者として、作家さんの責任を取れない、と話していた。

編集者は、自分が作り手でないからこそ、作家のあるべき姿をうつす鏡として、作家を支える。
自分の好みでなく、時代の好みに素直になり、売れる売れないで判断する。
自意識が一番自分を曇らせるという言葉にハッとした。

実際、畑中さんの語ることは説得力があり、
また観点が鋭く。目利きってこういうことなのか!

例えば、
ドラえもんが面白いのは、のび太が毎週サボるところ。
私達の、勉強したくないな~と気持ちを代弁し、代わりにサボってくれるから、ドラえもんは万人に長く愛されている。

少年漫画のヒロインは、ミッションガール。
現実では、男性は女性の気持ちがわからず、
どうしたらよいかわからないことが多い。
少年漫画では、「私を甲子園につれていって」などヒロインからミッションが具体的に課せられるので、どうすればよいかわかり、動ける。

などなど、ドラえもんが面白い理由なんて考えたことなくて、
脳が覚める感覚の連続でした!

目利きできなければ、勝負

また、過去の経験から類推できないけれども、
全く新しく、面白い作品というものもの時にある。
そのような目利きできない場合には、とりあえず出してみるそうだ。

より多種多様な人を救うべく、様々な物語を作り続けられる環境を維持するためには、ある程度の予算の余裕が必要だ。
売上が立っていないと、確実に売れる作品だけが残り、
検証ができず、可能性の芽を潰すことになる。
そのために、2000万~3000万の赤字くらい痛くない状態にしておくことが、
編集長の役目だと仰っていた。

全体の幸せの総量を増やすにはどうしたら良いか、を考えている方だなと思う。

課題

今回の課題はこちら。

漫画「虹、甘えてよ。」の宣伝プランを考えてください。

「虹、甘えてよ。」は青木琴美さんがCheese!で連載中の漫画である。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09139688

青木琴美さんといえば、「僕は妹に恋をする」が高校で流行っていて、
私も夢中で読んだ。
ちょっとエロい内容に、非常にドキドキしたことを覚えている。

最近は少女漫画を読んでおらず、"虹甘"も未読だつた。
今回読んで、まず思ったのが今っぽい!ということ。
人間関係をこんな風に描くんだ、という繊細さに驚き
そしてぎこちない恋にどきどきした…

僕妹から15年以上も経って、ヒットを出し続けて、いつまでも今っぽい感覚を持ち続けられるのはどうしてなんだろう?

なので、宣伝プラントしては、青木さんの仕事論のインタビュー記事を載せるというもの。
青木琴美のことをちょっとエッチな漫画を書く人、と思っている20代の仕事頑張っている層に、
イメージをアップデートする様なアプローチが良いのではないか。
この層はオンライン書店などからすぐに購買するイメージも湧く。

という訳で、私が考えたのは、Oggi、美的などのちょっとキレイめな女性誌に、青木さんの仕事論のインタビュー記事を載せるというもの。

作品そのものをアピールするわけではないプランであり、
アーティストは得てして、作成時の苦労などは話したがらないものだが…
(私はぜひ読んでみたい!知りたい!)

また、畑中さんは全員の課題を見ながら、「この作品、ちょっと難しくなりすぎているのかもしれないな…」とつぶやいていて。
どんなことからも、作品がどう読まれているか、どう受け取られているかを常に考えているのが、本当にプロの編集者だなと感じた。

振り返って

私はスポーツ観戦に夢中になる人や、エンタメでもド定番のコンテンツ、
お決まりのパターンに当てはまるコンテンツをバカにしてきたけれど、
それはひとえに私が環境に恵まれ、挫折や失敗を知らなかっただけであり。

これからも、私の好みは変わらないけれど、自分がマスではないこと、
「本当に頑張ったことがある人/現実が辛い人には刺さる」というケースを忘れずにいたい。

もし自分の好みとあなたの好みが合わなかったとしても、
そこには世の中の流れのヒントがあるかもしれないし、
相手を理解するヒントもあるはずだ。

あとは、畑中さんの話術が圧倒的だった。とにかく話の飛距離が長い。
最初はどんな話になるのかわからなくてつい引き込まれてしまうが、
最終的に「目利き」のような話に落ち着いていく。
あてもなくふわふわと飛んでいるようで、そうではなくて、しかも面白くて。とっても憧れた!

最後までお読みいただきありがとうございます。
自分の振り返りのために、少しずつ講義メモを更新しています。
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#2 数は洗練を産む。ただし思考の痕跡を残した時だけ。【観察の企画】
#3 心がつい動いてしまう熱量に触れた日【観光の企画】
#4 あなたの好きなものを理解したい【編集の企画】
#5 人間には誤読の自由がある【コンテクストの企画】
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どの講師の方も素敵です!