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コレモ日本語アルカ??異人のことばが生まれるとき

「私これ食べたいアルネ」
この言葉を見て、または聞いて、何人だと思うだろうか。
ほとんどの日本人は「中国人が話している」と答えるだろう。
なぜ、この話し方が中国人だと思うか、考えてみたことはあるだろうか。

この本は、その「なぜそれが中国人が話していると思うのか」という根拠を様々な文献を元に論じていく。


役割語とピジンとクレオール

本書では、「役割語」「ピジン」「クレオール」の視点から詳しくみていく。
この3つの意味はなんなのか、というのは本を読んで欲しいのだが…。

簡単に説明すると
役割語は、漫画や映画などで、その役割に沿った語尾や語彙を使用することである。
例えば、おじいさんが「わしは疲れたぞよ」とか「わしゃもう耳が聞こえんでのう」とか言った場合などである。
その文面を読んだり、聞いたりしただけで、「おじいさん」という役割が分かる。

ピジンは、環境的に二つの言語が混じりあってできた、どちらの言語とも言えない言語である。
イメージとしては、ルー大柴がイメージしやすいと思う。
植民地となった場所や、国境の近くなどで見られるだろう。

クレオールは、そのピジンを母語として育った子供たちが使っている言語だ。

実は私は大学での主専攻が、日本語・日本語教育で、このピジンとクレオールも既習内容だった。
惹かれるものは何年経っても同じ、ということなのか、図書館でぐっと引き込まれて借りた。

中国人と日本人

かなり昔から中国と日本、そして中国人と日本人は切っても切れない関係にある。
言語も文化も何もかも、お互いに影響し合っている。

「満州ピジン」の章はとても興味深く、勉強になった。
私がイメージしていた日本語と中国語のピジンは、銀魂の神楽が話すような、日本語ベースのピジンだった。
が、満州ピジンは逆で、中国語ベースのピジンであった。
それを、当時満州に住んでいた日本人小学生の書いた作文集を元に考察している。
それがまたリアルで面白い。
この作文集は、後日また改めて読みたい。

漫画からも考察

お堅い論文調で書かれると思いきや、本の後半には、漫画に出て来るピジンらしきものも考察している。
らんま1/2や、銀魂などなど、現代まで網羅していたので驚きだ。
幅広く調査してこの1冊にぎゅっとまとめたのが良く分かる。

しかも、日本人がイメージしている中国人像の変化も考察している。

久しぶりの論文っぽい本

院生時代は、こんなような本ばかり読んでいたが、社会人になって5年も経つと自然と離れてしまう。
しかし、今回久しぶりに読んで、意外と面白かった。
しっかり調査をして、根拠を元に論じているので、答えが得られるようで、読み終わった後の達成感もある。

ん~また院生に戻りたくなる(戻らない)。

金水敏(2014)『コレモ日本語アルカ?異人のことばが生まれるとき』

#ピジン #クレオール #言語学 #中国語 #日本語 #横浜ことば #読書感想文 #金水敏

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