マガジンのカバー画像

小説特殊慰安施設協会

65
運営しているクリエイター

2020年10月の記事一覧

小説特殊慰安施設協会#17/横浜税関ビルGHQ本部

夕方。宮沢理事長と林穣の二人が意気揚々と事務所に戻ってきた。 「仕事を中断して、全員二階…

勝鬨美樹
3年前
5

小説特殊慰安施設協会#16/横浜税関ビルGHQ本部

5日前の8月30日。日本は連合軍の進駐を受け入れていた。 その日、未明。アメリカ第8軍が横浜…

勝鬨美樹
3年前
2

小説特殊慰安施設協会#15/1-3特殊慰安施設協会

理事と別れると、ヤミ市は、そのまま松田が案内してくれた。 店を出している人たち全員が松田…

勝鬨美樹
3年前
2

小説特殊慰安施設協会#14/1-3特殊慰安施設協会

汐留川を蓬莱橋から渡って、汐留の操車場の横を抜けて第一国道を渡ると、外食券食堂の前に出来…

勝鬨美樹
3年前
2

小説特殊慰安施設協会#13/1-3特殊慰安施設協会

土日と降り続いた雨も日曜の早朝には上がった。雲一つない晴天になった。気温も20度少し上回る…

勝鬨美樹
3年前

小説特殊慰安施設協会#12/1-3特殊慰安施設協会

はじめ、協会役員は林穣の事業計画書に眉をひそめた。警察が望んでいるのはただの売春宿の経営…

勝鬨美樹
3年前
4

小説特殊慰安施設協会#11/1-3特殊慰安施設協会

1945年8月15日正午、昭和天皇自らの手による終戦宣言後。鈴木貫太郎内閣は即時解散。17日に、皇室から東久邇宮王が選ばれて、皇族による内閣が組成された。東久邇宮は当時57歳。フランス留学経験の長いリベラルな皇室である。在仏時代には画家を目指しマネに師事したこともある自由な気風を持つ方だった。彼は始め内閣就任を固辞した。あまりにも大任である。敗戦処理には大きく国体護持の問題が絡まる。そのために、どうしても皇族の手による政府が必要だ。 ならば政治経験が長い近衛文麿が適任であ

小説特殊慰安施設協会#10/1-2 銀座一ノ七

千鶴子が「残りは明日でいいよ。お疲れさん。」と林穣に声をかけられたのは夜9時を少し回った…

勝鬨美樹
3年前

小説特殊慰安施設協会#09/1-2 銀座一ノ七

昨夜遅く、宮沢理事長を慰安部長の高松が訪ねたのは、その件の報告と娼妓の員数確保の方法につ…

勝鬨美樹
3年前
1

小説特殊慰安施設協会#08/1-2 銀座一ノ七

小町園には英語できちんと対応できるものが誰もいなかった。唯一、ロサンゼルスで女給をやって…

勝鬨美樹
3年前
6

小説特殊慰安施設協会#07/1-2 銀座一ノ七

翌朝は朝から雨だった。 出がけに、小美世は黒塗りの蛇の目傘を千鶴子に手渡した。 「ごめん…

勝鬨美樹
3年前
5

小説特殊慰安施設協会#06/1-2 銀座一ノ七

慰安部の高松八百吉とキャバレー部の林穣はそのころ既に犬猿の仲になっていた。小太りで鷹揚な…

勝鬨美樹
3年前
2

小説特殊慰安施設協会#05/1-2 銀座一ノ七

二人は談笑しながら、うなめ橋からみゆき通りへ曲がって松坂屋の横から中央通りに入った。松坂…

勝鬨美樹
3年前

小説特殊慰安施設協会#04/1-1 焼け跡から飛び立つ

 そのとき玄関から声がした。 「干物と蜆、買ってきたぜ。」ゲンだった。 小ぎれいな国民服とゲートル姿に帽子を被っていた。 「お帰り。よく買えたね、ゲン。ほら千鶴子さんだよ。ご挨拶し。」小美世が言った。 「あ」ゲンは両手に干物と蜆を入れた袋を持ったまま棒立ちになった。「千鶴子さん。」 「おや、よく憶えてたね。萬田先生とこのお嬢さんだよ。」 「萬田先生んとこ・・」 「ん。燃えちゃったからね、チヅさんは今日からウチで暮らすからね。」 「ご迷惑をおかけします。」 千鶴子が