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『度胸星 続編もどき』_第18話「火星に残るのは・・・」


scene_無情なくじ運

離陸を翌々日に控えたこの日、ERVの定員オーバーを解消するため、火星に残る一人が誰になるかくじを引いて決めることにしていた。

ブロンソン「・・・仕方がない。本意ではないが、誰かが残らなくちゃならない。」
「ここに火星の小石が5つある。そのうちのひとつには赤い印がある。」
「この箱に入れるから、一人ずつ引いてくれないか。私は残ったひとつを選ぶ・・・」

とても重苦しい空気が船内を流れる。

筑前「ブロンソンさん、ありがとう。嫌な役回りだったよな・・・」
「みんな、潔くくじを引こうぜ。俺から行くぞ。」
そう言って箱から小石を取り出す筑前。

武田、茶々、度胸の順で小石を取り出していく。
みんな手のひらに小石は収めたままで、ブロンソンが残りの小石を取り出すのを待つ。

筑前「じゃあみんな一緒に確認しようか。」
手のひらをそっと開いて小石を見る。
裏側も見るが印はない。小さくホッとした表情をみせる。

武田、茶々、ブロンソンがそれぞれ自分の小石に印がないことを確認している。
ただ一人、度胸だけが手のひらを開いたあと、固まっている。

度胸「・・・俺がここに残るよ・・・」
顔を上げて決心したように小さく、だがしっかりとつぶやく度胸。

残る四人は複雑な表情で度胸の顔をみつめている。

度胸「俺は大丈夫だ・・・むしろ誰かを残していくほうが、トラッカーとしての俺のポリシーに反するよ。」

scene_度胸と筑前の会話

次の日、探査データの保存やらサンプルの仕分けやらERVの点検やらで忙しく働くクルーだった。
度胸は一人その輪を離れ、火星の風景を眺めている。

すると、それに気づいた筑前が近づいてきて、声をかける。
筑前「度胸ちゃん・・・死ぬなよ。」

度胸「筑前、俺のことなら大丈夫だよ。」
「それに、スキアパレッリの生命維持システムはまだ3年以上もつんだ。」
「どこかの国が助けに来てくれることを諦めたわけじゃないよ。」

筑前「俺が金を集めて、中国でもインドでも可能性がある国から救出船を飛ばすからな。」
「希望を捨てるなよ。」

度胸「・・・あぁ、ありがとう。それよりも筑前に頼みたいことがある。」

筑前「なんだ?」

度胸「・・・俺から言うことじゃないんだろうが・・・」

まっすぐ目を見て言葉を続ける。
度胸「・・・市原さんを幸せにしてくれ。」

その言葉に驚く筑前。
だが、意を汲んだようにすぐに真顔になり、答える。
筑前「もちろんだ! 任せとけよ。」

その様子を遠くで武田がみつめている。

scene_ERV離陸準備とテセラックの来襲

離陸当日、いよいよERVの離陸に向けた最終調整が始まる。

ブロンソン「M1とのランデブー位置はすでにコンピュータに入力してある。」
「離陸準備だ。」「全員持ち場につき、空力翼の動作確認や各種システムの点検を行ってくれ。」

ブロンソン、筑前、茶々、武田の四人は宇宙服を着用してERVに乗り込み、度胸は重力装置を取りつけたローバーの自動操縦プログラムをノートパソコン上で確認している。

度胸(無線)「みんな準備はいいな。それじゃローバーを走らせるぞ!」
そう言うと、ノートパソコンで重力装置の起動、ローバーの低速発進を同時に行う。

そのまま、まっすぐに走り始めるローバー。
砂煙を上げながら地平線に向かって進んでいく。

すると、地平線からまっすぐローバーに向かったテセラックが進んでくるのが見える。
そしてローバーと交わったかと思った瞬間、度胸のすぐ近くに瞬間移動する。
現れた瞬間、ローバーはERVに向かってまっすぐ進んでいく(テセラック内で進む方向が逆になっている)。

度胸「アァーッ! 待て、そっちに行くな!」

度胸は駆け出し、低速で進むローバーの前方に回り、両手でローバーを押し戻そうとする。
しかし、じりじりと押され、度胸の足は砂地の上をすべっていく。

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