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サワードウパンの材料 ミニマリズムの美学

第1回目の投稿でも書きましたが、私がサワードウにグッときてしまう一番の理由は材料のミニマルさ。小麦粉、水、塩。この3つだけ。スターターだってもとはと言えば小麦粉と水から起こしているわけですから、本当にこの3つだけなのです。この3つのなかで味やテクスチャーを大きく左右するのが小麦粉。今回は、これまで私が使ったことのあるいくつかのタイプの粉について解説していきます。

準強力粉(中力粉)
通常のパン作りで使われている強力粉よりグルテンの含有量が低いのがこの準強力粉です。クラストがパリッとしたフランスパンやハード系パンに適した粉だと言われています。ただ、これだけだとつまらないので、この準強力粉7割ほどをベースに、ライ麦粉、全粒粉、スペルト小麦などとブレンドしてバリエーションを楽しんでいます。

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スペルト小麦
古代種の小麦で、品種改良がほとんど行われずに現在に至っている品種。欧州では9000年以上前から栽培されていたとか。このスペルト小麦を使うとなんとも言えないもちもちした食感に仕上がるので、私は必ず15%程度ブレンドしています。水馴染みがよく生地がかなりやわらかくなるので、水の分量は通常より少し控えた方が扱いやすいです。一方で、スペルト小麦を使うと膨らみ方が非常によいと感じています。生地に入れた切れ目からシャープに立ち上がる「イヤー」もよく発生してくれます。

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この、タンタンの前髪みたいにピンと立ち上がっているのが「イヤー」です。これが出たらガッツポーズものです(笑)

全粒粉
小麦を皮や胚芽ごと挽いた粉。ビタミン、ミネラル、繊維等がたっぷり含まれていて、白い強力粉にブレンドすると風味と味わいも格段に増します。一方でその分グルテンの含有量は白い粉より低いため、たくさん混ぜると膨らみにくくなります。

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ライ麦粉
ライ麦は小麦とは別の品種。ライ麦粉を使うと香りや味わいが大きく変わります。色は茶色というよりグレー。そして水を思いっきり吸い込むため、生地がドライな感じになります。スペルトと逆の方向性ですね。また、グルテンがほとんど含まれていないため、粘りもほとんどなし。ライ麦粉のブレンド率が高いと全然膨らまないこともあります。でも、その密度とずっしり感こそがライ麦パン。インスタグラムで世界のサワードウベイカーたちの”作品”を閲覧していると真っ黒い溶岩石のような100%ライ麦パンを度々みかけるので、それはそれでひとつのジャンルなのだということがわかります。日本でいう十割蕎麦みたいなことなんじゃないかな、多分。いずれ挑戦したい分野ではあります。

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ちなみにスターターにもこのライ麦粉が使われることが多いです。私の場合は強力粉2、ライ麦粉1の割合でスターターをフィードしています。

グラハム粉
全粒粉の一種。つぶつぶがわかるほどの粗挽きで、パンにポリポリとした食感を加えてくれます。以前ホームベーカリーで食パンを焼いていた時によく使っていました。ただ、サワードウパンに加えてみてもいまいちそのポリポリ感が感じられません。長時間発酵中に水分を吸い込んで生地に馴染んでしまうからなのでしょうか。

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ブレンドについて
上記の粉をどういう配合でブレンドするかが個性の見せ所。味わい、膨らみ方、風味などのスイートスポットを自分なりに見つけていくのも楽しい作業です。ちなみに私のスイートスポットはだいたいこの配合。

- 強力粉 70%
- スペルト粉15%
- 全粒粉、またはライ麦粉15%

この配合だと成功率が高いです。もっと冒険して全粒粉やライ麦粉の割合を高めるとか、究極のもっちり感を求めてスペルト粉をどっさり入れるとか、発展のさせ方は無限大です。

水は塩素を取り除いて
夢想に近い理想を言えば、山に湧き出る岩清水でも使ってあげたらサワードウ君たちにも喜んでいただけるとは思うのですが、そこまでいかずともせめて浄水フィルターを通して塩素を取り除いた水を使ってあげるのがよいかと思います。塩素の殺菌力は天然酵母にも影響してしまいます。

塩は天然塩
3つしかない素材のうちの1つなので、できれば美味しい塩を使いたい、という理由で私は天然塩を使っています。岩塩でも、海の塩でもお好みで。

以上、サワードウパンの材料についての解説でした。ミニマルなのに、配合によってバリエーションは無限大。自分の黄金比を見つけるのもサワー道(笑)の楽しさだと思います。

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