中国留学記|留学初日に価値観をぐちゃぐちゃにされた話 @東京&北京
入国審査で発音を直されたあの日、同じ場所で、私はもうひとつ忘れられない経験をしました。
▼発音を直された話はコチラ
「中国ってとんでもねえ国だな、と思った」というエピソード。
ちなみに今回は真逆のお話です。ぜひ前回の記事を読んでからこちらにお戻りください。
@東京
2011年9月某日、私は約半年間の中国留学に向けて成田空港に行くため、母と一緒に大荷物を転がしていました。重さは30kg超。初めての長期海外、しかも行き先は未踏の地、中国 北京。しかも後半は真冬。
大量の冬服、衛生用品、勉強道具が詰め込まれたスーツケースはパンパンで、ちょっとの段差も乗り越えられないくらいの重量。
(後で空港で計ったら35kgもありました。 ※超過料金払った)
実家の最寄り駅から電車で成田に向かいます。
2時間強の道中には電車の乗り降りや階段がたくさん。その度に母と二人、必死に荷物を持ち上げて乗り越えていました。
乗り換えるたびに手のひらにマメができました。
ラスボスは最後の特急。
これに乗ればもう座ってるだけ!なんて余裕に思っていましたが、座るまでが長くて長くて!
車両の真ん中にあるスーツケースを置いておけるスペースに向かうと、転がり防止のためなのか、高さ10cmほどの高さの金属の柵が。
空港までな時間をまったり過ごすためには、スーツケースにその柵を乗り越えさせなければいけません。
たかが10cm、されど10cm。
ここまでに体力を使い果たした私たちにはとてもとても高い壁でした。
ふんぬーーーーーーーっと力を入れて少しずつ持ち上げます。
まずスーツケースを横にして
先端部分を柵に載せて
ゆっくり押し込んでいきます。
多分1,2駅分は格闘しました。
そして当然、降りるときもこれをやります。
しかも逆方向。
車輪を手前側に置いてしまったから、これが引っかからないように持ち上げて柵に載せるのがもう!!
どんどん真っ赤になっていく掌を見ながら
もういいや置いて行ってしまおうと何度も思いました。
やっと柵から出せても今度は降車が待ち受けます。
女二人、ゼーゼー言いながらやっとのことで成田空港のホームに辿り着きました。
@北京
やっとの思いで成田にたどり着いてから7時間後くらい。
私は北京首都国際空港のバスターミナルで、大学方面に向かうバスを待っていました。
一緒にいるのは迎えに来てくれたフランス語学科の学生(日本語ゼロ)。細身のきれいなお姉さんでした。
二人の傍らにはもちろん35kgのスーツケースも控えています。
初めて降り立った中国。
さっきの税関での衝撃を引きずりながら、私は荷物のことを考えていました。
さて、どうやって35kgの巨大スーツケースを載せようか。
このお姉さんにコイツを持ち上げる力はきっとない。だからといって助けを呼ぶ語学力は私にはないし、お姉さんがどう立ち回ってくれるのかも分からない。
さっきの税関での感じがこの国の国民性だとしたら、最悪の場合私はこの荷物を置いていかなければいけない(かもしれない)。
解決策を思いつかないまま、バスがゆっくりと登場。
ターミナルの誘導員のおじさんたちが集まってきて何かを叫びながら色んな方向に手招きしています。
初めて聞く「街中の中国語」。
「○×#△%◆⦿□@!?!?!?!?!?!」
「○×#△%◆⦿□@!!!!!!!!!!!」
怒ってるようにしか聞こえなくて、
やっぱりとんでもねえ国だし
こんな言語を話せるようになるとは到底思えないと諦めかけました。
ひとつも聞き取れない言語を話す人がどんどん集まって来て、大きな荷物をバスの荷台に乗せ始めます。
順番も何もないその群れに驚きながらも、私もそれに加わりました。
すると。
ひとりのおじさんが私に向かって声を張り上げました。
「+#$&%*???」
んーー!分からん分からん分からん!!!
無理無理無理!!
泣きそうになりながら首をかしげて
中国語は分からないと英語で伝えます。
おじさんは英語が分からなかったのか
もう一度声を張り上げながら
私の荷物を指さして
「重い~~~><」のジェスチャー。
そしておじさん自身を指さします。
えっ
載せてくれるの?それとも持って行かれる(盗られる)の?
あたふたしていたらおじさんが私の激重スーツケースに手をかけました。
いやいや待って待って!と日本語で言ったけど通じるわけもなく。
おじさんが持ち上げようとしたものの、想像以上の重量級だったのか微動だにしませんでした。
するとバスに乗ろうとしていた男の人たちが戻ってきて、私のスーツケースはあっという間に角刈りの男性たちに囲まれました。
呆気にとられていると「どれ貸してみろ」そんな感じで男たちが何人かで持ち上げて、「うわ重っ」みたいなことを言いながら(多分ね)あっという間に荷台に収納してくれました。
「ふう~~~っ」
「重かったな!」
そんな感じでバスに乗り込もうとする角刈りメンズ。
ぽかんと突っ立っている私。
最初のおじさんと目が合いました。
お礼を言わなきゃ。
「て、てんきゅー」
数分前の教訓生かせず、口をついたのは英語。
そんなもんです。
中国に降り立ってたった30分。
色々な価値観をぐちゃぐちゃにされる濃厚な30分。
世界中で良い国だと褒められる日本ではだーれも手伝ってくれませんでした。
その日本ではあまりいいイメージを持たれていない中国に来たら、余るほどの人が言葉の通じないちんちくりんを助けてくれました。
みんな飛行機から降りたばかりでクタクタなはずなのに。
良い国ってなんだろう。
バスの中ではそればかり考えていました。
これからどんな毎日が待っているんだろう。
次に空港にくるときにはどんな自分になっているんだろう。
ドキドキワクワク、アンビリバボーな北京生活、スタート。
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