マガジンのカバー画像

250文字の短編小説

8
運営しているクリエイター

記事一覧

本音

本音

2週間かけて
ゆっくりゆっくり心に蓋をして
ネガティブな感情を抑え込んで
やっと前向きに考えられるようになったのに。

他人が無意識に私の蓋を
こじ開けてくるのは一体全体どうしてなの。

会いたくないの?

会いたいに決まってるじゃん?

本音を言ったら溢れてしまうから
溢れたら収拾つかないことを知っているから
1人じゃ抱えてられないから

だから本音だけは隠して
1人で立てるように頑張ってたんだ

もっとみる
はじまりとおわり

はじまりとおわり

あたりまえの日常が
あたりまえじゃなくなる時は
いつも突然。

あたりまえじゃなくなった時
初めてもっとあたりまえの日常を
大事にすればよかったと
嘆き悔やみ後悔する。

これからはあたりまえの日常を
ちゃんと噛み締めて生きようと決めたとしても
繰り返される日々に甘えて
また同じことを繰り返してしまう。

いつになったら学習するのだろうか。
もう二度と今の惨めな思いはしたくない。

これで最後にし

もっとみる
雪

「初雪だ。まさか君と見るのが今年初だなんて。」

「人生何があるか分かりませんね。」

少しの沈黙。
余計なことを喋ってしまった後悔。
甘ったるい香水の匂いが
今になって車内に充満する。

あ。香水のチョイス間違えちゃったな。

「ここまでで大丈夫です。ありがとうございます。」

「気をつけて帰ってね。おやすみ。」

緊張から解放したとともに
子どもっぽくなかったかなと
今までの数時間を振り返って

もっとみる
雨の日

雨の日

雨が降る前の土の匂いが好き。
草木の匂いも好き。

雨の降り始めの匂いって何て言うか知ってる?
「ペトリコール」っていって
ギリシャ語で「石のエッセンス」を意味するんだよ。

そう教えてもらってから
雨の日もなんだか悪くないなって思ったよ。
むしろ雨の日がちょっと好きになった。

でも雨が上がった匂いは嫌い。

だって雨が上がったら
またどこかに行っちゃうでしょ。
また1人でふらっと
私の前からい

もっとみる
(春夏秋)冬

(春夏秋)冬

嫌いなものが一緒だったらよかったのに



今思えば、私たちが好きなものはごく一部だけだった

サッカーが好きな君
野球が好きな私

辛い物が好きだった君
甘いものが好きだった私

ゲームが好きだった君
本が好きだった私

似ているようで似ていなかった私たち

夏の違和感はきっとこれだった

交わることのなかった私たちは1つの共通点だけで交わっていた

垂直だった2つの線は季節を移ろう中で

もっとみる
(春夏)秋(冬)

(春夏)秋(冬)

君と連絡が取れなくなった



2か月ぶりの学校

君とは授業が変わってなかなか会えなくなった

「またね」がなかった理由を考え続けても

答えには辿り着くことができないままでいた

また会うときに直接聞けばいいか

そんな暢気なことを考えていたのは多分私だけ

君はもう私と会う気はなかったんだね

あのデートも最初で最後だったんだね

あんなに浮かれてた私

馬鹿みたいじゃん

気づけばLIN

もっとみる

(春)夏(秋冬)

デートしよっか

君のそのひとことに一喜一憂していた私



その日はとてもとても暑い1日だった

そして夕方から大雨にも見舞われた

大好きな街に大好きな君と初めて出かけた

友達とみる景色も、君と見ると少し輝いて見えた

普段は入らないお店に入って、試着してみたり

行列のお店に並んで、お団子をシェアしたり

どっちが上手に写真を撮れるか競ってみたり

全部が全部特別な1日だった

でも君の

もっとみる
春(夏秋冬)

春(夏秋冬)

俺もこのアーティスト好きだよ

なんてきっかけは些細なことで、私たちは出会った



好きなものが同じだった私たち

すぐに意気投合したんだ

それからというもの毎日のようにLINE、電話

LINEでもチャットを送りあっているのに他のSNSでもDMでやりとりして

お互いの気持ちに気づいていながらも少し様子を窺うように

片思いという肩書を楽しんでいた

楽しい毎日を過ごしてたにも関わらず、そ

もっとみる