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Book Review『本を出したい』~これはもはや「唯一性分析本」!

ライター・コラムニストの佐藤友美(通称・さとゆみ)さん。さとゆみさんが主宰する「東京道場」と銘打たれたゼミを受講し、烏滸がましくも、私も教え子の仲間入りをさせていただきました。

そんな師匠が、先日の最新の著書を出版。

その名も、「本を出したい」。

――タイトルだけを見たら「自分には関係ない」と感じる人、少なくないと思う。けれど、それを理由にここで離脱したら、きっと損します。

確かに、「本を出したい」人にとっては、そのための着眼点やHowToを惜しみなく(いや、むしろ”駄々洩れ”レベル)さらけ出してくれているノウハウ本。

でも、この本、それだけじゃない。

「自己分析本」と表現してもまだまだ足りない、自らの「唯一性分析本」だと思います。


幼い頃、人の死についてしばしば考えた。大切な人々と物質的に触れ合えない寂しさ、体そのものがこの世からなくなる心許なさ。それらはもちろん切ないのだけれど、何より私を戸惑わせたのは「言い残した言葉たちはどうなるの?」「亡くなる直前まで考えていたことが、死の瞬間に断絶されたら、その向こうにあるはずの答えはどうなるの?」という疑問だった。

今、公私を問わず息するように書き続けているのは、結局この思いが根っこにあるからなのだと思う。自分の内にあるものを出し切りたい。伝え残して後悔したくない。生きた証を「文章」という形で残したい。

そうして物を書くはしくれとして生きる今。ふとした時に「どんな未来を見据えようか」と考えるたびに、答えが出ない問いがある。

それが、「私は本を出したい?」

――声がかかるようなことがあれば、きっと「喜んで!」と答えるとは思う。けれど、自ら扉をこじ開けてがんばるほどの熱意があるかというと、かなり微妙だ。

「死ぬ前に伝えきりたい」「生きた証を残したい」という思いに対して、本という形態は一つの解になり得る。けれど、「本じゃなくてはいけないのか?」は正直わからない。

「本というものにこだわりがない」からなのか、「実は出したいけれど逃げているだけ」なのか。「そこまでの強みやコンテンツが見い出せていないから諦めている」のか。それもまた、わからない。

これらが、なぜわからないのか?――「本を出したい」を読んで、その理由が分かりました。

結局私は、”私の唯一性”を、圧倒的にわかっていないからだ!

この本が私に差し出してくれたものは、「自分が自信と喜びをもって手を差し伸べられるステージを探すための方法」

戦うのではなく、市場に迎合するのとも違う。ましてやWILLよりCANを前面に出して生きるのが現実的だよ、という話でもない。

今の私がどういう人間で、何をもっていて、誰の力になれるのか。あのすごい人にはなくて、私にはあるものは何か?――それらを問い直し、分解するための視点。これまでないがしろにしてきた部分を輝かせるような視座。ページを繰るごとに、新しいヒントを手渡してくれたのが、この本。

さとゆみさんも、「本を出すのは『手段』だ」とおっしゃっていますが、まさにその通り。

「自分が一番活きるのはどこか?活かせる強みやノウハウはどれか?」
「死ぬ前に、”これだけは伝えないと後悔すること”は何なのか?」

これさえ分かっていれば、本を出さなくてもきっと豊かに、満足に生きられる。

そして、(かなり極端な私流の解釈かもしれないけれど)これがわかっていないと、きっと価値ある本は出せないし、本を出す意味は半減する。電子書籍など、自力で気軽に出版できる今の時代は、なおさら。

「本を出したい」を読んでおきながら、最終的に矛盾するようなことを言うけれど。読了した今思うのは「本を出せたかどうかで、私の価値を測るのはやめよう」ということ。

インスタントに記念碑的な一冊を残しても、ちっともうれしくない。まずはちゃんと生きて、自分の唯一性を見極める。本書を片手に見つめていけば「それにきっと辿り着ける」と思えることも、とてもうれしい。

その結果として、私の未来に「私の著書」があるとしたら。ようやく初めて、胸を張って差し出せるはずだから。

<おまけ>

――こちらの本、全309ページですが。最後の6ページに収録された「おわりに」が、まるでコーヒーカップに乗せられたかのようです。明るく朗らかにノウハウや視点を与えてくれた最後。ものすごいドラマが詰まっていて、心が、もうどうしようもなくかき回されます。

エピローグって顔つきのくせに、私はここが本題だと思ってる。あ、でも最初に読まないで、ぜひ最後のお楽しみにしてくださいね。

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矢島 美穂|本の言うことを聞くライター
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