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NYで美容雑誌がリアル店舗になった!これからの店舗の在り方IRL ("in real life")

NYの街に完全に活気が戻ってきたと同時に、コンデナスト傘下のビューティーマガジンAllure(アル―ア)が、Sohoに世界で初めてのリアル店舗を7月1日にOpenした。

「リアル雑誌がリアル店舗になる!」という事で、早速どんなお店か訪れてみたのだが、新しい店舗の在り方の見本となりそうなお店だったので、その凄さをレポートしたい。

米国ではIRL shopping experience ("in real life" =リアルなショッピング体験)と表現されている。 

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Allure店舗は、NYのShoppingエリアであるSOHOに位置し、お洒落なブティックのような雰囲気を漂わせた外観。

雑誌を読むように編集者に導かれてお買い物が出来る

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中に入ると、まず目に付いたのがアルミ板のPOP。ここには、それぞれAllureのビューティーライターが書いたメッセージが、雑誌のタイトルさながらに表示してあり、メッセージに合わせた様々なブランドの商品がキュレーションされて展示してあった。

この写真(下)は、「コーヒー豆から抽出されたカフェインを使ったクリームで、目の熊に効果てきめん」と書いてあり、商品直下のipadのページにはキュレーションされている商品のみが表示されている。

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下記写真は、Allureの読者にも非常に人気が高いコンテンツであるBest of Beautyで集められた展示と、そのテーブルに置かれているipadの画面。マガジン(紙媒体+オンライン)コンテンツと店舗コンテンツが完全に一致しているのだ。これだけだと、日本の@アットコスメと何が違うの?と思った方は、更に読み進めていただきたい。

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雑誌社が購買データを持つことで好循環なビジネスモデルへ

気に入った商品があれば、詳細を確認する方法は3つある。
①ipadの画面上をクリック
②商品と共に置いてあるPOPのQRを読む
③試す

まずは、①の「ipadの画面をクリック」から説明する。
ipad上の商品をクリックすると、商品ページへ遷移する。
商品ページは既存のAllureのオンラインストアへの遷移ではなく、Allure店舗用に作られたプラットフォームへ遷移し、そこから商品の原料や使用方法などが確認できる。

商品詳細ページには、大きなQRコードと共に「Buy Now(今すぐ購入する)」という記載がされてあり、自分の携帯でQRを読み取り購入手続きを進めるというジャーニーが設計されていた。

Allure店舗に特化したプラットフォームが何故わざわざ用意されていたかというと、チェックアウトまでAllure上で完了できてAllure(雑誌社)が顧客の購買データまで持つことが出来る。それにより、リアルに購買に繋がるコンテンツや商品は何か?までデータで分かるようになり、本業の雑誌コンテンツにまで活かすことができる、いわゆる循環型のモデルとなっている。

また、店舗内在庫と連動している事で、この店舗をマイクロ倉庫化して、今米国でトレンドとなりつつあるブランド店舗の在庫からUberやPost mateで商品を注文当日2~3時間後にお届けできるオンデマンド配送も可能だ。

既存のAllureオンラインストアだと、商品購入は各ブランドページ、もしくはアマゾンの様なマーケットプレイス、そして勿論在庫の連動も不可である。

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インフルエンサーコンテンツを店舗でも活用

次に、②番目の「商品と共においてあるPOPのQRを読む」方法を説明する。
全ての商品には、下記の写真の様な商品名と共に二つのQRコードの記載がある。Allure店舗のユニークな点は、左側のQRコード。

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「Explore Brand」のQRを読み込むと、その商品を紹介している「インフルエンサーのInstagramやTik Tok」、もしくは「商品のブランドページ」への導線が引いてある。

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ビューティーアイテムは特にインフルエンサーやマイクロインフルエンサーから売り上げに繋がるコンバージョン率が高い。デジタル上にある、そのような価値が高いコンテンツを店舗での体験に直に繋げるのは面白い。

因みに、上記の商品から繋がっている400万人のフォロワーを持つインフルエンサーは、ブランドの創設者でありメイクアップアーティストだ。なんとなく良さそうだなー、と思って手に取った商品が400万人ものファンを持つ、となれば購入の後押しにもなる。

顧客体験とエンゲージメント重視の店舗

③番目の「試す」に関しては、まさにリアル店舗が必要とされているど真ん中の理由。Allure 店舗Open前日に、Allureの名物編集長であるMichelle LeeがBoF (ビジネスオブファッション)というオンラインメディアのLiveでも伝えていた事がある。「人々は特に今、体験を求めている。コロナ禍でオンラインでの購買が増加したが、家の外での体験をしたいという欲求は止められない。美容アイテムも、テスターなどが出来ない状態が続いていたが、Allure店舗では、実際に試していただく事も、バーチャルで試してもらう事も可能だ。」

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実際にサンプルをこの様に試す様子は日本でも見慣れた風景。

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異なるのは、顧客の前に置かれていたこの鏡でメイクなどを試す前後で写真やビデオを撮影、そのままEmailか携帯電話のテキストメッセージでその写真を送る事が出来るという点。

また、この店舗では360度体験と自らは呼んでいるが、商品を試す場だけではなく、美容やウェルネスイベントなどの開催を予定しており、物を販売する事だけにはとどまらず、顧客とコミュニティを作っていく事。そしてエンゲージメントを高め、ファンを作っていく事も重視されている。

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お会計はオンラインのみ

更に驚いたのが、お会計の場所が全くない事。

商品を購入したい場合には、
①QRコードを読んでAllure店舗用のサイトへログインし、
a. オンライン上で(apple payなどを利用して)購入→その場で店舗受け取り
b. オンライン上で購入→当日自宅まで配送

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または、②店舗スタッフが持ち歩いているipad上で商品を選択、カードリーダーにクレジットカードをかざす
といった、2択だった。

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この様に、全ての注文(トランズアクション)がデジタル化されて管理されている。

少し話がそれるが、前に在庫を店舗に全く持たないショールーミングというコンセプトが流行りかけたが、いまいち大規模に展開できなかった。その理由は、Allure店舗の様な店舗受け取りが出来ないビジネスモデルだったからだと推測する。折角リアル店舗に足を運んでいるので、試してみて気に入ったものは直ぐ手にして持って帰りたい、という人間としての欲求は変えられないのだろう

私自身も実際に商品をipad経由で購入してみた。(なぜ携帯からではなく、ipad経由だったかというと、QRからAllure店舗プラットフォームで購入しようと、「店舗受け取り」を選択したにも関わらず、20ドルの配送料がデフォルトで選択されてしまうというバグが発生していたため)購入後、3分ほど待っていたら接客してくれていたスタッフとは別のスタッフが下から商品を持ってきてくれた。

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このトートバッグの中に、無造作に商品がポンと入れられてあり、プラスチックの”プ”の字もないミニマルでサステナブルなものだった。

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今回の顧客体験を特別なものにしてくれたのは、このスタッフのおかげでもある。店舗での体験の事、商品の事、買い方の事、全てにおいて一つ一つ丁寧に説明してくれた。Instagramにもこのお姉さんが商品の説明をしていて、スタッフが商品を直接ブランドサイトの広告塔となり紹介する、というのは米国でもトレンドとなっているようだ。https://www.instagram.com/theallurestore/

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今後のメディアの在り方への学びも多い

美容雑誌がリアル店舗をOpenする、という事だけでも驚きだったが、今までの店舗の在り方、顧客体験、デジタルとリアルを様々な点でシームレスに繋ぐという観点から、今後のリアル店舗の在り方の見本になるような場所だった。

そして、店舗の在り方だけではなく、雑誌Allureというブランドの世界観を店舗で見せていく事、リアルの購買データで得た情報をまた雑誌のコンテンツとして反映していくという点で、今後のメディアの在り方や生き残り戦略へのヒントも多い場所である。









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